【医師監修】うつ病は再発しやすいって本当?再発のきっかけや仕事との向き合い方を解説
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うつ病を経験した方なら、再発への不安を抱えていることでしょう。「うつ病は再発しやすい病気」と耳にすることも多いかもしれません。
うつ病の再発は決して避けられないものではありません。本記事では、うつ病の再発率や原因、予防法や再発時の対処法を解説します。うつ病は再発しやすい病気ですが、再発のメカニズムを理解し、適切な予防策を講じることで、再発リスクを軽減できます。正しい知識と対策をして、健康的に生活しましょう。
墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは、うつ病の診療をしております。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。
うつ病は再発しやすい?再発率と期間について
うつ病は再発しやすいです。再発率と期間について解説します。
うつ病の再発率は約60%
うつ病の再発率は、残念ながら決して低いとは言えません。厚生労働省の調査によると、うつ病経験者の約60%が再発を経験しています*1。
*1 厚生労働省. “職場復帰のガイダンス(働く方へ).” こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト. Accessed September 20, 2024.
再発回数が増えるごとにリスクは上昇し、2回目の再発率は約70%、3回目は約90%に達します*2。
*2 厚生労働省. “うつ対策推進方策マニュアル – 都道府県・市町村職員のために.” 2004年1月26日.
一度うつ病を経験すると、脳内の情報伝達システムが、再びうつ状態に陥りやすくなります。ささいなストレスや環境の変化により、再び症状が現れてしまうことがあるのです。
うつ病が再発しやすい期間
一般的に、治療終了後約2年間が再発リスクが高い期間です。治療を終えて仕事に復帰したり、新しい環境に身を置いたりする際に、ストレスを感じやすいです。ストレスが再発の原因の一つと考えられます。
再発しやすい人の特徴
うつ病の再発は誰にでも起こる可能性がありますが、再発しやすい人の特徴は以下のとおりです。
- 自己判断で治療を途中でやめてしまった人
- 睡眠時間や食事のリズムなど、生活のリズムが不規則な人
- 引っ越しや転職など、環境の変化にストレスを感じやすい人
- 風邪や怪我など、身体の病気によって心身に負担がかかっている人
うつ病の治療は時間がかかります。焦らずに、医師と相談しながら治療を続けることが大切です。
うつ病再発の原因と予防策|再発のサインを見つけるには?
うつ病は一度改善しても再発することがあり、再発を繰り返すと症状が悪化したり治療期間が長引いたりすることがあります。うつ病が再発する原因や再発の予防策、再発のサイン・症状を解説します。
うつ病が再発する原因
うつ病の再発には、さまざまな要因が複雑に絡み合っていますが、主な原因として下記が挙げられます。
治療の中断
症状が改善したと感じても、自己判断で薬の服用や通院を中断すると再発リスクが高まります。脳内の神経伝達物質のバランスが、完全に回復していない状態で治療を中断してしまうと、再びバランスが崩れやすくなるためです。
ストレス
強いストレスや長期的なストレスは、再発の大きな要因です。人はストレスを感じると、心身が興奮状態になり、対処しようとする働きのホルモン「コルチゾール」が分泌されます。コルチゾールが過剰に分泌されると、脳の神経細胞にダメージを与え、うつ病のリスクを高める可能性があります。
生活リズムの乱れ
不規則な睡眠や食事パターン、運動不足は体内リズムを崩し、うつ病の再発を招きやすくなります。体内時計が乱れると、感情や意欲をコントロールする脳内物質「セロトニン」の分泌量が減り、うつ病のリスクを高めます。
季節の変化
季節の変わり目は、気温や日照時間の変化により体内時計を狂わせ、睡眠や食欲、気分にも影響を与えます。体調を崩しやすくなり、うつ病が再発しやすくなります。セロトニンの分泌量が季節変化の影響を受けて減少する説もあります。
うつ病の再発を予防するためにできること
うつ病の再発予防には、日常生活での取り組みが重要です。以下に主な予防策を示します。
- 規則正しい生活を心がける
規則正しい生活リズムを維持し、適度な運動と栄養バランスの良い食事を心がける - ストレスと上手に向き合う
趣味やリラックスできる時間を設けたり、信頼できる人に相談したりするなど、ストレスを溜め込まない工夫をする - 服薬は医師の指示を守る
医師の指示に従って服薬し、自己判断で薬の量を変えたり、中断したりしないようにする - 定期的な診察を受ける
症状が安定していても、定期的に医師の診察を受ける - 周囲のサポートを受ける
家族や友人に自分の状況を伝え、理解と支援を得ることで、再発リスクを軽減できる
うつ病再発のサインと症状
うつ病の再発は、初期症状に似た以下のサインが現れることがあります。
- 気分の落ち込み
何となく気分が沈み、憂鬱な状態が続く - 興味・関心の減退
以前は楽しめていた趣味や活動に関心が持てなくなる - 疲労感
充分な睡眠をとっても、だるさや疲れ、眠気を感じる - 睡眠障害
寝つきが悪くなる、夜中に何度も目が覚めるなど睡眠に問題が生じる - 食欲の変化
食欲不振や過食などが起こる - 集中力の低下
集中力が続かず、仕事や勉強に身が入らない - 自尊心の低下
自分自身に価値を見出せなくなり、自信を失う - 悲観的な思考
将来に対して希望が持てず、悲観的な考えにとらわれる
サインに気づいたら、速やかに医療機関を受診しましょう。早期発見と適切な対応が、再発予防の鍵となります。
うつ病を再発した際の対処法|治療法や仕事との両立法
うつ病が再発したときは、焦らず落ち着いて対処することです。ここでは、うつ病を再発した際の対処法について、治療法や仕事との両立法を具体的に解説します。
早めに医療機関を受診する
うつ病は早期発見・早期治療が何よりも大切です。初期症状に似たサインを感じたら、速やかに医療機関を受診し、専門医に相談することが重要です。「うつ病が再発したかもしれない」と医師に伝えることで、適切な対応を受けられます。
周囲に相談する
うつ病は、目に見えないために周囲の理解を得にくい面があります。そのため、信頼できる家族や友人、同僚に状況を説明し、理解とサポートを求めることが重要です。説明するときは話しやすいことから少しずつ伝えていくと良いでしょう。
休養をとる
うつ病の再発時は、心身ともに疲れている状態です。まずは下記のような行動をとり、休養することが大切です。
- 十分な睡眠時間の確保
- バランスの取れた食事摂取
- リラックス法の実践(音楽鑑賞、アロマテラピーなど)
- 自然環境での静養
これらの方法を組み合わせ、個人のペースで回復に向けて進むことが大切です。うつ病からの回復は必ずしも直線的ではありませんが、適切な治療と自己管理を継続することで、確実に改善へと向かいます。
うつ病の再発に効果的な治療法
うつ病の再発に対しては、以下のようなさまざまな治療アプローチが存在します。個々の状況に応じて、医師と相談しながら最適な治療法を選択することが重要です。うつ病の再発に効果的な治療法について、薬物療法や精神療法、その他の治療法を解説します。
薬物療法
抗うつ薬は、脳内の神経伝達物質のバランスを整え、うつ病の症状を改善します。副作用が比較的少ないSSRI*3 や意欲や集中力の低下に効果的なSNRI*4 などの薬があります。服用に際しては医師の指示に従い、服薬を中断したり、量を変更したりすることは避けてください。
*3 選択的セロトニン再取り込み阻害薬
*4 セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬
精神療法
精神療法は、医師やカウンセラーとじっくりと時間をかけて行う治療法です。なかでも認知行動療法は、うつ病再発予防に効果的な精神療法の一つです。精神療法では、うつ病を引き起こすマイナス思考のパターンを現実的で建設的な思考へ転換してストレス対処法を習得し、再発リスクを軽減します。
その他の治療法
太陽光に近い光を浴びることで体内時計を調整し、うつ症状の改善を図る「光療法」や、軽運動でストレス解消と気分向上を促進する「運動療法」などがあります。
うつ病を再発した際の仕事との向き合い方
うつ病再発時の仕事との両立は困難を伴いますが、適切な対応と周囲のサポートにより、徐々に回復します。以下に、うつ病を再発した際の仕事との向き合い方で大切なことを示します。
- 職場への報告
うつ病が再発したことを、職場の上司や人事部に報告しましょう。病気の状況や治療方針などを伝え、理解と協力を得ることが大切です。 - 休職の検討
症状が重い場合は、医師と相談のうえ、休職も検討しましょう。休職期間や復職時期は、医師と相談し、無理のない計画を立てましょう。 - 復職後のサポート
職場に産業医がいる場合は、相談して業務内容や時間などを調整してもらいましょう。定期的に主治医に経過を報告し、必要があれば医師から職場に意見書を書いてもらうこともできます。 - 無理のない働き方の実践
復職後は、自分のペースで仕事を進めましょう。残業を控え、休暇を取得するなど、心身にゆとりを持つことが大切です。
職場復帰は段階的に行い、徐々に業務量を増やしていくアプローチが効果的です。定期的な医療機関の受診と、職場との密なコミュニケーションを維持することで、より安定した復帰が可能です。
まとめ
うつ病は再発率の高い病気ですが、治療法や予防策を理解し、適切な対策を講じることで、リスクを軽減できます。再発予防には規則正しい生活やストレス管理、適切な服薬が重要です。
再発の兆候に気づいたら、早めに医療機関を受診しましょう。再発した場合も焦らず落ち着いて対処し、医療機関への受診や周囲への相談、休養を優先することが大切です。
仕事との両立を考える際は、職場への報告や休職の検討、無理のない働き方を心がけましょう。
うつ病だけでなく、適応障害についても解説している記事もあるので、気になる方は以下の記事をぜひご覧ください。
>>適応障害とうつ病の違いとは?適応障害からうつ病に移行することはあるの?
参考文献
- Poirot MG, Ruhe HG, Mutsaerts HMM, Maximov II, Groote IR, Bjørnerud A, Marquering HA, Reneman L and Caan MWA. “Treatment Response Prediction in Major Depressive Disorder Using Multimodal MRI and Clinical Data: Secondary Analysis of a Randomized Clinical Trial.” The American journal of psychiatry 181, no. 3 (2024): 223-233.
- 厚生労働省. “職場復帰のガイダンス(働く方へ).” こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト. Accessed September 20, 2024.
- 厚生労働省. “うつ対策推進方策マニュアル – 都道府県・市町村職員のために.” 2004年1月26日.
- Burcusa SL, Iacono WG. “Risk for recurrence in depression.” Clinical Psychology Review 27, no. 8 (2007): 959-985.