気管支炎で夜に息苦しいと感じたらどうする?眠れない夜の対処法を解説
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監修者船橋 健吾(てらすクリニックひきふね院長)
息苦しい夜、不安で眠れないという経験はありませんか? 気管支炎は、特に夜になると息苦しさが増し、恐怖を感じる方も少なくありません。気管支炎で夜に息苦しくなるのには、気道の炎症や粘液の蓄積、横になる姿勢、アレルギー反応の悪化など、さまざまな原因が潜んでいます。
この記事では、夜間の息苦しさに悩むあなたのために、原因や対処法を解説します。すぐに試せる7つの対処法と、気管支炎を予防するための5つのポイントもご紹介します。つらい症状を和らげ、快適な睡眠を取り戻すためのヒントが満載です。
墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは気管支炎や喘息の診療もしています。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。
気管支炎で夜に息苦しくなる原因4つ
気管支炎で夜に息苦しくなる原因は以下のとおりです。
- 気道の炎症による狭窄
- 粘液の蓄積による気道閉塞
- 横になる姿勢による肺への圧迫
- アレルギー反応の悪化
原因を知ることで、ご自身に合った適切な対処法を見つけやすくなります。
気道の炎症による狭窄
気管支炎になると、気道(空気が通る管)が炎症を起こして腫れてしまいます。風邪をひいたときに鼻が詰まって息苦しくなるのと似ています。鼻水で鼻が詰まるだけでなく、鼻の粘膜が腫れると鼻の通り道が狭くなるように、気管支の粘膜が腫れると空気の通り道が狭くなり、息苦しさを感じやすくなるのです。
特に夜は副交感神経が優位になり、気管支が収縮しやすいため、炎症による狭窄の影響をより強く受けます。昼間は活動することで交感神経が優位になり、気管支もやや拡張しますが、夜になるとリラックスして副交感神経が優位になることで、気管支が収縮し、息苦しさが増してしまうのです。
粘液の蓄積による気道閉塞
気管支炎になると、炎症によって痰(粘液)がたくさん作られます。痰は、体の中に侵入してきたウイルスや細菌などの異物を体外に出すための大切な役割です。しかし、痰が増えすぎると気道を塞いでしまい、息苦しさの原因となります。
日中は体を動かしたり咳をしたりすることで痰をある程度排出できます。しかし、夜間は横になることで重力の影響を受けにくくなり、痰が排出されにくく、気道に溜まりやすくなるため、息苦しさが増すのです。
横になる姿勢による肺への圧迫
気管支炎でなくても、横になると肺が圧迫され、呼吸が少し浅くなることがあります。重力が肺にかかりやすくなるためです。健康な人であれば、多少肺が圧迫されても問題ありませんが、すでに気管支炎で息苦しさを感じている場合は、肺への圧迫がさらに息苦しさを悪化させる要因です。
特に仰向けで寝ると、お腹の中の臓器が肺を下から押し上げるため、肺への圧迫が強くなり、より息苦しくなりやすいです。横向きに寝ると、この圧迫が軽減されるため、楽に呼吸ができることが多いです。
アレルギー反応の悪化
アレルギーを持っている方は、夜間にアレルギー反応が悪化しやすく、気管支炎の症状も悪化させる可能性があります。夜間にアレルギーの原因物質であるダニやハウスダストなどが寝室に多く存在するためです。寝室は、ダニやハウスダストの温床になりやすい環境です。
アレルギー反応によってヒスタミンなどの物質が放出されると、気管支が収縮し、息苦しさが増します。気管支を取り囲む筋肉がヒスタミンによって刺激され、収縮することで起こります。結果、気道が狭くなり、息苦しくなるのです。急性気管支炎はウイルス感染が主な原因ですが、アレルギー反応も症状を悪化させる要因となるため、注意が必要です。
いますぐできる!夜間の息苦しさを緩和する7つの対処法
夜間の息苦しさを緩和する7つの対処法は以下のとおりです。
- 横向きで寝る
- 枕を高くする
- 加湿器を使う
- 部屋を換気する
- 水分を摂る
- 咳止め薬を服用する
- 鎮咳去痰薬を服用する
どれも簡単に試せるものばかりなので、ぜひ試してみてください。
横向きで寝る
気管支炎で息苦しいときは、横向きで寝てみましょう。仰向けで寝ていると、お腹の中の臓器の重みで肺が圧迫され、息苦しさが増してしまうことがあります。横向きに寝ると、圧迫を軽減し、呼吸を楽にできます。風船を上から押さえつけるよりも横から押さえつけるほうが、潰れにくいことと同じ原理です。
心臓の位置も考慮するとより効果的です。右の肺に炎症がある場合は、心臓が左側にあるため、左向きに寝ると心臓の重みで右肺への負担が軽くなります。反対に、左の肺に炎症がある場合は、右向きに寝るのがおすすめです。
抱き枕やクッションを使うと、さらに楽な姿勢を保ちます。抱き枕をぎゅっと抱きしめたり、クッションを足に挟んだりすることで、体の負担を分散し、リラックス効果も期待できます。
枕を高くする
気管支炎で夜に息苦しいときは、枕を高くして寝るのも効果的です。枕を高くすることで、上半身が少し起き上がった状態になり、気道が開きやすくなります。気道が狭くなると息苦しくなるため、気道を開いてあげることで、呼吸が楽になるのです。
高くするといっても、枕を何個も重ねる必要はありません。普段使っている枕に、バスタオルや薄手のクッションなどを置いて高さを調整するだけでも十分です。あまり高くしすぎると、首や肩が痛くなってしまうので、自分に合った高さを見つけることが大切です。5cm程度から始めて、徐々に高さを調整していくのがおすすめです。
加湿器を使う
乾燥した空気は、気道を刺激し、咳や痰を悪化させ、息苦しさも増してしまいます。気管支炎で夜に息苦しいときは、加湿器を使って部屋の湿度を50~60%に保ちましょう。湿度計がない場合は、窓ガラスが結露し始める湿度がおよそ60%の目安になります。
加湿器には、スチーム式や気化式、ハイブリッド式など、さまざまな種類があります。特徴が異なるので、自分に合ったものを選びましょう。スチーム式はすぐに加湿効果が得られるのがメリットですが、電気代が高めというデメリットもあります。小さなお子さんがいる家庭では、やけどの危険性も考慮が必要です。
加湿器は定期的に掃除をすることが大切です。加湿器内にカビや雑菌が繁殖すると、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。週に1回程度は、タンクの水を交換し、フィルターや本体を清掃するようにしましょう。
部屋を換気する
気管支炎の息苦しさは、空気の汚れやほこり、ダニなどのアレルゲンによって悪化することがあります。アレルギー反応によってヒスタミンなどの化学物質が放出されると、気管支周囲の筋肉が収縮し、息苦しさが増します。気管支喘発の発作時と同じメカニズムです。
定期的に部屋を換気して、新鮮な空気を取り入れることが大切です。窓を5~10分ほど開けて、空気の入れ替えを行いましょう。朝起きたときや寝る前は、換気をすると効果的です。花粉症の方は、花粉の飛散量が多い時期は、換気を控えたほうが良い場合もあります。空気清浄機を併用することで、空気中のアレルゲンを減らし、呼吸を楽にする効果が期待できます。
水分をとる
水分をとることも、気管支炎の息苦しさを和らげるためには大切です。水分をとることで、体内の水分バランスが整い、痰が出やすくなります。痰が喉に詰まっていると、息苦しさを感じやすくなるため、こまめな水分補給を心がけましょう。1日に1.5~2リットルを目安に、少量ずつこまめに水分をとりましょう。
常温の水や白湯、ぬるめのハーブティーなどがおすすめです。冷たい飲み物は、気管支を刺激してしまう可能性があるので、避けたほうが良いです。カフェインを含むコーヒーや緑茶は、利尿作用があるため、水分補給にはあまり適していません。
咳止め薬を服用する
咳がひどい場合は、市販の咳止め薬を服用することも考えましょう。咳止め薬には、咳中枢に作用する中枢性鎮咳薬と、気道の炎症を抑える末梢性鎮咳薬があります。
中枢性鎮咳薬は、咳反射を抑えることで咳を止めますが、副作用として眠気や便秘などが起こることがあります。末梢性鎮咳薬は、気道の知覚神経を麻痺させることで咳を鎮めます。自分に合った咳止め薬を選びましょう。咳止め薬は、症状を一時的に抑えるための対症療法です。根本的な治療には、医療機関を受診する必要があります。
鎮咳去痰薬を服用する
痰が絡んで咳が出る場合は、鎮咳去痰薬が有効です。痰は、細菌やウイルス、異物などを体外に排出するためのものですが、痰が絡んだ咳が続くと、息苦しくなります。鎮咳去痰薬は、痰の粘性を下げて出しやすくする効果があり、咳を鎮めて呼吸を楽にするのに役立ちます。
医療機関を受診し、医師の指示に従って服用してください。市販薬もありますが、自分の症状に合った薬を選ぶことが重要です。自己判断で薬を選ぶのは危険なので、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
気管支炎の薬は市販薬と病院処方薬の違いを以下の記事で解説しているので、チェックしてください。
>>気管支炎の市販薬はある?病院で処方される薬との違いを解説
気管支炎を予防する5つのポイント
気管支炎を予防する5つのポイントは以下のとおりです。
- 生活習慣を改善する
- 適度な運動を心がける
- 定期的に医師の診察を受ける
- 自己管理に気をつける
- 悪化防止に努める
生活習慣を改善する
気管支炎を予防するうえで、日常生活の改善は重要です。禁煙やバランスの取れた食事、そして十分な睡眠の3つが大きな柱になります。
禁煙について、タバコの煙には、気管支の粘膜を傷つけ、炎症を引き起こすさまざまな有害物質が含まれています。長年喫煙を続けている患者さんの気管支鏡検査では、健康な方のピンク色の気管支とは異なり、気管支は赤く腫れ上がっています。
禁煙は、気管支炎だけでなく、肺気腫や肺がんを含むさまざまな呼吸器疾患、さらには循環器疾患の予防にもつながるため、禁煙に取り組んでみましょう。禁煙が難しい場合は、禁煙外来などで専門家のサポートを受けるのも効果的です。
バランスの取れた食事は、免疫力を高めるために不可欠です。偏った食事は、体の抵抗力を弱め、感染症にかかりやすくなってしまいます。ビタミンCは、免疫細胞の働きを活性化し、感染症への抵抗力を高める効果があります。
ビタミンCが豊富な食品としては、柑橘類、キウイフルーツ、ブロッコリーなどが挙げられます。その他にも、ビタミンAやビタミンE、亜鉛なども免疫力維持に重要な栄養素です。
睡眠不足は免疫力を低下させ、ウイルスや細菌に対する抵抗力を弱めます。睡眠中は、免疫細胞が活発に働き、体を守るためのさまざまな活動を行っています。十分な睡眠をとることで、これらの免疫機能を正常に保てるのです。毎日同じ時間に寝起きし、規則正しい生活リズムを保ちましょう。
適度な運動を心がける
適度な運動は、心臓喘息のように心臓に原因がある息苦しさとは異なり、気管支炎の予防に効果的です。軽い運動を継続することで、心肺機能が向上し、全身の血行が促進されます。免疫細胞が体中をスムーズに巡り、免疫機能が高まるのです。30分のウォーキングを週に3回行うだけでも、免疫力向上に効果が期待できます。
激しい運動は逆に体に負担をかけてしまう可能性があるので、ウォーキングや軽いジョギング、サイクリング、ヨガなど、無理なく続けられる運動を選びましょう。自分の体力や体調に合わせて、運動の種類や強度を調整することが大切です。
定期的に医師の診察を受ける
気管支炎は、早期発見・早期治療が重要です。咳や痰などの症状が2週間以上続く場合は、自己判断せずに早めに医療機関を受診しましょう。呼吸困難や高熱、血痰などの症状が現れた場合は、重症化している可能性もあるため、すぐに受診する必要があります。
咳や痰は、風邪などの他の病気でも見られる症状です。自己判断で市販薬を服用して様子を見ているうちに、病気が進行してしまうケースもあります。医療機関では、聴診器による呼吸音の確認、血液検査、レントゲン検査などを行い、正確な診断を行います。必要に応じて、痰の検査や肺機能検査なども行います。
てらすクリニックでは、患者様の状態を丁寧にヒアリングし、症状にあった治療のポイントをお伝えします。
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自己管理に気をつける
自分の症状を把握するために、症状日記をつけるのも有効です。咳や痰の回数、色、粘り気、息苦しさの程度、体温などを記録することで、症状の変化に気づきやすくなります。
「息苦しくて夜中に2回目が覚めた」など、具体的に記録しておきましょう。些細な変化でも記録しておくことで、受診時に医師に伝えるべき情報を整理できます。医師は、患者さんの記録を参考に、適切な診断と治療方針を決定します。
悪化防止に努める
感染症予防の基本である手洗いとうがいは、気管支炎の予防にも効果的です。ウイルスや細菌は、手や口から体内に侵入し、感染症を引き起こします。気管支炎の多くは、ウイルス感染によって引き起こされるため、感染経路を遮断することが重要です。
手洗いは、流水と石鹸を用いて、手のひら、手の甲、指の間、爪の間など、丁寧に洗いましょう。外出後や食事前、トイレの後など、こまめな手洗いを心がけてください。うがいは、水だけでなく、イソジンなどのうがい薬を使用するのも有効です。うがい薬には、殺菌効果があり、口の中のウイルスや細菌を減少させることができます。
人混みを避ける、マスクを着用するなども感染症予防につながります。インフルエンザや風邪が流行している時期は、感染リスクが高まるため、より注意が必要です。
まとめ
夜間の息苦しさで悩んでいる方は、横向きで寝たり、枕を高くしたりするだけでも、呼吸が楽になることがあります。加湿器の利用や、部屋の換気も効果的です。水分をしっかりとることも忘れずに行いましょう。
つらい咳が続く場合は、市販の咳止め薬を試してみるのも一つの方法です。ただし、薬はあくまで対症療法なので、根本的な解決にはなりません。症状が改善しない場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。医師の診察を受け、適切な治療を受けることが大切です。
気管支炎は、日常生活の工夫で予防につながる病気でもあります。禁煙やバランスの取れた食事、十分な睡眠を心がけ、規則正しい生活を送りましょう。適度な運動も効果的です。自分の体を守るのは自分自身です。できることから始めて、健康な毎日を送りましょう。
気管支炎の原因や症状はさまざまです。気管支炎の治療方法も含め、網羅的に知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。
参考文献
- Tanabe T, Rozycki HJ, Kanoh S, Rubin BK. “Cardiac asthma: new insights into an old disease.” Expert review of respiratory medicine 6, no. 6 (2012): 705-14.
- Kinkade S, Long NA. “Acute Bronchitis.” American family physician 94, no. 7 (2016): 560-565.
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