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うつ病の初期症状とは?心の健康を守るための予防策と主な治療法

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監修者船橋 健吾(てらすクリニックひきふね院長)

誰もが経験する気分の落ち込み。もしかするとうつ病の症状の一つである可能性があります。うつ病は現代社会で増加している深刻な問題です。しかし、適切な治療を受ければ、多くの人が回復できることをご存知ですか?

この記事では、うつ病の初期症状と予防策、主な治療法である「休養」「薬物療法」「精神療法」について、解説します。初期症状や治療法を理解することで、あなたやあなたの大切な人がうつ病と向き合うための具体的な方法がわかります。

墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは、うつ病の診療をしております。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。

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うつ病の初期症状:見逃さないための8つのサイン

うつ病は適切な治療が必要な病気であり、初期症状の早期発見と早期治療が重要です。以下に、うつ病の初期症状として見られる8つのサインについて説明します。

憂鬱な気分が続く

うつ病の初期症状として、2週間以上にわたって憂鬱な気分が続くことがあり、以下の特徴が見られます。

  • 朝から気分が重く、一日中晴れない
  • 心に暗い雲がかかったような感覚
  • 何をするにも意欲が湧かない

例えば、以前は楽しんでいた趣味や活動に対して興味を失うことがあります。

興味や喜びの喪失

うつ病の重要なサインとして、「何をしても楽しくない」という状態があります。「興味や喜びの喪失」と呼ばれ、以下の特徴があります。

  • 以前は楽しみにしていた活動が面倒に感じる
  • 好きだったものがつまらなく感じる
  • 日常的な楽しみが失われる

例えば、毎日欠かさず見ていたスポーツ中継を見る気が起きなくなり、大切にしていたコレクションに興味を失うなどです。

食欲の変化(過食または食欲不振)

うつ病は食欲にも影響を及ぼし、以下のような変化が見られることがあります。

  • 食欲不振:何を食べても味がしない。食事量や体重が減少する。
  • 過食:不安やストレスを紛らわせるために食べ過ぎてしまう。体重が増加する。

食欲の変化が顕著な場合は、うつ病の可能性を考慮しましょう。

睡眠障害(不眠または過眠)

うつ病の初期症状として、睡眠パターンの変化がよく見られます。主に以下の二つのタイプがあります。

  • 不眠症状:寝付きが悪く、夜中に何度も目が覚める。朝早くに目が覚めてしまう。
  • 過眠症状:一日中眠くて仕方がない。必要以上に睡眠時間が長くなる。

睡眠は心身の健康維持に不可欠であり、睡眠に問題が生じている場合は、うつ病だけでなく他の病気の可能性も考えられるため、医師に相談することが重要です。

疲労感や倦怠感

うつ病の初期症状として、持続的な疲労感や倦怠感が現れることがあり、以下の特徴があります。

  • 身体を動かしていないのに常に疲れている
  • 朝起きても疲れが取れていない
  • 日中も体が重く、活動意欲が低下する

上記のように、うつ病になると疲労感や倦怠感から、会社に行くだけで精一杯、休んでも疲れが取れないという症状を訴える人もいます。

集中力の低下、決断困難

うつ病の初期症状として、以下の認知機能の変化が見られることがあります。

  • 仕事や勉強に集中できない
  • 簡単な計算ミスが増える
  • 決断力や判断力が鈍る

「会議中に集中力が途切れて話の内容が頭に入らない」「日常的な買い物でも何を買うか決められない」といった状況が起こり得ます。

自分を責める、無価値観

うつ病の初期症状として、自己否定的な思考パターンが現れることがあります。以下のような特徴があります。

  • 自分が悪い人間だと感じる
  • 生きてる価値がないと思う
  • 些細なミスを必要以上に責める
  • 自分の存在意義を見失う

「自分が悪いから、みんなが不幸になる」「自分は何もできない人間だ」といった思考に陥りやすくなります。

死や自殺についての思考

うつ病の深刻な症状として、死や自殺についての思考が挙げられます。思考的に危険な状態であり、以下の特徴があります。

  • 「死にたい」と考えてしまう
  • 自殺願望を持つ
  • 死について頻繁に考える

もし、上記の思考が現れた場合は、早急に専門家の助けが必要です。一人で悩まず、信頼できる人に相談したり、医療機関を受診したりしましょう。

最新の研究によると、過去のうつ病エピソードの回数や残存症状が再発リスクの増加と関連していることが示唆されています。過去に5回以上のうつ病エピソードがある方は、再発までの期間が短い傾向です。うつ病の残存症状がある方も再発しやすいので注意しましょう。

8つのサインは、うつ病の初期症状として現れる可能性があります。症状が2週間以上続く場合は、うつ病の可能性を考慮し、専門医に相談することをおすすめします。早期発見と適切な治療により、うつ病からの回復と再発防止につながります。

うつ病の予防策

うつ病は誰にでも起こりうる身近な病気です。気分の落ち込みは自然な感情ですが、うつ病はマイナスな感情が長期間続き、日常生活に支障をきたす状態を指します。早期発見・早期治療に加え、日頃から心の健康を保つための予防とセルフケアが重要です。ここでは、うつ病の対処法と予防策について、具体的かつ実践的な情報を提供します。

ストレスマネジメント

ストレスはうつ病の主要な原因の一つです。効果的なストレスマネジメントは、うつ病の予防と再発防止に不可欠です。以下に具体的な方法を示します。

ストレスのサインを認識する

ストレスにはいくつかのサインがあります。以下にストレスのサインをまとめました。

  • イライラ
  • 集中力低下
  • 食欲変化
  • 睡眠の質の低下

上記の症状が現れた場合、ストレスを感じている可能性があります。

ストレス要因を特定する

ストレスサインを認識した後は、要因を特定することが大切です。ストレス要因としては、仕事のプレッシャーや人間関係の問題、将来への不安などが上げられます。特に人間関係は、ストレス要因として挙げられる場合が多いです。

ストレス発散法を見つける

主なストレス発散法は以下のとおりです。

  • 音楽鑑賞
  • 散歩
  • 映画鑑賞
  • 友人との会話
  • スポーツ
  • ペットとの触れ合い

ストレスマネジメントの実践例として、深呼吸法があります。ゆっくりと息を吸い込み、深く吐き出すことで、心身をリラックスさせることができます。また、ストレス日記をつけることで、自分のストレス要因を具体的に把握し、対処法を見出せます。

規則正しい生活習慣(睡眠、食事、運動)

規則正しい生活習慣は心身の健康を保つ基盤です。睡眠や食事、運動の3つの要素に注目し、生活リズムを整えることが重要です。

睡眠

睡眠は生活リズムを整えるうえで重要です。毎日同じ時間に就寝・起床することを意識しましょう。寝室環境は暗く、静かにして、就寝前のカフェイン摂取は避けてください。ぬるめの入浴で質の高い睡眠を促進することも可能です。

National Sleep Foundationの推奨によると、成人の適切な睡眠時間は7〜9時間です。質の良い睡眠は、うつ病のリスクを低減させる可能性があります。

食事

食事はうつ病の予防だけではなく、私たちの生活において重要です。バランスの良い食事を心がけましょう。ビタミンB群や鉄分、必須脂肪酸を含む食品やトリプトファンを含む食品(肉、魚、大豆製品など)を積極的に摂取してください。精神的にだけではなく、身体的にも健康な状態を保てます。

運動

運動習慣を見つけるためには、以下の内容が有効的です。

  • ウォーキング、ジョギング、水泳、ヨガなど自分に合った運動を選択
  • 徐々に強度や時間を増やす
  • 太陽光を浴びながらの運動でセロトニン分泌を促進

最新の研究では、推奨される身体活動量(週8.8 mMET時間、約2.5時間の早歩きに相当)を行う成人は、身体活動を全く行わない成人と比較して、うつ病のリスクが25%低下することが示されています。

リフレッシュ方法を見つける

心身のリフレッシュはうつ病の予防に効果的です。以下に具体的な方法を示します。

  • 趣味の活動:絵画・音楽・読書・ガーデニング
  • 自然との触れ合い:公園散策・ハイキング・ビーチでのリラックス
  • 旅行:近場の温泉や観光地や遠方のリゾート地

上記のようにリフレッシュ方法はさまざまですが、自分にあった方法を見つけることが大切です。

周囲に相談する、サポートを求める

一人で問題を抱え込まずに、周囲に相談することが重要です。以下に相談先の例を示します。

  • 家族や友人
  • 職場の同僚や上司
  • 専門家(精神科医、カウンセラー)

誰かに相談することで、ストレスを軽減しうつ病を予防できます。

認知行動療法の活用

認知行動療法(CBT)は、うつ病の治療だけでなく予防にも効果的です。以下にCBTの主要な要素を示します。

  • ネガティブな思考パターンの特定
  • 思考の歪みの修正
  • 適応的な行動パターンの習得

研究で、CBTは他の形態の心理療法や精神科薬物療法と同等か、それ以上に効果的であることが示されています。

うつ病の再発予防

うつ病は再発しやすい疾患であるため、再発予防が重要です。以下に再発予防の具体的な方法を示します。

  • 治療の継続
  • 規則正しい生活習慣の維持
  • ストレスマネジメントの継続
  • 早期発見・早期治療

上記の対処法と予防策を日常生活に取り入れることで、うつ病のリスクを低減し、心身の健康を維持できます。深刻な症状がある場合や、自殺念慮がある場合は、直ちに専門家に相談することが重要です。うつ病は治療可能な疾患であり、適切な対処と支援により、多くの人が回復しています。

うつ病の主な治療法

うつ病の治療は複合的なアプローチが必要です。主要な治療法として「休養」「薬物療法」「精神療法」の3つが挙げられます。適切に組み合わせることで、効果的な回復が期待できます。治療法の詳細と最新の研究結果を踏まえて解説します。

休養と環境調整

休養はうつ病治療の基本です。疲労した脳と体を適切に休ませることが重要です。具体的な休養方法としては、以下が挙げられます。

  • 十分な睡眠の確保
  • リラックス活動(音楽鑑賞、入浴など)
  • 必要に応じた学業や仕事の休止

休養と併せて、ストレス要因を軽減するための環境調整も重要です。職場での配置転換や残業時間の短縮、家事の分担などが挙げられます。必要に応じた学業や仕事の休止に加え、職場復帰に向けた復職プログラムの導入などが有効です。休養は病気の回復に必要不可欠なプロセスであることを理解しましょう。

薬物療法

薬物療法は、脳内の神経伝達物質のバランスを調整することを目的としています。うつ病患者の脳では、セロトニンやノルアドレナリンなどの物質のバランスが崩れていることが知られています。主に使用される薬剤には以下があります。

  • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
  • セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
  • 三環系抗うつ薬

薬の効果は即時的ではなく、通常2〜4週間程度で現れ始めます。一部の患者では6〜8週間かかる場合もあります。効果が現れるまでには個人差があるため、医師の指示に従って継続的に服用することが重要です。

精神療法

精神療法は、専門家との対話を通じて心理的な問題の解決を図る方法です。主な精神療法には以下があります。

  • 認知行動療法(CBT)
  • 対人関係療法(IPT)
  • マインドフルネス認知療法(MBCT)

CBTでは、否定的な思考パターンや行動パターンを識別し、より適応的な方法に変更することを目指します。うつ症状の軽減だけでなく、再発予防にも効果があるとされています。IPT は、人間関係の改善を通じてうつ病の症状を軽減することを目指します。MBCT は、マインドフルネスの実践を通じて再発予防を目的とした治療法です。

まとめ

うつ病の初期症状は、憂鬱な気分、興味や喜びの喪失、食欲・睡眠の変化、疲労感、集中力低下、自己否定、自殺願望など多岐に渡ります。症状に気づいたら、早期の受診・治療が重要です。治療が遅れると回復も遅れる傾向があるため、日常生活に支障が出る前に専門家のサポートを求めましょう。

予防・再発予防には、ストレス管理、規則正しい生活、リフレッシュ、周囲への相談、認知行動療法などが有効です。心の健康を守るため、できることから始めてみましょう。

うつ病は一度なると再発しやすい病気です。以下では、うつ病の再発に関して詳しく解説しているのでぜひチェックしてみてください。
>>【医師監修】うつ病は再発しやすいって本当?再発のきっかけや仕事との向き合い方を解説

参考文献