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睡眠日誌って知っていますか?不眠症治療のために。

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不眠症の治療では、「眠れない」というつらさを言葉で伝えるだけでなく、実際の睡眠の流れを見える形にすることが大切です。そのために役立つのが睡眠日誌です。

不眠症では、寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚めてしまうといった夜間の症状だけでなく、日中の倦怠感、集中力の低下、気分の落ち込みなどが問題になることがあります。眠れない日が続くと、「また今夜も眠れないのではないか」という不安が強まり、その不安自体が睡眠を妨げる悪循環につながることもあります。厚生労働省のe-ヘルスネットでも、眠れないまま無理に寝床にいることが不眠を悪化させる可能性や、眠れないときには寝床を離れることの重要性が説明されています。

「何となく眠れない」を、治療に使える情報に変える

不眠に悩む方の多くは、「昨日もほとんど眠れなかった」「布団に入るのが怖い」と感じています。そのつらさは本物です。一方で、診療の場では、もう少し具体的な情報があると治療方針を立てやすくなります。

たとえば、次のような情報です。

布団に入った時刻。
実際に寝つくまでにかかった時間。
夜中に目が覚めていた時間。
朝、布団から出た時刻。
昼寝の有無。
カフェイン、飲酒、服薬の状況。
翌日の日中の眠気やだるさ。

こうした記録があると、不眠が「寝つきの問題」なのか、「途中で目が覚める問題」なのか、「早朝に目が覚める問題」なのか、あるいは生活リズムや昼寝、飲酒、服薬などが影響しているのかを整理しやすくなります。米国NHLBIも、睡眠日誌は睡眠の量と質、薬・アルコール・カフェインの使用、日中の眠気などを記録し、医師と確認するために使えるものと説明しています。

不眠症治療は「勘」ではなく「パターン」を見る

不眠症では、「眠れないから早く布団に入る」「眠れなかった分、朝遅くまで横になっている」「日中に長く昼寝をしてしまう」といった行動が、かえって夜の睡眠を浅くすることがあります。

睡眠日誌をつけると、こうしたパターンに気づきやすくなります。

「眠れない日ほど早く布団に入っている」
「休日だけ起床時刻が大きく遅れている」
「夕方のうたた寝が夜の寝つきに影響している」
「寝酒をした日は途中で目が覚めやすい」

このような傾向は、本人の記憶だけでは見落とされがちです。睡眠日誌は、眠れなかった日を責めるためのものではありません。自分の睡眠を客観的に見て、改善の手がかりを探すための道具です。

CBT-Iでは、睡眠日誌が治療の土台になる

慢性的な不眠症では、薬だけでなく、不眠症に対する認知行動療法、CBT-Iが重要な治療選択肢になります。米国内科学会は、成人の慢性不眠症に対してCBT-Iを初期治療として推奨しており、CBT-Iには睡眠に関する考え方への介入、睡眠制限法、刺激制御法、睡眠衛生教育などが含まれると説明しています。

CBT-Iでは、患者さんの実際の睡眠パターンに合わせて、寝床にいる時間、起床時刻、寝床の使い方などを調整していきます。睡眠医療プラットフォームでも、CBT-Iは睡眠日誌をつけながら、心理教育、リラクセーション、刺激制御法、睡眠制限法などを行い、不眠症状と日中の不調の改善を目指す治療として紹介されています。

つまり睡眠日誌は、単なる記録ではありません。
治療者が「どこを変えればよいか」を判断するための材料であり、患者さん自身が「自分の睡眠は整えていける」と実感するための道具でもあります。

ポケモンスリープは、睡眠記録を始めるきっかけになる

睡眠日誌というと、「紙に毎日書くのは面倒」「続けられる自信がない」と感じる方もいるかもしれません。そのような場合、スマートフォンアプリをきっかけにして睡眠を記録する方法もあります。

たとえば、**『Pokémon Sleep(ポケモンスリープ)』**は、スマートフォンを使って睡眠を計測・記録するゲームアプリです。公式サイトでは、ユーザーの睡眠が「うとうと」「すやすや」「ぐっすり」といった睡眠タイプに分類され、同じような睡眠パターンを持つポケモンたちが翌朝集まる仕組みが紹介されています。

また、公式サイトの睡眠計測ページでは、スマートフォンを枕元に置いて眠ることで、睡眠時間、寝つくまでの時間、睡眠タイプごとの時間、音声記録、音量、睡眠日誌機能などが記録されると説明されています。

このように、ポケモンスリープのようなアプリは、「睡眠を記録すること」を楽しく続けるきっかけになる可能性があります。特に、毎日の睡眠を可視化することで、「昨日は何時に寝たか」「寝つくまでどのくらいかかったか」「睡眠リズムが乱れていないか」といった点に意識が向きやすくなります。

ただし、アプリは医療用の診断・治療ツールではない

一方で、ポケモンスリープを不眠症治療に使う際には、注意も必要です。

公式サイトでは、ポケモンスリープは娯楽目的のアプリであり、病気の発見、診断、治療を目的としたものではないと明記されています。また、スマートフォンを枕や布団の下に置くことは、過熱のおそれがあるため推奨されていません。

そのため、ポケモンスリープの記録だけで「不眠症かどうか」を判断したり、治療方針を決めたりすることはできません。医療機関で相談する際には、アプリの結果に加えて、就床時刻、起床時刻、夜間覚醒、昼寝、服薬、飲酒、カフェイン、日中の眠気や体調などを、できる範囲で記録しておくとよいでしょう。

また、アプリのスコアや睡眠タイプを気にしすぎると、「よい睡眠を取らなければ」とプレッシャーになり、かえって眠りにくくなることがあります。睡眠記録は、睡眠を採点するためのものではありません。自分の睡眠の傾向を知るための補助として、気楽に使うことが大切です。

睡眠日誌は、治療効果を確認するものさしにもなる

不眠症治療では、「よく眠れた気がするか」だけでなく、具体的な変化を見ることが大切です。

寝つくまでの時間が短くなったか。
夜中に起きている時間が減ったか。
布団にいる時間のうち、実際に眠れている割合が上がったか。
日中の眠気、だるさ、不安が軽くなったか。

こうした変化を記録していくと、治療の効果を確認しやすくなります。たとえ睡眠時間がすぐに大きく増えなくても、「寝つくまでの時間が少し短くなった」「途中で起きている時間が減った」「朝のだるさが軽くなった」といった小さな改善に気づけることがあります。

これは患者さんにとって大きな励みになります。不眠症では、「また眠れなかった」という印象だけが強く残りやすいものです。睡眠日誌は、その印象を少し客観的に見直す助けになります。

つけ方は、完璧でなくてよい

睡眠日誌は、細かく正確に書こうとしすぎる必要はありません。むしろ、夜中に何度も時計を見て記録しようとすると、睡眠へのこだわりが強まり、かえって眠りにくくなることがあります。

基本は、朝起きてから、前夜の睡眠をざっくり振り返ることです。

記録する内容は、就床時刻、入眠までの時間、夜間覚醒、起床時刻、昼寝、飲酒、カフェイン、服薬、日中の眠気や体調などで十分です。紙の睡眠日誌でも、スマートフォンアプリでもかまいません。大切なのは、自分が続けやすい方法を選ぶことです。

ポケモンスリープのようなアプリを使う場合も、「ゲームとして楽しみながら睡眠に関心を持つ」くらいの距離感がよいでしょう。医療者に相談する際には、アプリの画面を見せるだけでなく、「何時に寝床に入ったか」「日中どのくらい困っているか」など、自分の体感も一緒に伝えることが大切です。

受診時の説明が、ぐっと楽になる

診察室では、限られた時間の中で多くの情報を伝える必要があります。睡眠日誌があると、「最近眠れません」という訴えが、より具体的になります。

たとえば、
「この2週間、布団に入るのは23時頃ですが、寝つくまで1時間以上かかる日が多いです」
「夜中に2〜3回目が覚めて、合計1時間くらい起きています」
「休日は朝10時頃まで寝床にいることが多いです」
というように説明できます。

このような情報があると、医師や心理士は、睡眠リズム、寝床で過ごす時間、昼寝、生活習慣、薬の影響、他の睡眠障害の可能性などを検討しやすくなります。睡眠日誌は、患者さんと医療者が同じ情報を見ながら治療を進めるための共通の地図になります。

睡眠日誌は「眠れない自分」を責めるためのものではない

不眠症の治療で大切なのは、気合いや根性で眠ろうとすることではありません。眠れない原因や悪循環を一緒に整理し、眠りやすい条件を少しずつ整えていくことです。

睡眠日誌は、その第一歩になります。
自分の睡眠を客観的に見ることで、不安に振り回されにくくなります。医療者と情報を共有することで、より自分に合った治療を受けやすくなります。そして、改善の小さな変化に気づくことで、「眠りは整えていける」という感覚を取り戻しやすくなります。

ポケモンスリープのようなアプリも、上手に使えば、睡眠記録を始めるきっかけになります。ただし、アプリは医療機関での診断や治療の代わりではありません。睡眠日誌やアプリの記録は、あくまで自分の睡眠を知り、医療者と相談するための補助として使うことが大切です。

眠れない夜が続くと、どうしても「また今日もだめだった」と感じてしまいます。しかし、睡眠日誌は失敗の記録ではありません。治療のための地図です。

その地図をもとに、焦らず、医療者と一緒に眠りの道筋を探していくことが、不眠症治療ではとても重要です。

てらすクリニックひきふねでは、内科・心療内科・精神科などの診療を行っており、眠りのお悩みに対して、からだとこころの両面からご相談いただけます。

また、総合内科専門医として内科全般の疾患に対応する医師、精神科専門医・精神保健指定医が在籍しております。

月・火・木・金は20時まで、水曜は18時まで、土日祝は17時まで診療しているため、仕事や学校の予定に合わせて受診しやすいのも特徴です。曳舟駅東口から徒歩1分、京成曳舟駅から徒歩4分の場所にあります。

「ただの寝不足だと思っていた」「どの診療科に相談すればいいかわからない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。

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