気管支炎とは?症状や原因、治療法を徹底解説!
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監修者船橋 健吾(てらすクリニックひきふね院長)
咳や痰、息苦しさなどの症状はありませんか?もしかしたら気管支炎の可能性があります。 実は、気管支炎は風邪と間違えやすく、知らないうちに悪化させてしまうケースも多いです。国内では年間数百万人が罹患する身近な病気でありながら、実態はあまり知られていません。現代社会のストレスや環境変化は私たちの呼吸器にも大きな負担をかけています。
気管支炎の症状や原因、治療法や家庭でできる予防策まで、徹底的に解説します。ご自身の健康を守るため、ぜひ最後までお読みください。
墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは、気管支炎や喘息の診療をしております。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。
気管支炎とは気道にウイルスや細菌が入って炎症を起こすこと
気管支炎とは、空気の通り道である気管支に炎症が起きる病気です。原因として最も多いのは、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染です。ウイルスが鼻や喉から気管支に入り込み、炎症を引き起こします。
気管支炎の種類と原因について
気管支炎には、大きく分けて急性と慢性の2つがあります。2つの違いを理解することは、適切な治療を受けるうえで重要です。気管支炎になる原因も知っておくことで適切な対処法がわかります。
急性気管支炎と慢性気管支炎の違い
急性気管支炎は、多くの場合、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染後に発症します。咳や痰、発熱といった症状が現れますが、通常は数日〜数週間で治まります。慢性気管支炎は、長期間にわたって咳や痰が続く病気です。
主な原因は喫煙で、タバコの煙によって気管支が慢性的に炎症を起こしている状態です。慢性気管支炎は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)という病気の一つとして分類されます。COPDは進行すると呼吸困難などの深刻な症状を引き起こし、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。急性気管支炎のように自然に治ることはなく、長期的な治療が必要になります。
気管支炎を引き起こす3つの主な原因
急性気管支炎の原因として最も多いのはウイルス感染ですが、ウイルス以外にも、さまざまな原因で発症することがあります。細菌感染が原因の場合もあります。細菌性の場合、黄色や緑色など色のついた痰が出る、高熱が出るといった症状がみられることがあります。
空気中に漂う化学物質や、タバコの煙、ほこり、カビなどの刺激物を吸い込むことでも、気管支が炎症を起こし、気管支炎を発症することがあります。工場で働く人や、大気汚染の激しい地域に住んでいる人は、刺激物を吸い込む機会が多いため、特に注意が必要です。
アレルギー反応が原因で気管支炎を発症することもあります。花粉やハウスダストなどのアレルゲンを吸い込むと、気管支が過剰に反応して炎症を起こし、気管支炎の症状が現れることがあります。アレルギー性の気管支炎は、喘息のようなゼーゼーという呼吸音が聞こえることもあります。
最近では、PM2.5などの大気汚染物質による気管支炎の患者さんも増えています。咳が長引く場合は、自己判断せずに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けましょう。
気管支炎の症状
気管支炎の主な症状は以下のとおりです。
- 代表的な症状(咳、痰、息切れなど)
- 発熱、倦怠感などの付随症状
気管支炎で現れる代表的な症状や、似た症状を持つ他の病気との見分け方について、詳しく解説します。
代表的な症状(咳、痰、息切れなど)
気管支炎で最もよくみられる症状は、咳、痰、息切れです。咳は、気管支の炎症によって異物が入り込んだと体が錯覚し、体外に出そうとする反応です。最初はコンコンという乾いた咳であることが多いですが、炎症が進むと痰が絡んだゴホンゴホンという湿った咳に変わっていきます。
痰は、炎症によって気管支から分泌される粘液です。透明や白、黄色や緑色などさまざまです。風邪をひいた後などに、黄色や緑色の痰が出て驚くことがありますが、細菌感染による炎症で出た膿が混ざっているためです。必ずしも悪いサインではなく、自然に治ることも多いので安心してください。
痰の量が増えたり、血が混ざったりする場合は、肺炎や肺結核などの他の病気が隠れている可能性もあるため、速やかに医療機関を受診しましょう。息切れは、気管支の炎症によって空気の通り道が狭くなり、十分な酸素を取り込めなくなることで起こります。階段を上ったり、少し歩いたりしただけで息苦しくなる症状です。重症になると、安静時でも息苦しさを感じるようになります。高齢者や心臓に持病のある方は、特に注意が必要です。
発熱、倦怠感などの付随症状
咳、痰、息切れ以外にも、気管支炎では発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛、食欲不振などの症状が現れることもあります。風邪の症状とよく似ており、ウイルス感染によって引き起こされる炎症反応によるものです。高齢者や基礎疾患のある方では、症状が強く現れることがあります。
肺炎、喘息との見分け方
気管支炎と似た症状を持つ病気として、肺炎と喘息があります。症状が重なる部分もあるため、自己判断で見分けるのは難しいです。鑑別のためには、医療機関を受診し、医師による診察と検査が必要です。
肺炎は、肺胞と呼ばれる肺の組織に炎症が起こる病気です。気管支炎よりも重症な病気で、高熱、激しい咳、胸の痛み、呼吸困難などの症状が現れます。肺炎は、細菌やウイルス感染が原因で起こることが多く、高齢者や免疫力が低下している人は注意が必要です。
喘息は、気管支が慢性的に炎症を起こし、空気の通り道が狭くなる病気です。アレルギーやハウスダスト、ダニ、ペットの毛などが原因となることが多く、発作的に咳や息苦しさ、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという音)が現れます。喘息は慢性的な病気であり、長期的な管理が必要です。
咳や痰、息切れなどの症状が続く場合は、自己判断せずに、早めに医師の診察を受け、適切な治療を受けるようにしましょう。
喘息の概要について知りたい方は以下の記事をご覧ください。
>>喘息とは?原因や症状、治療方法を解説
気管支炎の検査方法と診断基準について
気管支炎の検査方法と診断基準について、わかりやすく解説します。どんな検査をするのか、どのように診断されるのかがわかれば、不安な気持ちも軽くなります。
気管支炎の検査方法
気管支炎の検査方法は、患者さんの症状や状態に合わせて、医師が必要な検査を選びます。
検査方法 | 説明 |
聴診 | 呼吸音を聞き、異常な音がないか確認する |
胸部レントゲン | 肺の状態を確認し、肺炎との鑑別を行う |
血液検査 | 炎症反応や感染の有無を調べる |
痰の検査 | 痰に含まれる細菌の種類や量を調べる |
呼吸機能検査 | 肺の機能を測定する |
気管支鏡検査 | 気管支の状態を直接観察する |
気管支炎の診断基準
気管支炎の診断は、検査結果に加えて、咳や痰などの症状、症状の経過などを総合的に判断して行います。
- 急性気管支炎: 風邪症状の後に、咳や痰が続く場合、急性気管支炎と診断されることが多いです。咳は、最初は乾いた咳で、徐々に痰が絡んだ咳に変わっていくことが多いです。
- 慢性気管支炎: 咳や痰などの症状が、1年に3か月以上、2年以上続いている場合は、慢性気管支炎と診断されます。慢性気管支炎は、喫煙習慣との関連が深く、COPD(慢性閉塞性肺疾患)に含まれます。禁煙は、慢性気管支炎の予防と治療において重要です。
例えば、咳が3週間以上続いていて、レントゲン検査で肺炎の所見がなく、聴診器で異常な呼吸音が聞こえる場合、気管支炎と診断されることがあります、痰の検査で特定の細菌が検出された場合も、その細菌による気管支炎と診断されることがあります。
気管支炎は、適切な治療を行うことで症状を改善することができます。少しでも気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。早期発見、早期治療が大切です。
気管支炎の治療法
咳や痰が続くと、日常生活にも支障が出てつらいと感じる人が多いです。気管支炎の治療は、症状を和らげ、楽に呼吸ができるようにすることを目指します。治療法は、気管支炎の種類や症状の重さ、原因によって異なってきます。
薬物療法や吸入療法
気管支炎の治療では、薬物療法が中心となります。薬には、飲み薬と吸入薬の2種類があり、症状に合わせて使い分けます。
薬の種類 | 効果 | 使い方の例 | 注意事項 |
鎮咳薬 | 咳を鎮める | 咳がひどいとき、寝る前に飲む | 副作用として眠気や便秘が出ることがあります |
去痰薬 | 痰を出しやすくする | 痰が絡んで苦しいとき、水と一緒に飲む | 副作用として吐き気や下痢が出ることがあります |
気管支拡張薬 | 気管支を広げる | 息苦しいとき、吸入器を使って吸い込む | 副作用として動悸や手の震えが出ることがあります |
抗生物質 | 細菌を殺す | 細菌感染が原因の場合に飲む | 抗生物質の種類によってさまざまな副作用があります |
薬の種類や使い方は、症状や年齢、他の病気の有無などによって変わるため、医師や薬剤師の指示に従って正しく使用することが大切です。
酸素療法
気管支炎が重症化し、呼吸が苦しくなった場合は、酸素療法を行うことがあります。酸素療法とは、酸素吸入器を使って、酸素濃度の高い空気を鼻や口から吸入する治療法です。酸素療法を行うことで、血液中の酸素濃度が上がり、呼吸が楽になります。
酸素療法が必要かどうかは、血液中の酸素濃度を測る「動脈血酸素飽和度(SpO2)」という検査で判断します。SpO2が90%以下になると、酸素療法が必要となることが多いです。指先にクリップのようなものを挟むだけで簡単に測定できます。
酸素療法は、入院中だけでなく、自宅で行うことも可能です。在宅酸素療法では、小型の酸素濃縮器や酸素ボンベを使用します。酸素吸入器の使い方や酸素流量の調整方法などは、医師や看護師から指導を受けます。患者さんの中には、酸素吸入器を使用することに抵抗を感じる方もいらっしゃいますが、日常生活の質を向上させるために必要な治療ですので、医師や看護師に相談しながら安心して使用できるようサポートいたします。
酸素療法中は、火気に近づかないように注意が必要です。酸素は燃焼を促進するため、タバコやガスコンロなどに近づくと火災の危険があります。酸素吸入器のチューブが折れ曲がったり、詰まったりしないように気をつけましょう。定期的に医師の診察を受け、酸素療法の効果や副作用をチェックすることも大切です。
気管支炎の予防策
気管支炎の予防策は以下のとおりです。
- 家庭でできるケア(加湿、水分補給など)
- 禁煙の重要性と禁煙サポート
- 規則正しい生活習慣と免疫力向上
気管支炎の症状は、日常生活に大きな影を落とします。気管支炎は、適切な予防策を講じることで、発症リスクを大きく下げられる病気です。
家庭でできるケア(加湿、水分補給など)
家庭でできるケアは、毎日の生活に手軽に取り入れられるので、ぜひ今日から実践してみてください。「加湿」は、乾燥した気管支の粘膜を守るための重要なケアです。適切な湿度を保つことで、気管支の粘膜を潤し、ウイルスや細菌から体を守りましょう。
加湿器を使ったり、濡れタオルを干したり、洗濯物を部屋干しするのも効果的です。冬場は特に乾燥しやすいので、こまめな加湿を心がけてください。特に小さなお子さんは、気道の粘膜がデリケートなので、加湿は重要です。
「水分補給」も、気管支炎予防に欠かせません。水分を十分に摂ることで、痰をサラサラにして出しやすくし、気道の乾燥を防ぎます。1日に1.5~2リットルを目安に、こまめに水分を摂るように心がけましょう。水だけでなく、お茶やスープなども水分補給に役立ちます
「うがい手洗い」は、感染症予防の基本中の基本です。外出先からウイルスや細菌を持ち帰らないよう、帰宅後は必ずうがい手洗いを徹底しましょう。手洗いは、石鹸を使って丁寧に洗い、流水でしっかりすすぎます。水だけでなく、イソジンなどのうがい薬を使うのも効果的です。うがい手洗いを習慣づけることで、気管支炎だけでなく、風邪やインフルエンザなどの感染症予防にもつながります。
「マスクの着用」も、ウイルスや細菌の侵入を防ぐ効果的な手段です。人混みや風邪が流行している時期は、積極的にマスクを着用しましょう。マスクは、自分を守るだけでなく、周りの人への感染拡大を防ぐうえでも重要です。高齢者や基礎疾患のある方、免疫力が低下している方は、マスク着用を心がけてください。
禁煙の重要性と禁煙サポート
禁煙は、気管支炎の予防だけでなく、肺がんやCOPDなどの他の呼吸器疾患、さらには心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患のリスクを減らすためにも重要です。
禁煙は難しいと感じる方もいますが、禁煙外来や禁煙アプリなど、さまざまなサポートがあります。医師や専門家に相談することで、自分に合った禁煙方法を見つけることができます。家族や友人に禁煙の意思を伝え、励ましや協力を得ることも効果的です。禁煙は、自分自身だけでなく、周りの人の健康を守るためにも大切な行動です。
規則正しい生活習慣と免疫力向上
規則正しい生活習慣と免疫力向上は、気管支炎を含むさまざまな病気の予防に効果的な、まさに万能薬です。「十分な睡眠」は、免疫力を高めるために不可欠です。睡眠不足は、免疫細胞の働きを弱め、感染症にかかりやすくなります。毎日同じ時間に寝起きし、7~8時間の睡眠時間を確保しましょう。
「バランスの良い食事」も、免疫力を高めるうえで重要な要素です。野菜や果物、たんぱく質などをバランスよく摂り、体の抵抗力を高めましょう。偏った食事やインスタント食品ばかり食べていると、栄養不足になり、免疫力が低下しやすくなります。ビタミンやミネラルは、免疫機能を維持するために不可欠な栄養素です。
「適度な運動」は、血行を促進し、免疫細胞の働きを活発にする効果があります。ウォーキングやジョギングなど、無理のない範囲で体を動かす習慣をつけましょう。運動不足は、免疫力の低下だけでなく、肥満や生活習慣病のリスクも高めます。毎日30分のウォーキングを続けるだけでも、免疫力向上につながります。休日は家族で公園に出かけ、体を動かすのもおすすめです。
生活習慣を改善することで、気管支炎だけでなく、さまざまな病気のリスクを軽減できます。健康な体を維持するためにも、今日からできることから始めてみましょう。
まとめ
気管支炎は、気管支に炎症が起こる病気で、咳や痰、息切れといった呼吸器症状が現れます。急性気管支炎は風邪などをきっかけに発症することが多く、慢性気管支炎は喫煙などが原因で長期間咳や痰が続く病気です。
気管支炎の治療は、薬物療法や吸入療法が中心です。咳や痰を抑える薬、気管支を広げる薬など、症状に合わせて適切な薬が処方されます。重症の場合は酸素療法が必要になることもあります。
気管支炎の予防には、加湿や水分補給、うがい手洗い、マスクの着用など、家庭でできるケアが役立つとされています。喫煙は慢性気管支炎の最大の原因となるため、禁煙することが大切です。規則正しい生活習慣を送り、免疫力を高めることも、気管支炎の予防につながります。
少しでも気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な検査と治療を受けるようにしましょう。
咳が止まらないという方は、何かしらの病気の恐れもあります。危険な状態の可能性もあるため、適切に対処しなければなりません。以下の記事では、長引く咳の原因や対処法について解説しているので、ぜひご覧ください。
>>【医師監修】咳が止まらないのは危険!長引く咳の原因や対処法を徹底解説
参考文献
Kinkade S, Long NA. Acute Bronchitis. American family physician 94, no. 7 (2016): 560-565.
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