認知症が一気に進む原因とは?進行を遅らせる方法や治療法を徹底解説
「昨日の夕食を忘れた」 「家族の顔が分からなくなる」 上記のような変化が短期間で現れたら、認知症が急激に進んでいるサインかもしれません。認知症はゆっくりと進行するイメージがありますが、実際には、さまざまなきっかけで症状が急激に悪化するケースが多く見られます。この記事では、認知症が急に進行する原因を7つ、具体的な症例を交えながら詳しく解説していきます。 進行を遅らせるための対策も具体的に説明しているので、ぜひ最後まで読んでください。 墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは高齢者外来をしており、認知症だけでなく、不眠症や腰痛で悩んでいる方の診療もしています。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。 >>オンライン予約はこちらから 認知症が一気に進む原因7選 認知症は、ゆっくりと進行していくイメージをお持ちの方も多いかもしれません。しかし実際には、あるきっかけで症状が急激に悪化することがあります。「家族の顔が分からなくなる」など、短期間で変化が現れたら、認知症が一気に進んでいるサインかもしれません。今回は、認知症が急に進行する7つの原因を解説します。 急性疾患による身体への影響 肺炎や尿路感染症などの感染症や、脳卒中を起こしたりすると、認知症の症状が急に悪化するケースがあります。高齢者の場合、体力や免疫力が低下しているため、こうした病気の影響を大きく受けやすいです。 今まで普通に会話できていた方が、軽い脳梗塞を発症したとします。後遺症はほとんど残らなかったものの、認知症の症状が進行し、日常生活に支障が出るケースが多いです。脳梗塞によって脳の一部がダメージを受けたことで、認知機能の低下に拍車がかかったと考えられます。 高齢者は、肺炎などの感染症にかかると、高熱や咳、呼吸困難などの症状に加え、意識レベルが低下したり、幻覚を見たりすることがあります。こうした状態を「せん妄」といいますが、せん妄は認知症の症状を悪化させるだけでなく、認知症と間違われやすい状態でもあります。 薬の副作用 認知症の症状を和らげるために服用している薬であっても、その副作用によって、逆に認知症の症状が悪化することがあります。高齢者は薬の代謝機能が低下し、副作用が出やすい傾向です。 睡眠薬や抗不安薬は、認知機能を低下させる可能性もあります。睡眠薬や抗不安薬を服用している高齢者では、ふらつきや転倒のリスクが高まり、骨折などをきっかけに認知症が進行する場合も考えられます。 複数の医療機関を受診している場合、処方された薬同士の飲み合わせが悪く、認知症の症状が悪化することもあります。お薬手帳を活用するなどして、服用している薬を医師や薬剤師にきちんと伝えることが重要です。 脱水症状 私たちの身体は約60%が水分でできており、脳は約75%が水分でできています。水分が不足すると、身体や脳の働きが鈍くなり、認知症の症状が悪化する可能性があります。特に、高齢者は体内の水分量が少なく、喉の渇きを感じにくい傾向があるため、注意が必要です。 暑い時期や運動後などは、意識的に水分を摂るように心がけましょう。 便秘 便秘になると、腸内に老廃物が溜まり、体内に毒素が放出されます。毒素が血液によって脳に運ばれると、脳の機能が低下し、認知症の症状を悪化させる可能性があります。便秘は、食生活の乱れや運動不足などが原因で起こります。認知症の人は、食が細くなったり、外出する機会が減ったりするため、便秘になりやすい傾向です。 便秘を防ぐためには、食物繊維を多く含む食事を心がけ、適度な運動をすることが大切です。水分不足も便秘の原因となるため、こまめな水分補給を心がけましょう。 環境の変化によるストレス 認知症の人は、環境の変化に適応することが難しく、大きなストレスを感じやすい傾向があります。引っ越しや入院、親しい人の死別などが、認知症の症状を一気に悪化させる原因になることがあります。 長年住み慣れた家を離れ、施設に入居した途端、認知症の症状が進行してしまうケースは少なくありません。新しい環境に慣れようと努力するものの、かえってストレスとなり、認知機能の低下を招いてしまいます。環境の変化に伴って認知症の人が安心できるよう、周りの人が寄り添い、サポートしていくことが大切です。 感染症 インフルエンザや肺炎などの感染症にかかると、発熱や倦怠感、食欲不振などの症状が現れます。感染症にかかることで体力が奪われ、認知症の症状が悪化することがあります。感染症によって脳に炎症が起こると、意識障害やせん妄状態を引き起こし、認知症の症状が悪化する場合もあるのです。 高齢者は免疫力が低下しているため、感染症に注意が必要です。予防接種を受けたり、手洗いやうがいを徹底したりするなどして、感染症予防に努めましょう。 うつ症状 うつ病になると、意欲や集中力、思考力の低下などの症状が現れます。うつ症状は、認知症の症状にとても似ており、うつ病で認知症の症状が悪化しているように見えることがあります。 うつ病は、認知症の症状を悪化させるだけでなく、認知症の発症リスクを高める可能性もあります。うつ病の治療を行うことで、認知症の進行を遅らせる効果が期待できます。 うつ病になった場合の仕事との向き合い方や、適応障害についても解説している記事もあるので、気になる方は以下の記事をぜひご覧ください。 >>うつ病になったら仕事はどうなる?対処法や働けないときのサポートも紹介 >>適応障害とうつ病の違いとは?適応障害からうつ病に移行することはあるの? 認知症の進行を遅らせる方法と治療法 認知症は、早期発見・早期治療も大切ですが、日々の生活の中で、進行を少しでも遅らせる努力を続けることが重要です。認知症は生活習慣の改善によって、進行を遅らせたり、予防できたりする可能性があります。 20週間にわたる集中的な生活習慣改善に取り組んだグループと、そうでないグループを比較した研究があります。結果は、生活習慣改善に取り組んだグループでは、認知機能や日常生活動作に明らかな改善が見られました。研究結果から、認知症との向き合い方として、私たち一人ひとりが生活習慣を見直し、改善していくことが重要です。 認知症の進行を遅らせる具体的な方法は以下のとおりです。 薬物療法 非薬物療法 食事療法 運動療法 認知機能のトレーニング 治療をバランスよく組み合わせれば、より効果的に認知症の進行を遅らせることが可能です。 薬物療法 薬物療法は、主にアルツハイマー型認知症の進行を遅らせる目的で行われます。代表的な薬としてアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬などがあります。 2023年には、新しい治療薬「レカネマブ」が承認されました。レカネマブは、神経細胞の破壊を防ぐ作用があり、軽度認知障害や軽度認知症患者に対して使用されます。 ただし、薬の効果や副作用には個人差があります。自己判断で服用を中止したり、量を変更したりせず、必ず医師の指示に従ってください。 非薬物療法 非薬物療法は、薬を使わずに認知症の症状を和らげたり、進行を遅らせたりする方法です。デイサービスや老人クラブなどに参加し、多くの人と交流することは、脳への刺激となり認知機能の維持に役立ちます。 音楽療法やアロマセラピーなども、リラックス効果や気分転換をもたらし、認知症の症状の緩和が期待できます。 食事療法 毎日の食事は、私たちの身体だけでなく、脳の健康にも大きな影響を与えます。認知症の予防には、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。魚に多く含まれるDHAやEPAなどの不飽和脂肪酸は、脳の神経細胞の働きを活発化させる効果があるとされ、認知症予防に効果が期待されています。 具体的には、サバやイワシ、サンマなどの青魚を積極的に食事に取り入れましょう。野菜や果物に含まれるビタミンやミネラルは、脳の酸化ストレスを軽減し、認知機能の低下を防ぐ効果が期待できます。具体的には、次のような食事がおすすめです。 主食:ご飯やパン、麺類などをバランスよく食べる 主菜:魚や肉、卵や大豆製品など、タンパク質を多く含む食品を食べる 副菜:野菜やきのこ、海藻など、ビタミンやミネラルを多く含む食品を食べる 運動療法 適度な運動は、身体の健康だけでなく、脳の健康にも良い影響を与えます。運動によって脳の血流が良くなると、神経細胞に酸素や栄養が行き渡りやすくなり、認知機能の維持や向上が期待できます。 運動にはストレスを解消する効果もあり、うつ病や不安症の予防にもつながります。ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、脳の血流を改善する効果が高いです。その他、ヨガやストレッチなども、リラックス効果や柔軟性の向上に役立ちます。無理のない範囲で、楽しみながら運動を続けることが大切です。 認知機能のトレーニング 認知機能のトレーニングは、脳を積極的に使うことで、機能を維持・向上させることを目的としています。クロスワードパズルなどの頭を使うゲームや趣味に取り組むことは、脳への良い刺激となり、認知機能の維持に役立ちます。 「最近、漢字がなかなか思い出せなくて…」という方は、新聞や雑誌を読み、知らない言葉や漢字を調べるのもおすすめです。「昔は旅行が好きだったのに、最近は億劫で…」という方は、旅行のパンフレットを見るだけでも、脳は活性化されます。 日常生活の中で、意識的に脳を使う習慣を身に付けることが大切です。 まとめ 認知症は緩やかに進行すると思われがちですが、実際には、あるきっかけで急激に進行するケースがあります。原因は、身体的要因や環境的要因、精神的要因など、多岐にわたります。 認知症の進行を遅らせるためには、下記の対策が有効です。 適切な服薬管理 バランスの取れた食事 適度な運動 認知機能のトレーニング 認知症が進行した場合、家族は症状に合わせたコミュニケーションを取り、安全な環境を整えることが大切です。介護サービスの活用や専門医への相談も検討し、ご家族だけで抱え込まず、周囲のサポートも得ながら、認知症の方を支えていきましょう。 夜眠れないという方は認知症だけでなく、不眠症の可能性があります。不眠症について網羅的に知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。 >>不眠症の基本について!症状の種類から治療法まで幅広く解説 参考文献 Zhao J, Li T, Wang J. Association between psoriasis and dementia: A systematic review. Neurologia 39, no. 1 (2024): 55-62. Effects of intensive lifestyle changes on the progression of mild cognitive impairment or early dementia due to Alzheimer's disease: a randomized, controlled clinical trial