うつ病は血液検査でわかる?心療内科で血液検査をする理由も解説
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監修者船橋 健吾(てらすクリニックひきふね院長)
なんだか気分が落ち込む、やる気が出ないなど「もしかしたら、うつ病かも?」と不安に思っていませんか? 実際、厚生労働省のデータによると、平成8年には20.7万人だったうつ病の人数は、平成20年には70.4万人になっており、12年間で3.4倍に増加しました。現代社会において、うつ病は決して他人事ではありません。
うつ病の検査には血液検査が用いられる場合がありますが、なぜうつ病の検査で血液検査が必要なのか不思議に感じる患者さんも多いです。この記事では、うつ病と血液検査の関係、心療内科で血液検査を行う3つの理由を解説します。うつ病と血液検査の関係を知りたい方は、参考にしてください。
墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは、うつ病の診療をしております。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。
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うつ病と血液検査の関係
うつ病と血液検査の関係を解説します。血液検査でわかること、わからないことを把握したうえで検査に臨みましょう。
血液検査では身体疾患の有無や栄養状態などがわかる
血液検査は、体の中の状態を調べる大切な検査です。血液検査を通して、貧血や甲状腺機能低下症などのうつを引き起こす病気がないか、栄養がきちんと取れているかを調べます。
貧血とは、体中に酸素を運ぶ赤血球が不足し、全身に酸素が行き渡らなくなる状態です。貧血は以下の症状を引き起こします。
- 疲れやすさ
- だるさ
- 息切れ
- 動悸
- めまい
上記の症状はうつ病と似ているため、貧血の治療により症状が改善される場合があります。
甲状腺機能低下症も、うつ病と似た症状を引き起こす病気です。甲状腺ホルモン(主にT3とT4)は、体の代謝を調節する重要なホルモンで、不足すると全身の機能が低下し、以下の症状が現れます。
- 倦怠感
- 意欲低下
- 抑うつ気分
- 記憶力や集中力の低下
血液検査では栄養状態も調べられます。私たちの体や心は、食事から摂る栄養でできており、特定の栄養素が不足するとうつ病に似た症状が現れる場合があります。
すでに薬を服用している方であれば、血液検査によって薬の効果や副作用を確認可能です。薬の効果が十分に出ているか、逆に副作用が強すぎていないかをチェックすることで、より適切な治療につなげられます。
血液検査だけでうつ病の診断はできない
血液検査は、うつ病の診断に役立つ場合もありますが、血液検査だけでうつ病の確実な判断はできません。うつ病は、さまざまな要因が複雑に絡み合って発症する病気であり、血液検査だけで診断を確定することは難しいです。
うつ病の診断には、医師との面談(問診)や心理検査などが欠かせません。医師は、患者さんの現在の気持ちや症状、生活の様子、過去の病歴、家族歴などを詳しく聞き、総合的に判断して診断します。血液検査は、うつ病の診断をサポートするための情報の一つにすぎません。
うつ病は一度なると再発しやすい病気です。以下では、うつ病の再発に関して詳しく解説しているのでぜひチェックしてみてください。
>>【医師監修】うつ病は再発しやすいって本当?再発のきっかけや仕事との向き合い方を解説
心療内科で血液検査を行う理由3選
心療内科を受診すると、血液検査を勧められることがよくあります。心療内科で血液検査を行う理由を3つ解説します。
貧血、甲状腺機能異常などを調べるため
血液検査では、うつ病と似た症状を引き起こす可能性のある貧血や甲状腺機能異常の有無を調べます。
貧血が隠れている場合は、鉄剤の投与や食生活の改善で、うつの症状が改善できる場合があります。甲状腺機能低下症の方は、ホルモン補充治療により劇的に症状が改善する場合も多いです。
血液検査によって、うつ病の背景に潜む別の病気を発見でき、適切な治療につなげられます。
ビタミン、ミネラルなどの栄養状態を調べるため
栄養バランスの乱れは、心の健康にも大きな影響を与える可能性があります。血液検査を通して、栄養状態の把握が可能です。以下の栄養素は、脳の正常な機能の維持に欠かせません。
- ビタミンB群
- ビタミンD
- 鉄分
- 葉酸
上記の栄養素が不足すると、うつ病のリスクが高まる可能性があります。食生活の乱れから、ビタミンやミネラルが不足している方も多いです。栄養不足の方は、栄養指導やサプリメントの併用でうつ状態の改善が期待できます。
薬物療法の効果や副作用を確認するため
うつ病の治療で薬物療法を行う場合、血液検査は薬の効果や副作用を確認するために不可欠です。薬の効果や副作用の出方は個人差が大きく、ある薬が効果的な患者さんもいれば、副作用が強く出てしまう患者さんもいます。血液検査で薬の血中濃度や体の状態をチェックすることで、患者さんに合った安全で効果的な治療を提供できます。
一部の抗うつ薬は、血液中の薬物濃度をモニタリングし、効果と安全性を確認する必要があります。薬物によっては肝臓や腎臓への負担が生じる可能性もあるため、定期的な血液検査で臓器の機能をチェックすることも重要です。血液検査は、薬物療法を安全かつ効果的に進めるうえで重要な役割を果たしています。
血液検査以外のうつ病の検査方法を解説
血液検査はあくまで補助的な検査であり、うつ病の診断を確定させるものではありません。うつ病を診断するには、問診などの検査が欠かせません。血液検査以外のうつ病の検査方法を解説します。
問診
問診は、医師が患者さんと直接会話をすることで、症状や生活状況、病歴などを詳細に把握する検査です。以下のような多岐にわたる質問を通して、患者さんの状態を総合的に判断します。
- 気分が落ち込んでいるか
- どのくらい前から症状があるか
- どんなときに気分が落ち込むか
- 食欲や睡眠に変化はあるか
- 仕事や家庭環境で変化はあったか
問診では、患者さん自身の言葉で症状や悩みを伝えることが大切です。些細なことでも医師に相談することで、より適切な診断と治療につながります。
心理検査
心理検査とは、質問票や図形などを用いて、患者さんの心理状態を客観的に評価する検査です。うつ病の診断には、うつ病の症状の有無や程度を調べるための質問票を用いることが多いです。
「気分が沈んでいる」「集中力が続かない」などの項目に対し、「全く当てはまらない」「少し当てはまる」「かなり当てはまる」などの選択肢から選んで回答します。質問表の回答を集計することで、うつ病の重症度や特徴を把握できます。
心理検査により問診だけでは捉えきれない心の状態を数値化することで、より客観的な評価が可能です。心理検査の結果は、他の検査結果や問診の内容と合わせて総合的に判断されます。
脳波検査
脳波検査は、脳の電気活動を記録する検査です。頭に電極を装着し、脳から発生する微弱な電流を測定します。脳波検査は、うつ病そのものの診断には用いられませんが、似た症状を引き起こす「てんかん」などを除外するために用いられる場合があります。
てんかんは、脳内の神経細胞が過剰に活動してしまい、発作や意識障害などを引き起こす疾患です。脳波検査では、てんかんに特徴的な脳波パターンを確認できます。意識を突然失う発作を繰り返している場合は、てんかんが疑われます。
てんかんの患者さんは、抗てんかん薬の投与により、発作のコントロールが可能です。脳波検査は、うつ病の診断自体にはあまり用いられませんが、他の神経疾患との鑑別において重要な役割を果たします。
まとめ
うつ病の診断には、血液検査は直接的には用いられません。血液検査は、うつ病に似た症状を示す甲状腺機能低下症や貧血などの身体疾患の有無や、栄養状態の確認を目的として行われます。
うつ病の確定診断には、医師による問診と心理検査が欠かせません。問診では、患者さんとの対話を通して症状や生活状況、病歴などを詳細に把握します。心理検査では、質問票や図形などを用いて心理状態を客観的に評価し、数値化することでうつ病の重症度や特徴を把握可能です。
脳波検査は、うつ病の診断に直接用いられることは稀ですが、うつ病と似た症状を引き起こすてんかん等の神経疾患を除外するために実施される場合があります。医師は患者さんの状態を総合的に判断し、心身の状態に合った治療を提案します。「自分もうつ病かもしれない」と悩んでいる方は、安心して病院に相談してください。
以下の記事では、うつ病について網羅的に解説しています。うつ病の原因や症状、診断方法を知りたい方は要チェックの内容です。
>>うつ病とは?原因と症状や診断方法まで解説
参考文献
Tran KN, Kwon JH, Kim MK, Nguyen NPK and Yang IJ. Intranasal delivery of herbal medicine for disease treatment:A systematic review. Phytomedicine:international journal of phytotherapy and phytopharmacology 127, no. (2024): 155484.
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