認知症の薬にはどんな種類がある?最新の薬の効果や副作用を解説!
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身近な人が「あれ?さっきまで覚えていたのに…」と記憶の曖昧さを口にする場面を想像できますか?日本では、高齢化が進み、認知症の患者数は増加の一途を辿っています。厚生労働省の推計によると、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると言われています。認知症は、だれにとっても他人事ではありません。
しかし、早期発見と適切な治療により症状の進行を遅らせ、その人らしく生活できる期間を延ばすことが可能です。この記事では、認知症の薬の種類や効果、最新の治療薬、薬に関するよくある不安や疑問について解説します。
墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは高齢者外来をしており、認知症をはじめ、不眠症や腰痛で悩んでいる方の診療もしています。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。
認知症の薬の種類と効果
認知症と診断されると、だれでも不安な気持ちを感じます。認知症の症状を少しでも遅らせるために、医療の現場ではさまざまな種類の薬が使われています。
大きく分けると「進行を遅らせる薬」「症状を改善する薬」「漢方薬」の3種類があり、患者さんの状態に合わせて薬を組み合わせます。
進行を遅らせる薬の効果と副作用
進行を遅らせる薬は、アルツハイマー型認知症で多く見られる、脳へのアミロイドβという物質の蓄積や、タウタンパク質の異常凝集をターゲットにしています。
アリセプト®(一般名:ドネペジル)は、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンが分解されるのを抑え、神経細胞の働きを活性化させ効果を発揮します。効果は以下のとおりです。
- 記憶力や判断力、思考力などの認知機能の低下を穏やかにする
- 着替えや食事などの日常生活の動作ができる期間を長くする可能性がある
メリットだけでなく、副作用も考えられます。吐き気や下痢などの消化器症状や、食欲不振や眠気、めまいなどが現れることもあります。
副作用は服用開始後に出やすいですが、時間の経過とともに軽快することが多いです。副作用の出方には個人差があります。自己判断で服薬を中断することは大変危険なので、心配なことがあれば、医師や薬剤師に相談しましょう。
症状を改善する薬の効果と副作用
認知症の症状を改善する薬には、レミニール®(一般名:ガランタミン)やメマリー®(一般名:メマンチン)などがあります。レミニール®は、アリセプト®と同じようにアセチルコリンの分解を抑え、さらにニコチン受容体に作用し、より幅広い効果を期待できます。
一方、メマリー®は、神経伝達物質であるグルタミン酸の働きを調整し、神経細胞の興奮を抑え、症状の改善を図ります。簡単に言うと、神経細胞の興奮を抑え、情報伝達のバランスを整えることで、脳への負担を軽減する薬です。それぞれの薬の効果は以下のとおりです。
- レミニール®
中核症状である記憶障害や判断力低下、見当識障害などの改善効果に加え、意欲や関心の低下といった周辺症状にも効果が期待できる - メマリー®
中程度のアルツハイマー型認知症や、レビー小体型認知症の行動・心理症状(BPSD*)に対して効果を発揮する
*BPSD…幻覚、妄想、興奮、抑うつ、徘徊、攻撃性など認知症の症状に伴って現れる、行動や心理面の変化
考えられる副作用は以下のとおりです。
- レミニール®
吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状が現れることがある - メマリー®
便秘やめまい、頭痛などが現れることがある
高齢者の場合、薬の副作用が出やすくなります。副作用が強く出ると、日常生活に支障をきたす可能性も考えられるので注意が必要です。
漢方薬やサプリメントと使用上の注意点
認知症の治療において、漢方薬やサプリメントが用いられるケースもあります。しかし、漢方薬やサプリメントは、あくまでも補助的な治療法として位置づけられています。
認知症の進行を止める効果は証明されていませんし、西洋薬との飲み合わせに注意が必要な場合もあります。高齢者の場合、特に複数の薬を服用していることが多いため、漢方薬やサプリメントを自己判断で安易に使用することは避けましょう。
ある種の漢方薬は、一部の認知症の薬と併用すると、薬の効果を強めすぎたり、弱めたりする可能性があります。サプリメントの中には、認知機能の改善効果が期待できる成分が含まれているものもありますが、科学的根拠が確立されていない場合も多いです。
健康食品やサプリメントは、医薬品と異なり、効果や安全性が厳密に確認されていない場合もあります。使用を検討する際は、必ず医師や薬剤師に相談し、指示を仰ぐようにしてください。
認知症の薬の選び方
認知症と診断された後、多くの方が「どんな薬をどう使っていくのか」という不安を抱きます。治療のゴールは、認知症の進行を遅らせ、できる限り自立した生活を長く続けられるようにすること、患者さんやご家族の負担を軽減することです。
薬は大きく「進行を遅らせる薬」と「症状を和らげる薬」の2つに分けられます。個々の症状や進行段階、体質、他の病気や服用している薬によって、最適な薬は異なります。そのため、ご自身の判断で薬を選んだり、自己流で服用量を変えたりすることは大変危険です。症状や進行段階、体質に合った薬を選ぶためには、医師との相談が大切です。
軽度認知障害(MCI)の治療薬
軽度認知障害(MCI)は、認知症の前段階と考えられています。日常生活に支障はありませんが「何をしようとしたんだっけ?」「人の名前が出てこない…」といった、物忘れのような症状が目立ちます。
以前MCIに対しては、生活習慣の改善指導や脳トレなどが中心でしたが、近年、MCIに対する薬物療法の有効性が示唆されるようになってきました。*
*国立長寿医療研究センター「認知症予防マニュアル」.(2009).認知症予防マニュアル記憶力の向上を目指したプログラム.
2023年9月25日、アミロイドβというタンパク質の蓄積が確認された「レカネマブ」があります。「レカネマブ」は、MCIの患者さんに対してアミロイドβの蓄積を抑制することで、認知機能の低下を遅らせる効果が期待できる新薬として承認されました。
MCIは、適切な治療や生活習慣の改善によって、認知症への移行を遅らせたり、予防したりできる可能性があります。ご自身やご家族に物忘れが目立つようになった場合は、早めに医療機関を受診し、専門医に相談することをおすすめします。
アルツハイマー型認知症の治療薬
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多く、脳にアミロイドβというタンパク質が蓄積することで、神経細胞が徐々に壊れていく病気です。現在のところ、アルツハイマー型認知症を完全に治す薬はありませんが、進行を遅らせたり、症状を和らげたりする薬が使われています。
代表的な薬としては、アリセプト®やレミニール®、メマリー®などがあります。アリセプト®(一般名:ドネペジル)は、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンが分解されるのを抑えます。神経細胞の働きを活性化することで、記憶力や判断力などの認知機能の低下を穏やかにする効果があります。
レミニール®やメマリー®は、どちらも単独で使用でき、患者さんの状態に合わせて、組み合わせて使用することが可能です。
レビー小体型認知症の治療薬
レビー小体型認知症は、脳内にレビー小体という異常なタンパク質が蓄積することで、神経細胞がダメージを受けてしまう病気です。アルツハイマー型認知症と同様に、認知機能の低下や行動・心理症状が現れます。
特徴的な症状としては、幻視やパーキンソン症状(手足の震え、動作緩慢、歩行障害など)があります。根本的な治療薬はまだありませんが、レミニール®やメマリー®などのアルツハイマー型認知症の治療薬が、症状の改善に効果があるとされています。
血管性認知症の治療薬
血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって、脳の神経細胞が損傷を受け、認知機能が低下する病気です。
血管性認知症の治療は、脳血管障害の再発予防が重要です。高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病のコントロールも大切です。抗血小板薬や抗凝固薬などの薬物療法によって、脳血管障害の再発リスクを抑制します。
認知機能の低下に対しては、レミニール®やメマリー®などのアルツハイマー型認知症の治療薬が、症状の改善に効果があるとされています。血管性認知症は、薬物療法だけでなく、適切な治療や生活習慣の改善、リハビリテーションや介護サービスの利用などによって、進行を抑制して症状の進行を遅らせ、生活の質を維持できる可能性があります。
ご自身やご家族に認知症の症状が見られる場合は、早めに医療機関を受診し、専門医への相談をおすすめします。
認知症の薬に関する副作用、費用、最新情報
認知症と診断を受けると、薬による治療が始まります。認知症の薬は、症状の進行を遅らせたり、症状を和らげたりする効果が期待できます。しかし、副作用や費用、新しい薬の情報などが気になる方もいるのではないでしょうか。
ここでは、認知症の薬に関するよくある不安や疑問について、わかりやすく解説します。
認知症薬の主な副作用と対処法
認知症の薬でよく見られる副作用としては、吐き気や食欲不振、眠気などがあります。副作用は、薬の種類や個人差によって大きく異なり、だれにでも現れるわけではありません。多くの場合、副作用は一時的なものであり、時間の経過とともに軽快します。
しかし、中には、薬の副作用が強く出たり、長く続いたりする場合もあります。めまいやふらつきといった副作用が強く出てしまうと、骨折などの重大な怪我につながる恐れがあります。
認知症の患者さんは、自分の症状をうまく伝えるのが難しい場合もあるため、周囲の人が注意深く観察し、異変に気付くことが大切です。薬を飲み始める前に、医師や薬剤師から副作用に関する説明を受けておきましょう。
副作用が心配な場合は、自己判断で服用を中止せず、必ず医師に相談するようにしてください。症状に合わせて薬の量や種類を調整することで、副作用を軽減できる場合があります。
主な副作用への対処法は以下のとおりです。
副作用 | 対処法 |
吐き気・嘔吐 | 食事を少量ずつに分けて食べる、吐き気止めを処方してもらう |
食欲不振 | 食べやすいものを食べる、食事の時間や雰囲気を変える |
眠気 | 夕方以降の服用を避ける、医師に相談して薬の量や種類を調整してもらう |
便秘 | 食物繊維を多く摂る、水分を十分に摂る、適度な運動をする |
めまい・ふらつき | 起き上がる時や歩行時に注意する、手すりや杖を使う |
薬の費用を抑える保険適用やジェネリック医薬品
認知症の治療は、長期にわたることが多く、薬代も大きな負担になりやすいです。
認知症の薬には、高額なものも少なくありません。治療費の負担が心配な方は、公的医療保険の適用やジェネリック医薬品の利用を検討してみましょう。公的医療保険が適用されると、薬の費用は自己負担分の1~3割に抑えられます。
ジェネリック医薬品は、先発医薬品と同じ有効成分を含みながら、開発費が抑えられているため、より安価に購入できます。医師に相談し、ジェネリック医薬品への切り替えも検討してみましょう。
最新の治療法を知る治験や臨床試験の情報
認知症の治療法は、日々進歩しています。新しい薬や治療法の開発も進められており、新しい薬や治療法の効果や安全性を確かめるための治験や臨床試験が行われています。
参加には一定の条件がありますが、最新の治療を受けられる可能性があります。新しい治療法に興味がある方は、医師や薬剤師に相談したり、インターネットで情報収集したりしてみましょう。
科学的根拠が乏しいものや、誇張されたものも含まれている可能性があるため、医療機関や公的機関の公式サイトなど、信頼できる情報源から情報を得ましょう。医師や薬剤師に相談することでも、より正確で最新の情報を得ることができます。
認知症を予防したい方は、普段の日常生活の習慣も大切です。おすすめの食べ物やトレーニングもあります。以下の記事で詳しく紹介しているので、是非参考にしてください。
>>認知症予防のポイント7選|おすすめの食べ物や今からできるトレーニングを紹介!
まとめ
認知症の治療薬には「進行を遅らせる薬」「症状を改善する薬」「漢方薬」の3種類があり、患者さんの状態に合わせて組み合わせます。薬の効果や副作用には個人差があり、効果がないと思ったり、副作用が心配な場合は自己判断せず、必ず医師に相談しましょう。
最新の治療法や臨床試験についても情報を得ることで、より良い治療選択ができる可能性があります。適切な治療とケアを受けて症状の進行を遅らせ、生活の質を維持しましょう。
認知症になってからだと進行スピードは早いです。以下の記事では、認知症が一気に進んでしまう理由について解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
>>認知症が一気に進む原因とは?進行を遅らせる方法や治療法を徹底解説
参考文献
- 厚生労働省. (2015). 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(概要).
- 国立長寿医療研究センター「認知症予防マニュアル」. (2009). 認知症予防マニュアル 記憶力の向上を目指したプログラム.
- Devanand DP, Jeste DV, Stroup TS, Goldberg TE. “Overview of late-onset psychoses.” International psychogeriatrics 36, no. 1 (2024): 28-42.