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頭がいい人は双極性障害になりやすい?研究が示す意外な関連性

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監修者船橋 健吾(てらすクリニックひきふね院長)

「頭がいい人は双極性障害になりやすい」という噂を耳にしたことはありませんか?天才肌の芸術家や、頭脳明晰なビジネスマンが、実は双極性障害を抱えている…といったイメージを持つ人もいるかもしれません。

しかし、これは誤解です。双極性障害は、脳の病気であり、特定の才能や知性とは関係ありません。この記事では、双極性障害と「頭の良さ」の誤解を解き、病気の特徴や治療法、そして周囲のサポートの重要性について詳しく解説していきます。

墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは、双極性障害の診療をしております。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。

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双極性障害と「頭がいい」の関係性

冒頭でも記載した通り、双極性障害は、頭の良さとは直接関係ありません。頭がいいことと双極性障害の関係性をここでは詳しく記載いたします。

双極性障害は「頭の良さ」とは無関係

双極性障害は、気分が波のように、気分が高揚する「躁状態」と、気分が沈み込む「うつ状態」を繰り返す脳の病気です。これは頭がいいこととの関連性はありませんが、なぜ「頭がいい人は双極性障害になりやすい」といった誤解が広まってしまったのでしょうか?

ある研究では、自閉スペクトラム症(ASD)の方の中には、特定の分野に強い興味や関心を持ち、優れた集中力や記憶力を発揮する方がいると報告されています。自閉スペクトラム症と双極性障害は異なる病気ですが、このような特性と「頭の良さ」が結びつけられ、誤解を生んでしまった可能性も考えられます。

躁状態では「頭が良く見える」場合も

双極性障害の「躁状態」では、気分が高揚し、アイデアが次々に湧いたり、普段よりスピーディーに話したり、行動的になったりします。まるで、脳の回転が速くなったように見えるかもしれません。

例えば、普段は大人しい人が、会議で普段以上の熱量でプレゼンしたり、新しい事業計画を立てたりする姿を想像してみてください。周りの人からは、いつもより頭が冴えている、才能が開花した!なんて思われるかもしれません。

しかし、これはあくまで一時的なものであり、病気の症状の一つです。躁状態の時は、本人自身も気分が高揚しているため、周りの意見に耳を傾けられなかったり、衝動的な行動に出てしまったりする可能性もあります。

脳機能への影響で集中力や判断力が低下することも

双極性障害は、脳の機能に影響を与える病気です。その影響は、気分の波だけにとどまりません。集中力や判断力などにも影響が及ぶ可能性があります。

例えば、仕事中にミスが増えたり、会議の内容が頭に入ってこなかったりする、といった症状が出るかもしれません。これは、双極性障害によって脳の働きが不安定になっているために起こる症状の一つです。

双極性障害の治療法と接し方

双極性障害という病気を知り、治療に積極的に取り組み、そして周囲の理解とサポートを得ることが、穏やかな心の海を取り戻す航海へと繋がります。

薬物療法で症状をコントロール

気分が高ぶりすぎる「躁状態」には、高ぶった気持ちを落ち着かせ、冷静さを取り戻せるようにサポートするお薬を、逆に気分が深く沈み込む「うつ状態」には、気持ちを明るく照らし、行動する意欲を回復へと促すお薬を使用します。

例えば、気分安定薬として「リチウム」や「バルプロ酸ナトリウム」などが処方されることがあります。これらの薬は、脳内の神経伝達物質のバランスを整えることで、気分の波を抑える働きがあります。

また、症状に応じて、不安を和らげる抗不安薬や、眠りをサポートする睡眠導入剤などが併用されることもあります。

お薬の種類や量は、患者さん一人ひとりの症状や体質、そして生活スタイルに合わせて、医師が慎重に決めていきます。自己判断でお薬の服用をやめたり、量を変えたりすることは大変危険です。お薬に関する疑問や不安があれば、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

精神療法で病気への理解を深める

精神療法は、心の羅針盤を手に入れ、荒波を乗り越えるための航海の技術を身につけるためのトレーニングのようなものです。

例えば、「認知行動療法」では、患者さん自身の思考パターンや行動パターンを一緒に振り返りながら、より柔軟で建設的な考え方や行動パターンを身につけていくことを目指します。

「対人関係療法」では、円滑な人間関係を築き、ストレスを軽減するためのコミュニケーションスキルを習得していきます。

精神療法は、患者さんが自分自身の心の内側に耳を傾け、「生きようとする力」を見出し、穏やかな航海を続けるための羅針盤を手に入れるためのサポートとなります。

周囲の理解とサポートが重要

双極性障害の航海は、決して一人きりではありません。周囲の理解とサポートは、患者さんにとって心の支えとなり、回復への道のりを明るく照らす灯火となります。

双極性障害の人の言動は、病気のために起こるものであり、その人自身が悪いのではありません。まるで嵐の中で翻弄される船のように、コントロールを失っている状態であることを理解することが大切です。

責めたり、プレッシャーをかけたりするのではなく、温かく見守り、励ますことが、患者さんの心の負担を軽減し、回復への大きな力となります。

また、患者さんが安心して治療に専念できるよう、家事や仕事の負担を軽減するなど、具体的なサポートも重要です。周囲の温かい支えが、患者さんの心の支えとなり、回復への道のりを明るく照らします。

まとめ

双極性障害は、気分と活動レベルに極端な変化をもたらす病気です。大きく分けて「躁状態」と「うつ状態」の2つの状態があり、揺れ動くように症状が現れます。過去の研究では、双極性障害の人はそうでない人と比べて、IQテストで高いスコアを示す傾向があることもわかっています。

双極性障害の人はIQのばらつきが大きいという研究結果もあります。双極性障害の治療のおすすめは以下のとおりです。

  • 薬物療法:気分安定薬や抗精神病薬などが使われる
  • 生活習慣の改善:睡眠不足やストレスを避ける
  • 周囲のサポート:病気を理解して励ます

双極性障害は、適切な治療と生活習慣の改善、周囲のサポートがあれば、充実した日常生活を送ることは十分可能です。不安な方は、早めに医療機関へ相談しましょう。

双極性障害について網羅的に知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。

>>双極性障害とは?Ⅰ型Ⅱ型のそれぞれの特徴と診断方法、原因について詳しく解説

参考文献

Dallaspezia S, Benedetti F. Antidepressant light therapy for bipolar patients: A meta-analyses. Journal of affective disorders 274, no. (2020): 943-948.