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咳が止まらない理由はストレスかも?心因性咳嗽の特徴を解説

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監修者船橋 健吾(てらすクリニックひきふね院長)

咳が止まらないと、日常生活に支障をきたすことがあります。何の病気でもないのに咳が続くと、不安やストレスが募るものです。実は、その咳が心因性である可能性があることをご存知でしょうか?心因性咳嗽(しんいんせいがいそう)は、ストレスや心理的な要因が影響しているため、他の咳とは異なる特徴があります。

この記事では、ストレスによる咳の特徴や他の咳との見分け方、具体的な対策を解説します。記事を読めば、あなたの長引く咳の悩みの解決策が見つかる可能性があります。

墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは、長引く咳や喘息の診療をしております。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。
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心因性咳嗽の特徴と他の咳との見分け方

風邪などの病気ではなく、ストレスや心理的な要因で引き起こされる咳を「心因性咳嗽(しんいんせいがいそう)」といいます。正式な診断名として用いられることは少なく、一般的にはストレス関連咳と表現されることが多いです。咳の原因がわからなければ、適切な治療を受けることができません。

心因性咳嗽の特徴と他の咳との見分け方を解説します。ご自身の咳と照らし合わせながら読んでみてください。

心因性咳嗽の症状:空咳、喉の違和感など

心因性咳嗽の咳は、一般的に「空咳(からせき)」と呼ばれ、痰を伴わず、乾いた咳が続くのが特徴です。咳には大きく分けて「乾性咳嗽(かんせいがいそう)」と「湿性咳嗽(しっせいがいそう)」の2種類があります。乾性咳嗽は、痰を伴わない咳で「コンコン」といった乾いた音を伴い、湿性咳嗽は痰を伴います。

心因性喉咳嗽の場合、のどに何かが詰まっているような違和感やイガイガ感、何かを吐き出したいような感覚を訴える患者さんもいます。

心因性咳嗽では、咳以外にも、胸の圧迫感や息苦しさを感じる場合もあります。ただし、息苦しさなどの症状は他の呼吸器疾患でも見られるため、慎重な診断が必要です。一方で発熱や鼻水といった風邪の症状はほとんど見られません。

心因性咳嗽は、検査をしても身体に異常が見つからないのに、咳が何週間も続くのが特徴です。緊張したり、不安を感じたりするときに咳が悪化しやすく、リラックスしているときや、寝ているときは咳が治まることが多いです。心因性咳嗽の治療には、心理療法やストレス管理が重要です。

咳喘息との違い:症状の持続時間、発作の有無

咳喘息も、心因性咳嗽と同様に空咳が主な症状です。咳喘息は気管支の炎症が原因で起こり、アレルギーが関与している場合もあります。心因性咳嗽との大きな違いは、咳喘息では「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった喘鳴(ぜんめい)を伴う発作が多い点です。

咳喘息は数週間から数か月にわたって咳が続くのに対し、心因性咳嗽は比較的短い期間で治まるケースが多いです。運動後や夜間、早朝に咳が出やすい場合は、咳喘息の可能性があります。風邪をひいた後に咳だけが長引く場合も、咳喘息が疑われます。

百日咳との違い:激しい咳、感染経路

百日咳(ひゃくにちぜき)は、百日咳菌という細菌によって感染する病気です。「コンコンコン…」と連続した咳の後、「ヒュー」という笛のような吸気音を伴う特有の咳(レプリーゼ)が特徴です。感染力が強く、飛沫感染で広がります。百日咳の咳は、まるで呼吸困難を起こしているかのように激しいのが特徴です。心因性咳嗽には激しい咳や感染経路はありません。

特に乳幼児の場合、百日咳は重症化しやすく、呼吸困難で入院が必要になるケースもあります。適切な抗菌薬治療が重要です。

風邪との違い:発熱、鼻水などの症状

いわゆる風邪は、ウイルス感染によって引き起こされます。咳だけでなく、発熱、鼻水、くしゃみ、喉の痛み、体のだるさなどの症状を伴うのが一般的です。心因性咳嗽は、風邪症状はほとんど伴いません。風邪の咳は、初期は乾いた咳が多いですが、次第に痰を伴う湿った咳に変化していくことが多いです。

アレルギー性咳嗽との違い:アレルゲンへの反応

アレルギー性咳嗽は、ハウスダストや花粉、ダニなどのアレルゲンに反応して起こります。くしゃみや鼻水、目のかゆみなどのアレルギー症状を伴うことが多いです。特定のアレルゲンを避けることで咳の症状が軽減するのが特徴です。

心因性咳嗽は特定のアレルゲンとは関係なく、ストレスや心理的な要因によって起こります。アレルギー性咳嗽の患者さんの中には、特定の季節や場所にいくと咳が出る方もいます。

咳が長引く場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。心療内科や精神科への受診が必要となるケースもあります。

咳を止める方法とストレス対策

ストレスが原因で起こる心因性咳嗽を含め、咳への対処法やストレス対策について、自分で取り組める方法をいくつか紹介します。症状が長引く場合は無理をせず医療機関を受診してください。

対処法:水分補給、加湿、休息

咳の対処法は「水分補給」「加湿」「休息」の3つが挙げられます。

喉の乾燥は咳を悪化させる要因の一つです。こまめな水分補給を心がけ、喉を潤しましょう。温かい飲み物は、喉を温める効果もあるのでおすすめです。緑茶や紅茶など、カフェインを含む飲み物は利尿作用があるため、カフェインレスのハーブティーや白湯などが適しています。

空気の乾燥も咳を誘発します。特に冬場は乾燥しやすいため、加湿器を使ったり、濡れタオルを干したりして、部屋の湿度を適切に保ちましょう。適切な湿度は50〜60%です。

心身ともに疲れていると、免疫力が低下し、咳が悪化しやすくなります。十分な休息をとり、体を休ませましょう。家族や友人と話したり、趣味の時間を確保したりするなど、心身のリフレッシュも大切です。

薬物療法:咳止め薬、抗不安薬、漢方薬

咳が辛い場合は、薬物療法も有効です。咳止め薬は、咳中枢に働きかけて咳を鎮める効果があります。咳止め薬にも種類があり、中枢性鎮咳薬や末梢性鎮咳薬など、咳の原因や症状に合わせて適切な薬が選択されます。

心因性咳嗽の場合は、抗不安薬や気分安定薬が処方されることもあります。ストレスや不安を軽減することで、咳を鎮める効果が期待できます。漢方薬も効果的です。半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)は、喉の異物感や不安感を和らげる効果が期待でき、心因性咳嗽によく用いられます。

薬の種類や服用方法など、気になることがあれば、医師や薬剤師に相談してください。

ストレス軽減:リラクゼーション法、瞑想

ストレスは心因性咳嗽の大きな原因のため、ストレス軽減も欠かせません。リラクゼーション法や瞑想は、心身をリラックスさせ、ストレスを軽減する効果が期待できます。ヨガやストレッチ、アロマテラピー、音楽鑑賞なども効果的です。

2014年の研究では、マインドフルネス瞑想が不安や抑うつ、疼痛の軽減に効果があることが示されています。マインドフルネス瞑想とは「今、この瞬間」に意識を集中することで、雑念を払い、心身をリラックスさせる瞑想法です。

専門医の受診:適切な診断と治療

咳が長引く場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。医師は、咳の原因を特定するために、問診、身体診察、レントゲン検査、血液検査などを行います。適切な治療には、咳の原因の特定が欠かせません。医療機関では、患者さんの状態に合わせて、薬物療法、心理療法、生活指導など、さまざまな治療法を組み合わせた総合的な治療を提供しています。

セルフケアの重要性:規則正しい生活、睡眠の確保

心身ともに健康な状態を保つためには、セルフケアが重要です。規則正しい生活リズムを維持し、質の高い睡眠を確保しましょう。十分な睡眠をとることで、免疫力が高まり、ストレスへの抵抗力も向上します。

栄養バランスの良い食事を摂り、適度な運動をすることも大切です。栄養バランスの良い食事は、体の抵抗力を高め、ストレスへの耐性を向上させます。適度な運動は、ストレス発散やリラックス効果をもたらすため、心身の健康維持に効果的です。

咳を改善するためには、医療機関での治療だけでなく、患者さん自身のセルフケアも重要です。日常生活の中でできることから少しずつ始めて、心身ともに健康な状態を目指しましょう。

まとめ

咳が止まらない原因は、風邪などの感染症、アレルギー、咳喘息、そしてストレスなどさまざまです。咳の種類(乾性咳嗽・湿性咳嗽)、咳が出るタイミング、他の症状の有無などを確認することで、原因を特定しやすくなります。

ストレスが原因の心因性咳嗽の場合、リラックスしているときや寝ているときは咳が治まることが多いです。咳が長引く場合は自己判断せず、医療機関を受診し適切な診断と治療を受けましょう。水分補給、加湿、休息などのセルフケアも大切です。

長引く咳の原因や対処法について、より詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
>>【医師監修】咳が止まらないのは危険!長引く咳の原因や対処法を徹底解説

参考文献

Goyal M, Singh S, Sibinga EM, Gould NF, Rowland-Seymour A, Sharma R, Berger Z, Sleicher D, Maron DD, Shihab HM, Ranasinghe PD, Linn S, Saha S, Bass EB, Haythornthwaite JA. Meditation programs for psychological stress and well-being: a systematic review and meta-analysis. JAMA internal medicine 174, no. 3 (2014):357-68.