適応障害による休職や復職の割合は?社会人が注意すべき3つのサインを解説
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監修者船橋 健吾(てらすクリニックひきふね院長)
現代社会において、仕事や人間関係のストレスから心身の不調を訴える人が増えています。もしかしたら、「適応障害」のサインの可能性があります。調査によると、精神疾患による休職者の約8.9%が適応障害で増加傾向にあります。特に20代~30代の若い世代に多く見られ、放置すると仕事や日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性もあります。
適応障害による休職や復職の現状、社会人が注意すべき3つのサインを解説します。適応障害について知りたい方は、ぜひご覧ください。
墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは心療内科・精神科で適応障害の診療もしています。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。
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適応障害の休職・復職に関する現状と対策
適応障害は、特定のストレスが原因で心身に不調が現れる病気です。適応障害になると、今までできていたことができなくなったり、仕事や学校に行けなくなったりすることもあります。適応障害による休職や復職の現状と対策について、詳しく解説します。
精神疾患による休職者の約8.9%が適応障害
適応障害は、精神疾患による休職の約8.9%を占めています。適応障害で休職に至る原因は実にさまざまですが、人間関係や仕事のプレッシャーといった環境要因が大きく影響しています。
適応障害はさまざまな症状が現れるため、自分だけで抱え込まずに、周りの人に相談したり、医療機関を受診したりすることが大切です。
適応障害の復職率は82.1%だが退職率も高い
適応障害と診断された方の復職率は82.1%とされています。10人中8人以上は職場に戻れている計算です。認知行動療法やチームサポートを取り入れることで、復職の可能性がさらに高まるという研究結果もあります。職場全体で適応障害への理解を深め、個々の従業員に合わせた柔軟な対応をすることで、よりスムーズな復職を促せることを示唆しています。
一方で、退職を選ぶ方もいます。適応障害の場合は、他の精神疾患に比べて退職率がさらに高いという報告もあります。復職後に再発するケースも少なくなく、退職の大きな要因になっています。復職を成功させるためには、職場環境の調整や休職中の心身のケアが重要です。焦らずに、自分のペースで、ゆっくりと職場復帰を目指しましょう。
主治医や会社の産業医、人事担当者と相談しながら、無理のない範囲で仕事量や労働時間を調整していくことが大切です。リワーク支援プログラムなどを活用して、復職に向けての準備をすることも有効です。
適応障害かもしれない社会人が注意するべき3つのサイン
適応障害は、特定のストレスが原因で心や体に不調が現れる病気です。誰にでも起こりうる身近な病気です。適応障害かもしれないと感じる社会人がチェックすべき3つのサインを、詳しく解説します。
人間関係や仕事量による急激なストレスの増加
適応障害の最初のサインは、急激なストレスの増加です。ストレスの原因は人それぞれであり、以下の表にストレスと具体的な状況を載せているので参考にしてください。
ストレスの例 | 具体的な状況 |
人間関係の変化 | 上司からのパワハラ、同僚とのトラブル、苦手な人との共同作業 |
仕事量の変化 | 突然の業務増加、新しいプロジェクトへの参加、責任の重い仕事への異動 |
家庭環境の変化 | 結婚、出産、育児、親の介護、死別 |
その他のライフイベント | 引っ越し、転職、病気、事故、予期せぬ妊娠など |
ストレスが積み重なると、心身にさまざまな影響を及ぼします。ストレスの原因が自分の価値観と環境の価値観のズレから生じている場合、適応障害を発症するリスクが高まります。特に、完璧主義で責任感が強く、他者に頼るのが苦手な人は要注意です。
憂鬱な気分や不眠などの心身の不調
2つ目のサインは、心身の不調です。ストレスが原因で、気分が落ち込んだり、イライラしやすくなったり、不安や緊張感が強くなったりします。
他にも精神的な症状としては、集中力の低下、決断力の低下などがあります。身体的な症状としては、頭痛や肩こり、胃痛や動悸、めまい、吐き気、食欲不振、不眠、過眠、疲労感など、実に多様な症状が現れます。
風邪などの身体の病気とよく似ているため、見過ごしてしまう人も少なくありません。「自分が悪いんだ」「もっと頑張らなきゃ」と自分を責めてしまう人もいます。しかし、適応障害は決してあなたのせいではありません。適応障害は、ストレス要因から離れると症状が改善することが多い病気です。
出社への恐怖などの職場への強い抵抗感
3つ目のサインは、職場への強い抵抗感です。朝起きるのがつらくなったり、会社に行くのが怖くなったり、仕事への意欲が低下したりします。具体的な例は以下のとおりです。
- 出社前の吐き気や腹痛
- 仕事中の強い不安感や緊張感
- 楽しかった仕事への興味の喪失
- 同僚とのコミュニケーションが億劫
- 休憩時間が待ち遠しい
- 仕事が終わっても何もする気が起きない
職場への強い抵抗感を感じたら、まずは信頼できる人に相談してみましょう。家族や友人、職場の同僚や上司など、誰かに話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になることがあります。必要に応じて、医療機関を受診することも検討しましょう。
適応障害は、早期に適切な治療を受ければ、多くの場合回復が期待できる病気です。医療機関では、症状や状況に応じて、カウンセリングや薬物療法などの治療が行われます。
適応障害の症状はさまざまです。治療方法も含め網羅的に知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。
>>適応障害とは?原因と症状や3つの治し方をわかりやすく解説
適応障害から復職を成功するための方法と再発対策
適応障害と診断され、休職を経ていよいよ復職するとき、 期待と不安が入り混じる複雑な心境になる方は多いです。焦らず、ご自身のペースで復職への道を進んでいきましょう。職場復帰はゴールではなく、新たなスタートです。復職を成功するための方法と再発対策についてお伝えします。
復職を成功させるため方法
復職を成功させるためには、職場環境の調整とリワークプログラムの活用が重要です。まず、職場環境の調整についてです。職場の上司や人事担当者と相談し、復職後の働き方について具体的に話し合いましょう。以下のような働き方の調整が挙げられます。
- 残業をしない
- 始業・終業時刻を調整する
- 業務内容や担当を変更する
- 休憩時間をこまめにとる
自分が働きやすい環境を作ることで、再発のリスクを減らすことができます。近年の研究では、職場を巻き込んだ介入、例えば認知行動療法やチームサポートを取り入れることで、復職の可能性がさらに高まることが示されています。職場全体で適応障害への理解を深め、個々の従業員に合わせた柔軟な対応をすることで、よりスムーズな復職を促せることを示唆しています。
次に、リワークプログラムの活用についてです。リワークとは、「リハビリテーション」と「ワーク(仕事)」を組み合わせた言葉で、復職を目指す人たちの支援プログラムのことです。
リワーク施設では、就労訓練や職場体験、カウンセリングなどを受けることができます。プログラムを通して、徐々に仕事に慣れていくことで、スムーズに復職できる可能性が高まります。
再発を防ぐための方法
復職後も、再発を防ぐための対策を継続することが大切です。大きく分けて、「ストレス管理」と「職場との連携」の2つのポイントがあります。まず、ストレス管理についてです。ストレスをため込まないためには、自分なりのストレス発散方法を見つけることが大切です。
ストレス発散方法として、以下が挙げられます。
- ウォーキングをする
- 好きな音楽を聴く
- 映画鑑賞をする
- 友人と話す
- アロマを焚く
自分がリラックスできる方法を見つけて実践してみましょう。ストレスをため込まずに、こまめに発散していくことが大切です。次に、職場との連携についてです。復職後も、職場の上司や同僚、産業医などと定期的に面談を行い、現状を報告しましょう。
困っていることや不安なことを共有することで、適切なサポートを受けることができます。周囲のサポートを受けながら、ストレスを管理し、職場環境に適応していくことが、再発を防ぐ鍵となります。
適応障害と診断された後はどうすればいい?
適応障害と診断された後、どのように対応し、治療を進めていけばいいのか悩む方も多いです。治療法や職場での相談方法など、回復に向けて実践できる具体的なステップをわかりやすく解説します。焦らず、適切な支援を受けながら、前向きに乗り越えていきましょう。
適応障害と診断された後の対応と治療法の選択
適応障害と診断された後は、医師の指示に従って治療を進めていきます。治療の中心は、ストレス要因への対処と心のケアです。ストレスの原因が職場であれば、環境調整や休職を検討します。家庭環境が原因であれば、家族との話し合いや家事の分担などの対策を考えます。
心のケアとしては、心理療法(カウンセリング)と薬物療法があります。心理療法では、ストレスへの対処法や心の状態を安定させる方法を学びます。薬物療法は、不眠や不安などの症状を軽減するために、補助的に用いられることがあります。
適応障害の治療期間は、一般的には6か月以内とされています。しかし、症状の重さやストレス要因の程度によって、個人差があります。適応障害は、適切な治療を受ければ、多くの方が回復する病気です。焦らずに、医師と相談しながら、治療を進めていきましょう。
職場の上司や人事部に相談する
職場での人間関係や仕事のプレッシャーが原因で適応障害になるケースもあります。心身の不調を感じたら、まずは信頼できる上司や人事部に相談してみましょう。
相談することで、業務内容や勤務時間の調整など、あなたの状況に合わせた環境改善をしてもらえる可能性があります。「残業を減らしてほしい」「仕事の担当を変えてほしい」「休憩時間を増やしてほしい」といった具体的な要望を伝えましょう。
症状が重い場合は、休職を検討することも可能です。休職は、職場から離れて心身を休ませ、治療に専念するために大切な期間です。上司や人事部に相談し、会社の制度や手続きについて確認しましょう。
上司や人事部に相談しづらい場合は、産業医や相談窓口に相談するのも一つの方法です。社外の専門家に相談することで、客観的なアドバイスをもらえるだけでなく、会社との橋渡し役になってもらえる場合もあります。
まとめ
適応障害で休職に至る原因は、人間関係や仕事のプレッシャーなどさまざまです。症状も気分の落ち込みやイライラ、不眠など多岐に渡ります。復職率は8割を超えますが、職場環境の調整や休職中の心身のケアが重要です。焦らず自分のペースで職場復帰を目指しましょう。
適応障害かも?と思ったら、以下の3つのサインをチェックしましょう。
- 急激なストレスの増加
- 心身の不調
- 職場への強い抵抗感
まずは信頼できる人に相談し、必要に応じて医療機関を受診しましょう。再発を防ぐには、ストレス管理と職場との連携が大切です。自分なりのストレス発散方法を見つけ、職場の上司や同僚と定期的にコミュニケーションを取りましょう。適応障害は早期に適切な対応を取れば、十分に回復が期待できる病気です。安心して、周りの人に相談しながら、一歩ずつ進んでいきましょう。
適応障害が治らない場合の対処法や、退職を考え始めるときには、以下の記事をぜひご覧ください。
>>職場の適応障害が1年以上治らないときは?退職すべきかどうかの判断ポイント
参考文献
- Geer K. Adjustment Disorder: Diagnosis and Treatment in Primary Care. Primary care 50, no. 1 (2023): 83-88.
- 一般的な精神障害による休職者に対する労働指向の介入が復職に与える影響-体系的レビューによる検証
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