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長引く咳の原因とは?放置してはいけない特徴と治療法

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監修者船橋 健吾(てらすクリニックひきふね院長)

長引く咳に悩まされている方は多いです。眠れない夜や仕事への影響、周囲への気遣いなど、心身ともに疲弊してしまいます。ただの風邪と考えて放置していると、実は重大な疾患のサインを見逃している可能性があります。

本記事では、長引く咳の原因になる代表的な病気や症状について詳しく解説し、適切な治療法や家庭でできるケアを紹介します。本記事を読むことで、つらい咳を軽減するための具体的な対策を知ることができ、生活の質向上につながるきっかけになります。

墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは、長引く咳の診療をしております。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。
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長引く咳の原因6選~考えられる病気と咳の種類~

咳は体を守るための重要な防御反応です。ウイルスや細菌などの異物、あるいは体内に蓄積した痰を排出する働きがあります。咳が長期間続くと、身体的にも精神的にも大きな負担になります。

長引く咳の中でも、慢性咳嗽(がいそう)は、8週間以上続く咳と定義されます。長引く咳の原因は多岐にわたり、単純な風邪ではない可能性も考えられます。慢性咳嗽の主な原因になる6つの疾患について解説します。自身の症状が当てはまるかどうかを確認し、必要に応じて医療機関を受診しましょう。

感染症(風邪、気管支炎、肺炎など)

感染症は長引く咳の最も一般的な原因です。多くの場合、ウイルス性感染症が原因になりますが、細菌性感染症の場合もあります。

  • ウイルス性感染症:通常の風邪やインフルエンザなどが含まれます。通常1〜2週間で自然に治癒しますが、咳だけが長引くことがあります。
  • 細菌性感染症:マイコプラズマ肺炎や百日咳(ひゃくにちぜき)などが代表的です。感染症では、咳が数週間から数か月続くことがあります。

マイコプラズマ肺炎では、咳が3〜4週間続くことがよくあります。百日咳は、その名の通り100日近く咳が続くことがあります。特徴的な「コンコン」という乾いた咳の後に「ヒュー」という笛のような音(吸気性笛音)を伴う咳が出ます。

結核も長引く咳の原因になる重要な感染症です。初期症状は風邪と似ていますが、2週間以上続く咳や微熱がある場合は結核を疑う必要があります。

アレルギー(喘息、アレルギー性鼻炎など)

アレルギー反応も長引く咳の主要な原因の一つです。アレルギーとは、本来無害な物質(アレルゲン)に対して体が過剰に反応することを指します。主なアレルゲンには、ダニやハウスダスト、花粉やペットの毛などがあります。

喘息は、アレルギーが原因で起こる代表的な疾患です。気管支が炎症を起こして狭くなり、ゼーゼー、ヒューヒューという喘鳴や咳、息苦しさなどの症状が現れます。

アレルギー性鼻炎も咳の原因になることがあります。鼻水や鼻づまり、くしゃみなどの症状が主ですが、後鼻漏(こうびろう)と呼ばれる鼻水が喉に流れ落ちることで咳が誘発されることがあります。

咳喘息

咳喘息は、喘息の一種で、咳が主な症状になる疾患です。通常の喘息で見られるような喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)がないため、見逃されやすい病気です。

咳喘息の特徴は以下のとおりです。

  • 風邪やタバコの煙、温度変化、特定のにおいなどがきっかけで咳が出始める
  • 夜間や早朝に咳が悪化する
  • 咳が長期間(8週間以上)続く

咳喘息を放置すると通常の喘息に移行するリスクが指摘されています。早期の診断と治療が推奨されています。

逆流性食道炎(胃酸の逆流による咳)

逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流して食道の粘膜を刺激する疾患です。胃酸が食道だけでなく気管支まで逆流すると、咳が誘発されることがあります。

逆流性食道炎による咳の特徴は以下のとおりです。

  • 食後や横になったときに悪化する
  • 胸やけ、げっぷ、のどの違和感、呑酸(酸っぱい液体が口まで上がってくる)などの症状を伴う
  • 夜間に咳が悪化する

上記のような症状が続く場合、逆流性食道炎の可能性があります。

逆流性食道炎を悪化させる要因は以下のとおりです。

  • 脂っこい食事
  • カフェイン
  • アルコール
  • 喫煙
  • 肥満
  • ストレス

上記の要因を避けることで症状が軽減する可能性があります。症状が強い場合は医療機関での相談をおすすめします。

がん(肺がん、喉頭がんなど)

長引く咳は、まれにがんのサインである場合があります。特に、喫煙者や高齢者で長引く咳がある場合は、肺がんの可能性を考慮する必要があります。

肺がんの初期症状は以下のとおりです。

  • 長引く咳(特に血痰を伴う場合)
  • 胸痛
  • 息切れ
  • 体重減少

喉頭がんも長引く咳の原因になることがあります。喉頭がんは、声帯を含む喉頭にできるがんで、初期症状として声のかすれや咳が現れることがあります。

喉頭がんの症状は以下のとおりです。

  • 声のかすれ
  • のどの異物感
  • 長引く咳
  • 嚥下困難(進行した場合)

咳過敏症

上記の疾患に加えて、近年注目されているのが咳過敏症です。咳過敏症は、さまざまな刺激に対して過剰に咳が出現する状態を指します。温度変化やにおい、煙などの刺激だけでなく、会話や笑うことでも咳が誘発されることがあります。

咳過敏症の特徴は以下のとおりです。

  • 軽微な刺激でも咳が誘発される
  • 咳が長期間(8週間以上)続く
  • 他の疾患が見つからない、または治療しても咳が改善しない

咳過敏症は生活の質を著しく低下させる可能性があるため、適切な診断と治療が重要です。

長引く咳の原因は多岐にわたり、さまざまな疾患が潜んでいる可能性があります。8週間以上咳が続く場合は慢性咳嗽と定義され、専門医による適切な診断と治療が必要です。

長引く咳の特徴

通常の風邪による咳は1〜2週間程度で改善しますが、慢性咳嗽はなかなか良くならない状態が続きます。単なる風邪ではなく、より深刻な疾患のサインである可能性があります。

慢性咳嗽の特徴は以下のとおりです。

  • 持続期間:8週間以上
  • 咳の種類:乾性咳嗽(痰を伴わない咳)と湿性咳嗽(痰を伴う咳)
  • 発生タイミング:夜間・早朝や運動後、食後など
  • 関連症状:喘鳴や息切れ、胸焼けなど

上記の特徴は個人によって異なり、原因疾患によっても変化します。適切な診断と治療のためには、医療機関での詳細な検査が必要です。

咳の種類

慢性咳嗽は主に2種類に分類されます。

乾性咳嗽(乾いた咳)

乾性咳嗽の特徴は以下のとおりです。

  • 「コンコン」という音
  • 喉の刺激感
  • 痰をほとんど伴わない

上記と似た咳嗽の場合、乾性咳嗽である可能性があります。

主な原因になる疾患は以下のとおりです。

  • 喘息
  • 咳喘息
  • 逆流性食道炎

例:授業中に突然咳き込み、周囲に気を遣わせてしまう。

湿性咳嗽(痰の絡む咳)

特徴は以下のとおりです。

  • 「ゴホゴホ」という音
  • 喉の奥に異物感
  • 痰を伴う

上記の特徴が当てはまる場合、湿性咳嗽である可能性があります。

主な原因疾患は以下のとおりです。

  • 気管支炎
  • 副鼻腔気管支症候群
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)

例:朝起きたときに痰がからみ、なかなか出せない。

咳の種類を区別することは、原因疾患の推測や適切な治療法の選択に重要です。ただし、最終的な診断は医療専門家によって行われるべきです。

咳の出るタイミング

慢性咳嗽は、発生するタイミングによっても特徴が異なります。慢性咳嗽のパターンは、潜在的な原因疾患を示唆する重要な手がかりになります。

夜間・早朝に悪化する咳

特徴は以下のとおりです。

  • 就寝中や早朝に特に症状が悪化
  • 睡眠が妨げられる

入眠が困難になるほどの咳が続く場合、疾患による咳嗽である可能性があります。

主な原因疾患は以下のとおりです。

  • 喘息
  • 逆流性食道炎
  • 慢性気管支炎

例:深夜に咳で目が覚める、または早朝に激しい咳で起床する。

運動後に出る咳

特徴は以下のとおりです。

  • 運動直後や運動中に咳が誘発される
  • 息切れを伴うことがある

運動に伴い咳が誘発される場合、原因疾患が関係している場合があります。

主な原因疾患は運動誘発性喘息や心不全などが挙げられます。マラソンの後や激しい運動の直後に咳が止まらなくなるなどです。

食後に出る咳

食事の直後や横になったときに咳が誘発される場合があります。胸焼けや喉の違和感を伴うこともあります。食事に伴い咳が続く場合は注意しましょう。

逆流性食道炎や誤嚥性肺炎が主な原因疾患です。食事後や就寝時に横になると咳が出る場合が当てはまります。

咳のタイミングやパターンは、慢性咳嗽の原因を特定するうえで重要な情報になります。ただし、個人によって症状の現れ方は異なる場合があり、複数の要因が絡み合っていることもあります。

長引く咳の治療法と対処法

慢性咳嗽は単なる症状ではなく、生活の質を著しく低下させる可能性のある重要な健康問題です。睡眠障害や仕事への集中力低下、社会生活への支障など、さまざまな面で影響を及ぼします。さらに、慢性咳嗽は深刻な疾患の初期症状である可能性もあるため、適切な診断と治療が不可欠です。

慢性咳嗽の治療法と自宅でできる対処法について、解説します。

市販薬の適切な使用

市販薬は慢性咳嗽の初期対応として広く利用されていますが、市販薬の選択と使用には注意が必要です。主な市販薬は以下の2種類に分類されます。

咳止め薬(鎮咳薬)

鎮咳薬の作用機序や適応は以下のとおりです。

  • 作用機序:脳の咳中枢に作用し、咳反射を抑制
  • 適応:乾性咳嗽(痰を伴わない咳)
  • 主な成分:デキストロメトルファン、コデイン等

上記からもわかるように鎮咳薬は乾性咳嗽に対して、効果があります。

去痰薬

去痰薬の作用機序や適応は以下のとおりです。

  • 作用機序:気道の分泌物を薄め、排出を促進
  • 適応:湿性咳嗽(痰を伴う咳)
  • 主な成分:ブロムヘキシン、アンブロキソールなど

去痰薬は湿性咳嗽に対して有効です。

市販薬の選択には、以下の点に注意が必要です。

  • 症状に合った薬を選ぶ(乾性咳嗽か湿性咳嗽か)
  • パッケージの説明をよく読み、適応や用法・用量を確認する
  • 持病がある場合や妊娠中の場合は、医療専門家に相談する
  • 長期使用を避け、症状が改善しない場合は医療機関を受診する

Chung et al. (2022)の研究によると、慢性咳嗽患者の約30〜40%が咳喘息や好酸球性気管支炎などの気道炎症性疾患を有しているとされています。気道性炎症性疾患の疾患では、市販薬のみでの対応には限界があり、専門的な診断と治療が必要になります。

処方薬による治療

慢性咳嗽の原因が特定された場合、医師の処方にもとづいて以下のような薬物療法が行われます。

  • 抗生物質
    細菌性感染症(肺炎、気管支炎など)に対して有効です。注意点として、ウイルス性感染症には無効であり、耐性菌の出現を防ぐため適切な使用が重要です
  • 吸入ステロイド薬
    喘息や咳喘息、好酸球性気管支炎に対して有効です。吸入ステロイド薬は気道の炎症を抑制する作用があります
  • 気管支拡張薬
    喘息、COPD(慢性閉塞性肺疾患)に対して有効です。気管支を拡張し、呼吸を楽にする作用があります
  • プロトンポンプ阻害薬
    胃食道逆流症による咳に対して有効です。胃酸の分泌を抑制する作用があります
  • 抗ヒスタミン薬
    アレルギー性鼻炎に伴う咳に対して有効です。ヒスタミンの作用を抑制し、アレルギー症状を緩和する作用があります。

上記の薬物療法は、原因疾患や症状の程度に応じて選択されます。また、近年注目されている咳過敏症に対しては、神経調節薬(ガバペンチン、プレガバリンなど)の有効性も報告されています。

慢性咳嗽の治療には、原因疾患の特定と適切な薬物療法の選択が不可欠です。自己判断での長期的な市販薬の使用は避け、症状が改善しない場合は速やかに医療機関を受診することが重要です。

家庭でできる咳ケア

薬物療法と並行して、以下のような自宅でのケアも慢性咳嗽の症状緩和に効果的です。

  • 加湿
    目標湿度は50〜60%です。方法として、加湿器の使用、濡れタオルの設置などがあります。気道の乾燥を防ぎ、粘膜の防御機能を維持する効果があります
  • 水分補給
    1日あたり1.5〜2リットル程度飲むことが推奨されています。効果的な飲み物として水、温かいハーブティー、スープなどがあります。水分補給は痰の粘度を下げ、排出を促進する効果があります
  • 適切な休息
    睡眠時間は1日あたり、7〜9時間は取りましょう。睡眠を取ることで、免疫機能の向上、炎症を軽減する効果があります。
  • 禁煙
    喫煙は気道刺激の大きな要因の一つです。禁煙しない人も受動喫煙を避けましょう。
  • アレルゲン対策
    室内の定期的な清掃やハウスダスト対策(布団の干し、掃除機がけなど)を行うことで、アレルゲン対策になります。
  • 食事の工夫
    刺激物(辛いもの、酸っぱいもの)を控えることで、咳を軽減できます。また就寝前の食事を避けることで胃食道逆流症の予防になります。

上記のケアは、薬物療法の効果を高め、症状の緩和を促進します。ただし、上記の対処法だけで症状が改善しない場合は、医療機関での専門的な診断と治療が必要です。

まとめ

長引く咳には、感染症やアレルギーといった一般的な原因のほか、稀にがんなどの深刻な疾患が隠れている場合もあります。以下のポイントを押さえることが重要です。

  • 咳の種類(乾性・湿性)や期間を把握し、原因を特定する
  • 検査(問診、身体診察、X線検査など)で正確な診断を行う
  • 市販薬や処方薬による適切な治療を受ける
  • 加湿や水分補給など家庭でのケアも併用する

自己判断せずに医療機関を受診し、専門的な診断と治療を受けましょう。

ストレスが要因の咳も考えられます。以下の記事ではストレス関連咳とも呼ばれる「心因性咳嗽」について解説しているのでチェックしてみましょう。
>>咳が止まらない理由はストレスかも?心因性咳嗽の特徴を解説

参考文献

Chung KF, McGarvey L, Song WJ, Chang AB, Lai K, Canning BJ, Birring SS, Smith JA and Mazzone SB. “Cough hypersensitivity and chronic cough.” Nature reviews. Disease primers 8, no. 1 (2022): 45.