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うつ病改善に役立つ食べ物と栄養素!食事療法で心身のバランスを整えよう

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監修者船橋 健吾(てらすクリニックひきふね院長)

現代社会はストレスに満ち溢れ、うつ病はもはや他人事ではありません。厚生労働省の調査によると、2020年にはうつ病患者数が150万人を超え、1999年から4倍ほどに増加しています。 実は食事がうつ病の改善に大きく関わっている可能性があります。

この記事では、うつ病の改善に役立つ食べ物と栄養素を徹底解説します。 セロトニンやドーパミンなどの「幸せホルモン」の生成に欠かせない栄養素など、具体的な食材と効果をわかりやすくご紹介します。具体的な食材リストや、簡単に作れるメニュー例も掲載しているので、ぜひ最後までご覧ください。

墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは、うつ病の診療をしております。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。
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うつ病と食べ物の関係性

私たちの心と体は、まさに食べたもので作られています。バランスの良い食事は心身の健康を保つうえで重要であり、うつ病においては、影響が顕著に現れます。うつ病と食事の密接な関係について解説します。

食事がうつ病に与える影響

食事がうつ病に与える影響はさまざまです。食事を通して栄養素を摂ることで、脳はセロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質を作り出します。神経伝達物質は「幸せホルモン」とも呼ばれ、やる気の向上や気分の安定、幸福感に重要な役割を果たしています。脳は、体全体の司令塔です。全身の器官をコントロールして行動するために、休むことなく活動しています。司令塔である脳が正常に働くためには、さまざまな栄養素が必要です。

セロトニンを作るためには、必須アミノ酸のトリプトファンが必要です。トリプトファンは、肉や魚、大豆製品や乳製品などに多く含まれています。ビタミンB群や鉄分、マグネシウムなども、神経伝達物質の生成や脳の機能維持に欠かせません。適切な栄養を摂ることで、脳はスムーズに機能し、私たちの心と体を健康に保てます。

栄養素 食品例 働き
トリプトファン 肉、魚、大豆製品、乳製品 セロトニンの生成
ビタミンB群 豚肉、レバー、卵、牛乳、納豆 神経伝達物質の生成、脳の機能維持、エネルギー産生
鉄分 レバー、ひじき、ほうれん草 血液を作る、酸素を運ぶ、神経伝達物質の合成
マグネシウム アーモンド、ひじき、納豆 精神を安定させる、ストレス軽減、神経伝達物質の調整
オメガ3脂肪酸 魚(イワシ、サバ、鮭)、アマニ油 脳の炎症を抑える、神経伝達をスムーズにする、記憶力・集中力向上
ビタミンD 魚(鮭、サンマ)、きのこ類 カルシウムの吸収を助ける、骨を丈夫にする、免疫機能の調整

栄養不足が引き起こす脳機能への影響

栄養不足は、脳の機能にさまざまな悪影響を及ぼします。鉄分が不足すると、酸素を体中に運ぶ赤血球がうまく作られず、脳に十分な酸素が供給されなくなります。脳は大量の酸素を消費する臓器であるため、酸素不足は脳の機能低下に直結します。集中力の低下やめまい、疲労感、息切れ、動悸などの症状が現れやすいです。

何もやる気が起きなくなり、うつ病のような状態に陥ってしまうこともあります。ビタミンB群が不足すると、神経伝達物質の生成が滞り、気分の落ち込みやイライラ、不安感などを引き起こす可能性があります。ビタミンB群は、炭水化物、脂質、タンパク質の代謝に関わる重要な栄養素です。不足するとエネルギー産生が低下し、疲労感や倦怠感を引き起こします。

オメガ3脂肪酸の不足は、脳の炎症を引き起こし、うつ病のリスクを高めるとも言われています。オメガ3脂肪酸は、脳の細胞膜の構成成分であり、炎症を抑える働きがあります。現代の食生活では、オメガ3脂肪酸が不足しがちです。インスタント食品やファストフードばかり食べていると、オメガ3脂肪酸が不足し、脳の炎症を引き起こし、うつ病のリスクを高める可能性があります。

バランスの良い食事は、脳の機能を正常に保ち、うつ病の予防や症状の改善に役立つだけでなく、体全体の健康にもつながるのです。

うつ病改善に役立つ栄養素4選

うつ病改善に役立つ栄養素4選は以下のとおりです。

  • ビタミンB群
  • オメガ3脂肪酸
  • 抗酸化物質
  • マグネシウム

栄養バランスの取れた食事は心と体の健康を支える土台です。栄養の力を取り入れ、心身のバランスを整えていきましょう。

ビタミンB群

ビタミンB群は、脳の機能を維持するために欠かせない栄養素です。ビタミンB群は、神経伝達物質の生成や脳のエネルギー産生に深く関わっています。不足すると、気分の落ち込みやイライラ、集中力の低下や疲労感など、さまざまな症状が現れる可能性があります。

ビタミンB群の中でも、ビタミンB1やB6、B12、葉酸は大切なので、以下で詳しく解説します。

  • ビタミンB1
    糖質をエネルギーに変換する役割を担い、脳のエネルギー供給をスムーズにする(豚肉や玄米、豆類など)
  • ビタミンB6
    神経伝達物質であるセロトニンやドーパミンの生成に関与し、気分の安定や幸福感に影響を与える(マグロや鶏肉、バナナなど)
  • ビタミンB12
    赤血球の生成や神経細胞の維持に欠かせない。不足すると、貧血や神経障害を引き起こす可能性がある(レバーや魚介類、卵、牛乳など)
  • 葉酸
    細胞の分裂や成長に重要な役割を果たし、DNAの合成にも関わる(ほうれん草やブロッコリー、レバーなど)

バランスの良い食事を心がけることで、ビタミンを十分に摂取できます。

オメガ3脂肪酸

オメガ3脂肪酸は、脳の健康に欠かせない必須脂肪酸です。脳の神経細胞の膜を構成する重要な成分であり、脳の炎症を抑え、神経伝達をスムーズにする働きがあります。また、記憶力や集中力を高める効果も期待されています。

オメガ3脂肪酸は、主に魚介類に多く含まれています。イワシやサバ、サンマなどの青魚は、DHAやEPAといった良質なオメガ3脂肪酸を豊富に含んでいます。鮭やマグロなどの赤身魚も良い供給源です。魚介類が苦手な方は、アマニ油やえごま油、くるみなどの植物性食品から摂取できます。オメガ3脂肪酸は、脳の炎症を抑えることで、神経細胞の損傷を防ぎ、脳機能を正常に保つのに役立ちます。

抗酸化物質

抗酸化物質は、老化やさまざまな病気の原因となる活性酸素を除去し、細胞を守る働きを持つ物質です。抗酸化物質は、野菜や果物、ハーブ、スパイスなど、さまざまな食品に含まれています。カラフルな野菜や果物には、それぞれ異なる種類の抗酸化物質が豊富に含まれています。

トマトのリコピン、ブルーベリーのアントシアニン、にんじんのβ-カロテン、緑茶のカテキンなどです。積極的に摂ることで、活性酸素による細胞のダメージを防ぎ、健康を維持できます。

マグネシウム

マグネシウムは、私たちの体にとって必須のミネラルであり、300種類以上の酵素の働きをサポートしています。マグネシウムは、精神を安定させる神経伝達物質であるセロトニンの生成にも関与しています。セロトニンは、別名「幸せホルモン」とも呼ばれます。不足すると、イライラしやすくなり、不安感が強くなり、睡眠の質が低下しやすいです。

マグネシウムを摂ることで、セロトニンの分泌を促し、心の安定をサポートできます。マグネシウムは、アーモンドやひまわりの種、ほうれん草や納豆などに多く含まれています。普段の食事で意識的に摂るように心がけましょう。

うつ病は一度なると再発しやすい病気です。以下では、うつ病の再発に関して詳しく解説しているのでぜひチェックしてみてください。
>>【医師監修】うつ病は再発しやすいって本当?再発のきっかけや仕事との向き合い方を解説

うつ病に良い食事療法

食事療法を始めるうえで最も大切なのは、「無理なく続けること」です。いきなりすべての食事を変えるのではなく、まずはできることから始めてみましょう。朝食にヨーグルトをプラスする、夕食に野菜を1品増やすなどが挙げられます。朝食を抜いている方は、簡単に食べられるバナナやヨーグルトから始めてみましょう。

インスタント食品をよく食べる方は、週に1回、手作り料理に置き換えてみるのもおすすめです。重要なのは、完璧を目指さないことです。小さな変化を積み重ねることで、徐々に健康的な食生活へと移行できます。

具体的なポイントとして、以下の4つを意識しましょう。

栄養バランスを意識する

脳の働きを良くするには、さまざまな栄養素が必要です。炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランス良く摂ることが大切です。厚生労働省が推奨する「食事バランスガイド」を参考に、主食、主菜、副菜をそろえた食事を心がけましょう。

3食きちんと食べる

食事を抜くと、脳に必要なエネルギーが不足し、集中力の低下や疲労感につながり、うつ症状を悪化させる可能性があります。脳は、ブドウ糖を主なエネルギー源としており、食事から摂取した炭水化物がブドウ糖に変換されます。食事を抜くと、脳へのブドウ糖供給が途絶え、思考力や判断力が低下する原因となります。特に朝食は、1日の活動のエネルギー源となるため、必ず食べるようにしましょう。

好きな食べ物を優先する

食事は楽しむことが大切です。無理に嫌いなものを食べる必要はありません。好きな食べ物の中から、栄養バランスを考えながら選んでみましょう。肉料理が好きなら、野菜をたっぷり添えましょう。魚料理が好きなら、海藻やきのこを一緒に煮込んだりすることで、栄養バランスを整えることができます。

水分を十分に摂る

水分不足は、血液の粘度を上昇させ、血流を悪くする原因となります。脳への酸素供給が滞ると、集中力の低下や疲労感、頭痛、めまいなどを引き起こし、うつ症状を悪化させる可能性があります。こまめにお茶や水を飲むようにしましょう。1日に1.5~2リットル程度の水分摂取を目標にしましょう。

うつ病を改善するなら避けるべき食べ物のリスト

うつ病の症状を悪化させる可能性のある食べ物は、なるべく控えましょう。具体的には、以下の食品が挙げられます。

糖分の多いお菓子やジュース

血糖値を急激に上昇させ、一時的に気分を高揚させますが、その後、血糖値が急降下し、かえって気分の落ち込みやイライラを引き起こす可能性があります。また、精製された糖質は、ビタミンやミネラルなどの栄養素が不足しているため、摂りすぎると栄養バランスを崩し、健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。

インスタント食品や加工食品

添加物が多く含まれており、栄養バランスも偏っているため、なるべく控えましょう。特に、トランス脂肪酸を多く含むマーガリンやショートニングを使用した加工食品は、脳の炎症を促進し、うつ病のリスクを高める可能性があるため注意が必要です。

過剰なカフェイン

コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどの過剰摂取は注意しましょう。カフェインは、適量であれば覚醒作用や集中力向上効果がありますが、過剰摂取は、不安や不眠を悪化させます。カフェインは、神経伝達物質であるアデノシンを阻害することで覚醒作用を発揮します。

アルコール

アルコールは、一時的に気分をリラックスさせますが、長期的に見ると、うつ症状を悪化させる可能性があります。アルコールは、脳内の神経伝達物質のバランスを崩し、セロトニンなどの神経伝達物質の働きを阻害します。

アルコールの過剰摂取は、睡眠の質を低下させ、肝臓への負担も大きいため、注意が必要です。

簡単にできる食事メニューのアイデア

ここからは、実際にうつ病に効果的な具材を使用した、簡単にできる食事メニューを紹介していきます。

  • 朝ごはん
    ご飯、味噌汁、卵焼き、納豆。ご飯に鮭フレークや海苔を乗せて食べましょう。手軽に栄養を摂りたい場合は、シリアルやヨーグルト、フルーツなどもおすすめです。
  • 昼ごはん
    おにぎり、野菜スティック、ゆで卵、ミニトマト。おにぎりの具は、鮭や梅干し、昆布など、自分の好きなものを選びましょう。コンビニで手軽に購入できるサラダチキンや豆腐、海藻サラダなどもおすすめです。
  • 夜ごはん
    鶏肉のソテー、ほうれん草のソテー、サラダ。鶏肉は、皮を取り除いて調理するとヘルシーです。魚料理や豆腐料理、野菜炒めなども簡単に作ることができ、栄養バランスにも優れています。

継続するためのコツ

食事療法を続けるコツは、目標を高く設定しすぎないことです。「毎日完璧にやらなきゃ」と思うと、辛くなってしまい、挫折する原因となります。家族や友人、医療専門家に相談することで、継続するためのサポートを得られます。

食事を記録する日記や、食事管理アプリを活用するのもおすすめです。栄養バランスのとれた食事を続けることで、心も体も健康になり、うつ病の改善にもつながります。焦らずゆっくりと、自分のペースで続けていきましょう。

まとめ

うつ病は脳の神経伝達物質の異常が原因の一つであり、食事は脳の機能維持に重要な役割を果たします。トリプトファン、ビタミンB群、鉄分、マグネシウム、オメガ3脂肪酸などは、セロトニンやドーパミンの生成に関与し、気分の安定ややる気向上に役立ちます。栄養素を多く含む食品(肉、魚、大豆製品、緑黄色野菜、ナッツ類など)をバランスよく摂取することが重要です。

糖分が多い食品、インスタント食品、過剰なカフェインやアルコールは、症状を悪化させる可能性があるため控えるべきです。3食きちんと摂り、好きな食材も取り入れ、水分補給にも気を配りましょう。家族や専門家のサポートも活用しながら、無理なく継続してください。

以下の記事では、うつ病について網羅的に解説しています。うつ病の原因や症状、診断方法を知りたい方は要チェックの内容です。
>>うつ病とは?原因と症状や診断方法まで解説

参考文献