子供の適応障害の症状とは?接し方や治療方法などを徹底解説
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監修者船橋 健吾(てらすクリニックひきふね院長)
お子さんの様子が最近おかしいとお悩みの方は多いです。もしかしたら「適応障害」の可能性があります。環境の変化やストレスにうまく対応できず、心身にさまざまな症状が現れるのが適応障害です。見逃されやすく、適切なケアが遅れてしまうケースも多いのです。
この記事では、子供の適応障害の症状や原因、家庭での接し方や治療方法まで、親御さんや周りの大人が知っておくべき情報を解説します。お子さんのSOSサインを見逃さず、適切なサポートをするためにも、ぜひ最後までお読みください。
墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは心療内科・精神科で適応障害の診療もしています。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。
子供の適応障害を理解する3つのポイント
子供の適応障害を理解する3つのポイントを解説します。そもそも適応障害とは何なのか、適応障害の原因や適応障害になりやすい子供の特徴がわかるので要チェックです。
適応障害とは?ストレスが原因で起こる精神疾患
適応障害とは、特定の出来事や変化といったストレスが原因で、著しい苦痛や機能の低下をきたす精神疾患です。適応障害は、ストレスの原因がなくなると自然に症状が軽くなることが多いですが、適切な対応を取らないと慢性化し、うつ病などの他の精神疾患に移行するリスクも高まります。
適応障害の主な原因3つ
適応障害の主な原因は、環境の変化やストレス、発達段階の3つです。
環境の変化
小学校入学や転校、引っ越しや新しい習い事、親の離婚や死別、兄弟の出産など、環境の変化は子供にとって大きなストレスになります。新しい環境では、今までと異なるルールや人間関係に適応する必要があり、慣れるまでに大きな負担がかかるのです。
ストレス
ストレスの例は、友達とのトラブルや勉強のプレッシャー、兄弟姉妹との競争や親からの過剰な期待などです。子供を取り巻く環境にはさまざまなストレス要因が存在します。ストレスが積み重なり、子供自身の許容範囲を超えると、適応障害を発症するリスクが高まります。
小学生にとって、塾での競争やテストの点数は大きなストレスになりやすいです。高学年になると、クラス替えで仲の良かった友達と離れてしまうこともストレスになりえます。
発達段階
3つ目は発達段階です。年齢によって適応できるストレスの量や種類は異なります。一般的に、幼い子供ほど環境の変化に敏感で、適応障害を起こしやすい傾向があります。年齢を重ねるにつれて、ストレス対処能力も発達していくため、適応障害になりにくい傾向です。しかし、思春期には精神的に不安定になりやすく、またストレスの種類も複雑化するため、適応障害のリスクは高まります。
適応障害になりやすい子供の特徴
適応障害になりやすい子供の特徴は以下のとおりです。
- 真面目でおとなしい
- 感受性が豊か
- 完璧主義
- ストレス耐性が低い
- 環境の変化に敏感
真面目で責任感が強い子供は、自分の気持ちを抑え込み、周囲の期待に応えようと無理をしがちです。感受性が強く傷つきやすい子供は、些細な言葉や出来事にも深く傷つき、大きなストレスを感じてしまいます。あくまでも傾向であり、すべての人に当てはまるわけではありません。大切なのは、お子さんの個性や特性を理解し、普段の様子と比べて変化がないか注意深く観察することです。
適応障害の原因や症状はさまざまです。治療方法も含め網羅的に知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。
>>適応障害とは?原因と症状や3つの治し方をわかりやすく解説
子供の適応障害への5つの対処法
子供の適応障害への5つの対処法について、以下の5つのパターンで解説します。
- 家庭での接し方
- 学校との連携
- 友達関係のサポート
- 医療機関の選び方
- 再発予防の実施
お子さんのつまずきを乗り越え、笑顔を取り戻せるよう、一緒に考えていきましょう。
家庭での接し方
家庭では、お子さんにとって安心できる居場所を作ることが重要です。安心できる環境は、お子さんのストレスを軽減し、回復を促す大きな力になります。以下の3つのポイントを意識してみてください。
お子さんの気持ちをじっくりと聞く
お子さんの話を遮ったり、否定したりせず、じっくりと耳を傾けましょう。「つらかったね」「がんばっているね」など、共感の言葉を伝えることで、お子さんは安心感を得られます。「どうしたの?」と尋ねるよりも、「何かあったの?」のように、答えやすい質問の仕方を工夫するのも効果的です。
規則正しい生活リズムを維持する
睡眠や食事、起床時間など、基本的な生活リズムを整えることは、心身の安定につながります。脳の機能を正常に保つために必要なセロトニンやメラトニンといった神経伝達物質の分泌に影響を与えるためです。
無理強いしない
お子さんが学校に行きたくない、友達と遊びたくないと言う場合は、無理強いせず、ゆっくり休ませてあげましょう。回復には時間がかかる場合もあるので、焦らずに見守ることが重要です。無理強いは、お子さんのストレスをさらに増大させてしまう可能性があります。
学校との連携
学校との連携は、お子さんの状況を理解し、適切なサポートを受けるために不可欠です。学校は、お子さんにとって多くの時間を過ごす場所であり、さまざまな人間関係が築かれる場でもあります。
先生との面談では、お子さんの様子を具体的に伝え、学校での様子や困りごとについて相談しましょう。「授業中に集中できない」「友達とのトラブルが多い」といった事例を伝えることで、先生も状況を把握しやすくなります。
必要に応じて、スクールカウンセラーに相談することも有効です。スクールカウンセラーは、専門的な知識と経験を持つ相談員であり、お子さんの心のケアやサポートを行うことができます。心理検査などを実施し、客観的なデータにもとづいた支援を提供することも可能です。
学校を休んでいる間は、家庭学習のサポートも必要です。学校との連携を取り、学習内容や進度を把握し、無理のない範囲で学習を進められるようにサポートしましょう。学習の遅れを防ぐだけでなく、達成感を得ることで、お子さんの自信回復にもつながります。
友達関係のサポート
友達関係のトラブルが適応障害の原因になっている場合は、お子さんの気持ちを理解し、共感しながら、適切なサポートをしてあげましょう。友達関係は、子どもにとって大きな影響力を持つ要素です。
友達関係についてじっくり話を聞いたり、友達との交流を促したりしましょう。無理に大人数で遊ばせるのではなく、お子さんの負担にならない範囲で交流を促しましょう。
お子さんがいじめを受けている場合は、学校と連携して早急に対処する必要があります。いじめは深刻な心の傷を残す可能性があり、適応障害の大きな原因になることもあります。いじめられている兆候に気づいたら、すぐに学校に相談し、適切な対策を講じることが重要です。
医療機関の選び方
適応障害の治療には、専門的な知識と経験が必要です。信頼できる医療機関を選ぶことは、お子さんの回復にとって重要です。それぞれ確認しましょう。
小児精神科医、児童精神科医
小児の精神疾患に精通した医師がいる医療機関を選びましょう。小児期特有の発達段階や心理的特徴を理解した医師による適切な診断と治療が期待できます。
臨床心理士
臨床心理士は、心理療法やカウンセリングなどの専門的な支援を提供できます。お子さんの心理状態を把握し、適切な心理的ケアを行うことで、症状の改善をサポートします。
アクセスの良さ
通院しやすい場所にある医療機関を選ぶことも重要です。定期的な通院が必要になる場合もあるため、通院の負担が少ない医療機関を選ぶことで、治療を継続しやすくなります。
口コミや評判
他の患者さんの口コミや評判も参考にしましょう。インターネット上の口コミサイトや、周りの人からの情報などを参考に、信頼できる医療機関を選びましょう。
再発予防の実施
適応障害は再発しやすい病気です。一度症状が改善しても、再びストレスにさらされると再発する可能性があります。再発を防ぐためには、以下の点に注意しましょう。
- ストレス対処法を身につける
- 健康的な生活習慣を維持する
- 定期的な診察を受ける
- 環境を改善する
適応障害は早期発見・早期治療が重要です。お子さんの様子がおかしいと感じたら、早めに専門家に相談しましょう。
適応障害と間違えやすい3つの病気
適応障害と間違えやすい3つの病気は以下のとおりです。
- うつ病
- ADHD
- 自閉スペクトラム症
それぞれ適応障害との違いを具体例を交えながらわかりやすく説明します。
うつ病
適応障害とうつ病の大きな違いは「原因と症状の重さ、そして回復までの期間」です。適応障害では自己評価は下がらないことが多い一方、うつ病では自己評価が著しく低下し、「自分はダメな人間だ」と思い込んでしまうケースも少なくありません。将来への希望についても、適応障害の場合は「この状況さえ乗り越えれば…」という希望を抱いていることが多いですが、うつ病では将来に希望を見出せず、絶望的な気持ちになることもあります。
ADHD
ADHD(注意欠如・多動性障害)は、発達障害の一つで、不注意や多動性、衝動性が特徴です。適応障害は、特定のストレスへの反応として起こりますが、ADHDは生まれつきの脳の機能の違いが原因で、幼少期から症状が見られることが多いです。
自閉スペクトラム症
自閉スペクトラム症(ASD)も発達障害の一つで、コミュニケーションや社会性の難しさ、特定の物事への強いこだわりなどが特徴です。適応障害は環境の変化によって起こりますが、ASDは生まれつきの脳の機能の違いが原因と考えられており、幼少期から症状が見られることが多いです。
まとめ
適応障害は、環境の変化やストレスがきっかけで起こる心の病気です。学校生活でのトラブルや家庭環境の変化など、一見些細なことでも子供にとっては大きな負担になることがあります。お子さんの些細な変化も見逃さず、じっくりと耳を傾けてあげてください。
自己判断はせず、少しでも気になることがあれば、専門機関に相談することをおすすめします。早期発見・早期治療が、お子さんの回復への近道です。適応障害は、適切な対応を取れば改善が期待できる病気です。お子さんのつまずきを、成長のチャンスに変えていきましょう。
てらすクリニックでは、お子さまの心や行動に関するお悩みに寄り添い、適切なサポートを提供いたします。お悩みの方は気軽に相談ください。
参考文献
- Minassian S. « Les soins sont de plus en plus absents du parcours des mineurs non accompagnés ». Soins. Psychiatrie 40, no. 324 (2019):18-20.
- Katz AL, Webb SA and COMMITTEE ON BIOETHICS. Informed Consent in Decision-Making in Pediatric Practice. Pediatrics 138, no. 2 (2016): .
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