激しい咳が続くときの原因とは?対処法と受診の目安ついて解説
激しい咳が続き、夜も眠れず日常生活に支障をきたしていませんか?実は、咳の原因は風邪や気管支炎だけでなく、咳喘息、肺炎、新型コロナウイルス感染症など、多岐にわたります。 本記事では、さまざまな咳の原因と症状、家庭でできる対処法から受診の目安まで、具体的な事例を交えて詳しく解説します。咳の原因を知り、適切な対策を取ることで、つらい咳を軽減するための第一歩を踏み出せます。 激しい咳の9つの原因 激しい咳は、多くの人が経験する症状であり、原因は多岐にわたります。考えられる咳の原因について9つ解説します。 風邪 風邪は、さまざまなウイルスによって引き起こされる上気道感染症です。風邪の主な症状には以下のようなものがあります。 咳(乾いた咳や痰を伴う咳) 鼻水や鼻づまり のどの痛み くしゃみ 微熱(通常38°C以下) 全身倦怠感 上記の症状は、ウイルス感染に対する体の免疫反応によって引き起こされます。特に咳は、気道に侵入したウイルスや過剰な分泌物を排出しようとする体の防御機構の一つです。風邪の経過と注意点は以下のとおりです。 通常の経過:多くの場合、風邪の症状は7〜10日程度で自然に改善します。 対症療法:十分な休養、水分補給、市販の解熱鎮痛薬などで症状を緩和できることが多いです。 抗生物質の不適切性:風邪の原因はウイルスであるため、抗生物質は効果がありません。 ただし、以下のような場合は、風邪以外の疾患の可能性も考えられるため、医療機関の受診が推奨されます。 38°C以上の高熱が3日以上続く 咳が2週間以上続く 呼吸困難や胸痛を伴う 膿性の痰や血痰が出る 症状が急激に悪化する マイコプラズマ肺炎や百日咳などの感染症は、初期症状が風邪に似ているため、注意が必要です。 気管支炎 気管支炎は、気管支(肺への空気の通り道)に炎症が起きる疾患です。気管支炎は主に急性と慢性の2種類に分類されます。 急性気管支炎 急性気管支炎の原因や症状は以下のとおりです。 主な原因:ウイルス感染(約90%)、まれに細菌感染 症状:咳(特に夜間に悪化)、痰、胸部の不快感、軽度の呼吸困難 経過:通常1〜3週間で自然に改善 上記のような症状が続く場合、急性気管支炎の可能性があります。 慢性気管支炎 慢性気管支炎の原因や症状は以下のとおりです。 定義:3か月以上、年に2年連続で痰を伴う咳が続く状態 主な原因:喫煙、大気汚染、職業性粉塵暴露など 症状:持続的な咳と痰、呼吸困難(特に運動時) 経過:長期にわたり症状が持続し、徐々に悪化する可能性がある 上記のような症状が続く場合、慢性気管支炎の可能性があります。 気管支炎の症状は以下のとおりです。 持続的な咳(乾いた咳や痰を伴う咳) 喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音) 胸部の圧迫感や痛み 疲労感 軽度の発熱(主に急性気管支炎の場合) 気管支炎の症状が長引く場合や、呼吸困難が悪化する場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けましょう。特に喫煙者は、慢性気管支炎のリスクが高いため、禁煙を強く推奨します。 咳喘息 咳喘息(咳変異型喘息)は、典型的な喘息症状(喘鳴や呼吸困難)を伴わず、慢性的な咳を主症状とする喘息の一種です。咳喘息の特徴は以下のとおりです。 主症状:3週間以上続く乾性咳嗽(痰を伴わない咳) 発症時期:多くの場合、夜間や早朝に悪化 誘因:気温の変化、運動、アレルゲンへの暴露など 季節性:花粉症の時期に悪化することがある 診断基準は以下のとおりです。 気道過敏性の亢進(こうしん) 可逆性の気流制限 アレルギー検査での陽性反応 治療には吸入ステロイド薬や気管支拡張剤などの薬物療法があります。適切な治療により症状を改善できます。 肺炎 肺炎は、肺に細菌やウイルスが感染して炎症を引き起こす疾患です。この炎症により、肺の主要な機能である酸素の取り込みと二酸化炭素の排出が阻害されます。肺胞(肺の末端にある小さな空気の袋)に炎症が生じると、ガス交換が効率的に行われなくなります。主な症状は以下のとおりです。 息苦しさ 激しい咳 発熱 痰の増加 肺炎の重症度は、患者の年齢や基礎疾患によって大きく異なります。特に注意が必要なのは以下のグループです。 高齢者 免疫力が低下している人 慢性疾患(糖尿病、心臓病など)を持つ人 上記のグループでは、肺炎が重症化し、生命を脅かす可能性があります。 肺炎は適切な治療と管理により、多くの場合回復可能です。しかし、早期発見と適切な医療介入が重要です。 百日咳 百日咳は、ボルデテラ・ペルタッシス(Bordetella pertussis)という細菌によって引き起こされる高度に感染性の呼吸器疾患です。その名前は、典型的な症状である激しい咳が約100日(実際には6〜10週間)続くことに由来しています。 主な症状は以下のとおりです。 初期(1〜2週間):軽い風邪のような症状 発作期(2〜8週間):特徴的な「コンコン」という連続した乾いた咳と「ヒューッ」という吸気音(レプリーゼ)、咳による嘔吐 回復期(1〜2週間):徐々に症状が改善 百日咳の特徴は以下のとおりです。 高い感染力:咳やくしゃみによる飛沫感染 全年齢層が罹患する可能性があるが、乳幼児で特に重症化リスクが高い 予防接種で予防可能だが、免疫力は時間とともに低下する 百日咳は特に乳幼児において肺炎や脳症を引き起こすリスクがあります。適切な予防接種を受けることで重症化のリスクを軽減できます。 新型コロナウイルス感染症 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、SARS〜CoV〜2ウイルスによって引き起こされる感染症です。2019年末に中国で最初に報告されて以来、世界的なパンデミックとなり、公衆衛生上の重大な課題となっています。 主な症状は以下のとおりです。 発熱 咳(乾いた咳が多い) 倦怠感 味覚や嗅覚の異常 呼吸困難(重症例) 症状の特徴は以下のとおりです。 個人差が大きく、無症状から重症まで幅広い 潜伏期間は平均5〜6日(最長14日) 咳は初期症状の一つとして現れることが多い 重症化リスク因子は以下のとおりです。 高齢(65歳以上) 慢性疾患(心臓病、糖尿病、肥満など) 免疫不全状態 新型コロナウイルス感染症は、症状や重症度が個人によって大きく異なるため、自己判断は避け、症状がある場合は医療機関に相談することが重要です。最新の予防ガイドラインに従い、自身と周囲の人々の健康を守ることが求められます。 アレルギー アレルギーは、特定の物質(アレルゲン)に対する過剰な免疫反応です。この反応は、さまざまな症状を引き起こし、その中には咳も含まれます。 アレルギーの主な特徴 アレルゲンの種類の種類は以下のとおりです。 ダニ ハウスダスト 花粉 ペットの毛 特定の食品 主な症状はくしゃみや鼻水、かゆみや咳などです。アレルギーはアレルゲンの回避が最も効果的な予防法です。花粉症の場合は外出時にマスクを着用し、帰宅後にうがいや洗顔を行うことで症状を軽減できます。 逆流性食道炎 逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで引き起こされる炎症性疾患です。逆流性食道炎の主な原因は以下のとおりです。 下部食道括約筋の機能不全 食道裂孔ヘルニア 肥満 妊娠 特定の食品や薬剤 逆流性食道炎の主な症状は、喉のヒリヒリ感や異物感、胸やけやげっぷ、咳などです。 胃酸が食道に逆流すると、食道の粘膜が刺激され炎症を起こします。刺激が迷走神経を介して咳反射を引き起こすことがあります。逆流性食道炎による咳は、特に夜間や食後に悪化することが多いです。 逆流性食道炎が原因と思われる咳が続く場合は、医療機関での相談をおすすめします。適切な診断と治療により、咳症状の改善が期待できます。 肺結核 肺結核は、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる深刻な感染症です。主に肺に影響を与えますが、他の臓器にも影響を及ぼす可能性があります。肺結核の主な原因は、結核菌の感染です。感染経路は感染者の咳やくしゃみによる飛沫感染であり、主な症状は以下のとおりです。 激しい咳(血痰を伴うこともある) 痰 発熱 倦怠感 体重減少 寝汗 肺結核を疑う症状がある場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な検査と診断を受けましょう。2週間以上続く咳や血痰、原因不明の体重減少などの症状がある場合は注意が必要です。 ストレスが要因の咳も考えられます。以下の記事ではストレス関連咳とも呼ばれる「心因性咳嗽」について解説しているのでチェックしてみましょう。 >>咳が止まらない理由はストレスかも?心因性咳嗽の特徴を解説 激しい咳が続くときの対処法 激しい咳が続くと、日常生活に支障をきたし、不安を感じることがあります。咳は体からの重要なサインであり、原因を特定し適切に対処することが重要です。激しい咳が続くときの対処法として、家庭でできる対処法や市販薬による対処法を解説します。 家庭でできる対処法 家庭でできる激しい咳が続くときの対処法は以下のとおりです。 加湿 乾燥した空気は喉の粘膜を刺激し、咳を悪化させる可能性があります。室内の相対湿度は30〜50%が理想的です。特に冬場やエアコンの効いた部屋では、加湿器を使用して適切な湿度を保ちましょう。 加湿器を使用する際には、清潔な水を使用し、定期的に洗浄が必要です。また、湿度計を用いて室内湿度を適宜モニタリングを行います。加湿器がない場合の代替方法は以下のとおりです。 濡れタオルを干す 洗濯物を部屋干しする 観葉植物を置く 加湿器がない場合は、代替方法を用いて部屋の湿度を保つように心がける必要があります。 水分補給 適切な水分補給は、喉の粘膜を潤し、痰を出しやすくする効果があります。 おすすめの飲み物は、白湯やハーブティー(カモミール、ジンジャーなど)、はちみつレモン水などです。冷たい飲み物は咳を悪化させる可能性があるため、可能な限り常温か温かい飲み物での水分補給をおすすめします。 休息 十分な休息は、体力回復と免疫機能の維持に重要です。成人の適切な睡眠時間は7〜9時間とされています。休息の取り方は以下のとおりです。 規則正しい睡眠サイクルを維持する 昼寝は30分以内に抑える ストレス軽減のためのリラックス法を実践する(深呼吸、瞑想など) 上記以外にも、自分にあったリフレッシュ法を見つけることもおすすめです。 市販薬を服用する 咳がつらい場合、市販の咳止め薬の使用を検討できます。咳止め薬の主な種類は以下のとおりです。 中枢性鎮咳薬 脳の咳中枢に直接作用し、咳を抑制します。例としてデキストロメトルファン、コデイン(医師の処方が必要)があります。乾いた咳、夜間の咳に有効です。 去痰薬 気道の粘液を薄め、痰の排出を促進する作用があります。痰を伴う咳に有効です。 気管支拡張薬 気道を広げ、呼吸を楽にする作用があります。例としてテオフィリン(医師の処方が必要)があります。喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)に伴う咳に有効です。 注意点は以下のとおりです。 症状に合った薬を選択する 用法・用量を守る 長期使用は避ける(1週間以上の使用は医師に相談) 眠気成分が含まれている場合があるため、運転や機械操作時は服用しない 市販薬を使用する際は、パッケージ記載の使用方法を守り、長期にわたる使用は医師または薬剤師に相談しましょう。 激しい咳が続くときの受診の目安 以下の症状がある場合は、医療機関の受診を検討してください。 咳が2週間以上続く 38°C以上の発熱が3日以上続く 息切れや呼吸困難 胸の痛み 血痰 原因不明の体重減少 激しい咳が続く場合、稀に皮下気腫(空気が皮下組織にたまる状態)を引き起こすことがありますが、まれなケースです。医療機関での診断・治療は以下のとおりです。 問診:症状の詳細や既往歴、生活環境など 身体診察:聴診、打診など 検査:胸部X線や血液検査、喀痰検査など 適切な診断と治療を受けるために、症状を正確に医師に伝えましょう。自己判断は避け、専門家の診察を受けることで、重大な疾患の早期発見・治療につながる可能性があります。 まとめ 激しい咳にはさまざまな原因があり、適切な対処が重要です。 主な原因:風邪や気管支炎、咳喘息や肺炎、新型コロナなど 家庭での対処法:加湿、水分補給、十分な休息 予防策:手洗い、うがい、マスク着用、規則正しい生活 受診の目安:2週間以上続く咳、発熱、息切れ、胸痛、血痰 咳が長引く場合は自己判断せず、専門医に相談しましょう。適切な診断と治療で、健康な日常を取り戻すことができます。 長引く咳の原因や対処法について、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。 >>【医師監修】咳が止まらないのは危険!長引く咳の原因や対処法を徹底解説 参考文献 Tie K, Manayan RC, Mallur PS. 445nm Blue Laser for Cricopharyngeal Myotomy/Zenker's Diverticulotomy: Proof of Concept and Use. The Laryngoscope 134, no. 11 (2024): 4620〜4624.