健康診断で糖尿病と診断された場合の対処法|症状解説と受診科の選び方
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「健康診断で糖尿病を指摘されたが、どうすればいいのだろうか」「糖尿病の診断基準や初期症状を知りたい」「何科を受診すればいいのだろうか」などと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
糖尿病は本人が気付かないうちに徐々に進行していき、最悪の場合は命に関わることもある恐ろしい病気です。そのため、健康診断で異常を指摘されたらすぐにでも病院を受診し、適切な治療を受けることが欠かせません。
本記事では、糖尿病の概要や症状、取るべき行動、何科を受診すべきなのかを解説します。健康診断で血糖値の異常を指摘された方は、ぜひ参考にしてください。
糖尿病とは?診断基準と種類を解説
糖尿病とは、体内のインスリン量の不足または作用が低下することにより、血糖値(ブドウ糖)が適切にコントロールされなくなり、慢性的に高血糖状態が引き起こされる疾患です。糖尿病が進行すると、尿中にもブドウ糖(グルコース)が大量に排泄されるため、甘い匂いを放つため「糖尿病」と名付けられていますが、尿ではなく血液検査により確定診断がなされます。
厚生労働省が公表した資料「糖尿病診療の現状」によると、2016年時点で「糖尿病が強く疑われる人」「糖尿病の可能性を否定できない人」の合計は、2,000万人に上るとされています。ピークの2007年からは減少しているものの、それほど糖尿病はありふれた疾患なのです。
糖尿病の病態
通常の血糖値は、インスリンにより空腹時血糖70〜109mg/dl、食後血糖概ね140mg/dlにコントロールされています。
糖尿病によりインスリンの効果が低下すると、血糖値のコントロールができず、血糖の持続的な上昇が引き起こされるのです。これにより血管がダメージを受け、心筋梗塞や網膜症、腎障害、神経障害などの症状が現れます。
糖尿病は病態によりさまざまな種類がありますが、大きく1型糖尿病と2型糖尿病の2つに分類されます。同じ疾患名でも、その病態や原因は異なるので、それぞれを詳しく見ていきましょう。
1型糖尿病
1型糖尿病とは、体内でインスリンを作る膵臓に対する抗体ができ、インスリンがまったく、もしくはほとんど産生されなくなる自己免疫疾患です。インスリン依存型とも呼ばれ、インスリンの絶対量が少ないため、常にインスリンの自己注射が必要となります。
1型糖尿病は、誘因により3つに分類されます。
分類 | 特徴 |
急性発症1型糖尿病 | 遺伝的要因を背景に、感染症やその他が契機となる。高い確率で膵島関連自己抗体が陽性になる。 |
緩徐進行1型糖尿病 | 自己免疫により膵臓のβ細胞が徐々に破壊される。2型糖尿病と間違われやすいが、自己抗体の一種、GAD抗体が陽性となる。 |
劇症1型糖尿病 | 原因が不明のまま、急激にインスリン依存状態に陥る。 |
1型糖尿病は、インスリン注射や食事療法が生涯にわたって実施されます。
2型糖尿病
2型糖尿病は、体内でインスリンの量が不足、または作用が低下することで、慢性的に高血糖状態がもたらされる疾患です。遺伝的要因に加えて食生活や運動習慣、肥満などの生活習慣が影響するとされています。
中高年以降の男性に多く、日本人の糖尿病の多くがこのタイプです。本記事では特に断りのない限り健康診断でも指摘されがちな2型糖尿病について解説します。
糖尿病の初期症状
糖尿病の初期段階は症状に乏しく、気付きにくいものですが、主な初期症状には以下があります。
- 疲れやすい
- 喉の渇きと多飲
- 多尿
- 体重減少
- 手足のちくちくとしたしびれ
- 手先・足先の感覚低下
- 疲労感
- 視力の変化・低下
- 勃起不全(ED)
- 皮膚の傷が治りにくい
- 皮膚のかゆみ
繰り返しになりますが、初期には上記の自覚症状がないこともしばしばあり、健康診断で指摘されて気付くケースが一般的です。
糖尿病の三大合併症
高血糖の状態が長期間続くと、全身の細い血管や神経が障害を受けます。その結果、以下のように「糖尿病の三大合併症」が引き起こされます。
- 糖尿病網膜症
- 糖尿病腎症
- 糖尿病神経障害
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は、高血糖状態が続くことで目の中にある網膜の細い血管が障害を受け、視力が低下する合併症です。網膜とは目の内部にある薄い膜で、光を電気信号にして脳に情報を送る役割があります。
糖尿病網膜症が進行すると失明する可能性があり、日本の中高年以降の失明原因のなかで、緑内障に次ぐ第2位です。初期段階では症状に乏しいですが、視界がかすむ・視力が低下するなどの症状が現れ、治療しなければ失明に至ります。
糖尿病腎症
糖尿病腎症は、高血糖状態が長期にわたり続くことで、腎臓の組織が障害され、機能が徐々に低下する合併症です。糖尿病腎症が進行すると、腎臓の糸球体が障害され、最終的には腎不全に至る可能性があります。糸球体とは、血液をろ過し尿を生成する役割がある組織です。
糖尿病腎症の初期段階は、特に症状が見られませんが、進行するにつれてタンパク質が尿に出る(タンパク尿)ようになります。さらに進行すると、浮腫やむくみ、疲労感、尿量の減少などが現れます。
早期腎症→顕性腎症前期→顕性腎症後期→腎不全と徐々に進行し、最終的には慢性腎不全となり透析が必要です。糖尿病性腎症は、透析治療が必要となる主な原因となっています。
糖尿病神経障害
糖尿病で高血糖状態が続くと、運動神経・感覚神経・自律神経も障害されます。
障害される神経 | 症状 |
運動神経 | ・物が二重に見える
・物が掴みづらくなる ・歩くづらくなる |
感覚神経 | ・痛みや温痛覚を感じにくい
・不快な痛みを感じる |
自律神経 | ・立ちくらみ
・発汗異常 ・下痢や便秘 ・排尿障害 ・消化吸収障害 |
これらの合併症以外にも、大血管が障害されると心筋梗塞や狭心症になりやすくなったり、血流が悪くなると潰瘍ができやすくなったりする他、感染症にかかりやすくなるなどの症状も現れます。
健康診断で糖尿病を疑われたら取るべき行動
健康診断で糖尿病を疑われたら、何をすればいいのでしょうか。まずは、以下の行動を取ってください。
- 医療機関の受診
- 食生活の改善
- 運動習慣の見直し
医療機関の受診
まずは、なるべく早く医療機関を受診してください。特に健康診断でC判定(要再検査)やD判定(要精密検査)の評価を受けた方は、注意が必要です。
早めに治療を開始すれば、放置する場合よりも病気の進行を抑え、重大な合併症に至る可能性を減らせます。
食生活の改善
糖尿病の原因に、偏った食生活があげられるので、食生活も改善しましょう。以下のポイントを参考にしてください。
- 炭水化物の量を減らす
- 食事のバランスを意識する
- 食べる順番を工夫する
1つ目のポイントは、炭水化物の量を減らすことです。らーめんやうどん、そば、ごはんなど炭水化物からなる食物をたくさん食べていないでしょうか。
糖質が多く含まれており、量が多いと血糖値があがる原因となってしまいます。糖質の多い食べ物を適度に制限すれば、インスリンの分泌を抑え、食後の急激な血糖低下を抑えることができます。
2つ目のポイントは、食事のバランスを意識することです。主食・主菜・副菜から炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・無機質(ミネラル)をバランス良くとりましょう。
3つ目のポイントは、食べる順番を工夫することです。炭水化物が多く含まれている食べ物より先に、野菜や肉類・魚類を食べると、食後の急激な血糖の上昇を抑えられます。
運動習慣の見直し
運動習慣の見直しを行いましょう。運動は糖尿病治療の3本柱「運動療法・食事療法・薬物療法」のうちの一つです。
無理しない範囲で、週に150分以上の中等度の有酸素運動を、週3回以上行ってみましょう。また、週に2~3回のレジスタンス運動(筋肉に抵抗をかける運動)も組み合わせることで、血糖コントロールやインスリン抵抗性、脂質代謝の改善が期待できます。運動持続時間は、20分以上行うことが推奨されています。
糖尿病を疑われたら何科を受診する?
糖尿病を疑われたら、医療機関の受診が重要です。まずは一般内科や糖尿病内科を受診しましょう。ここで、糖尿病診断に必要な専門的な検査が行われます。
その後、症状がある場合は眼科や腎臓内科、神経内科などの専門科の受診が必要です。眼底検査やニューロメーターなどの検査が実施されます。
糖尿病が疑われる、もしくは診断がついたら治療が開始されます。治療は、食事療法・運動療法・薬物療法の3本柱です。
食事療法 | 糖尿病管理の基本。適切な食事管理を通して、血糖値の急激な上昇を防ぎ、コントロールする。 |
運動療法 | インスリンの感受性を高められる。有酸素運動とレジスタンス運動(筋トレ)の両方を行うことが推奨されている。 |
薬物療法 | 食事療法・運動療法で血糖コントロールが不良な場合、インスリンや経口血糖降下薬などが用いられる。 |
東京都墨田区で糖尿病の相談・治療をするならてらすクリニックひきふねへ
糖尿病は慢性的に血糖値が高い状態が続くことで、血管や神経が障害されさまざまな症状が現れる疾患です。治療せず放置すると、糖尿病網膜症・糖尿病腎症・糖尿病神経障害などさまざまな合併症が引き起こされ、最悪の場合失明や命に関わる可能性があります。そのため、健康診断で異常を指摘されたら、すぐにでも医療機関を受診しましょう。
東京都墨田区で糖尿病の相談・治療をするなら、てらすクリニックひきふねへぜひお越しください。当院では、患者さま一人ひとりに寄り添い適切な医療を提供します。健康診断で血糖値の異常を指摘された方は、お気軽にご来院ください。