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職場の適応障害が1年以上治らないときは?退職すべきかどうかの判断ポイント

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監修者船橋 健吾(てらすクリニックひきふね院長)

職場でのストレスから心身の不調を感じ、1年以上も適応障害に悩まされている方は少なくありません。適応障害は一般的に短期間で回復する病気ですが、ストレスの原因が継続している場合や他の精神疾患が合併している場合は、長期化することがあります。

この記事では、1年以上治らない適応障害の特徴や退職を考える際のポイント、適応障害が治らない場合の対処法を解説します。ご自身の状況と照らし合わせながら、最適な選択をするために活用してください。

墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは心療内科・精神科で適応障害の診療もしています。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みの方は気軽に相談ください。

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1年以上治らない適応障害の3つの特徴

適応障害は、特定のストレス要因がきっかけで発症する心の病気です。多くの場合、ストレス要因がなくなり、ストレスへの対処スキルを身につけることで、数か月以内に回復しますが、中には1年以上も症状が続くケースがあります。適応障害が1年以上治らない場合は、以下の特徴に当てはまっている可能性が高いです。

  • 症状の悪化や慢性化
  • 職場環境への強い抵抗感
  • 治療への反応の鈍化

上記の特徴を1つずつ解説します。特徴を理解することで、ご自身の状況を客観的に把握し、適切な対応策の検討につながります。

症状の悪化や慢性化

1年以上も適応障害に悩んでいる場合、症状が悪化・慢性化している可能性が高いです。適応障害の初期症状は、気分の落ち込みや不安感、イライラ、集中力の低下など、比較的軽度であるケースが多いです。1年以上症状が続く場合、症状が悪化、慢性化する傾向です。

最初は軽度の気分の落ち込みを感じていた患者さんが、次第に朝起き上がれなくなったり、趣味に興味がなくなったりするケースもあります。抑うつ気分が深まって涙が止まらなくなる、何をするにも意欲が湧かないなどの症状は、適応障害の悪化のサインです。

初期症状が軽度であっても、適切な治療を受けずに放置すると慢性化し、日常生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。適応障害に悩む場合は、早いうちに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

職場環境への強い抵抗感

適応障害の原因が職場環境にある場合、職場に戻ることに強い抵抗感や恐怖心を抱いている患者さんも多いです。特定の上司との関係がストレスになっている場合、上司と顔を合わせることに強い不安を感じ、出社できなくなることがあります。患者さんの中には、上司の顔を見るだけで動悸が激しくなり、吐き気をもよおしてしまう方もいます。

過重な労働やパワハラなど、職場環境自体がストレス要因となっている場合にも同様です。職場という場所に強い嫌悪感を抱き、近づくことさえ困難になる場合があります。職場への強い抵抗感は、具体的なストレス要因に対する拒否反応として現れ、職場復帰を妨げる大きな障壁になります。

治療への反応の鈍化

適応障害が1年以上治らない場合、治療への反応が鈍化している可能性があります。適応障害の治療は、一般的に心理療法(カウンセリングなど)と環境調整を中心に行われ、必要に応じて薬物療法が併用されます。抗うつ薬は不眠や不安を軽減する効果はありますが、適応障害の中核症状である抑うつ気分への効果は限定的です。

治療への反応が鈍化すると、以下の状態に陥る可能性があります。

  • 薬を服用しても症状が改善しない
  • カウンセリングを受けても気分が楽にならない
  • ストレス要因から離れても症状が改善しない

上記の症状に当てはまる場合は、治療方法の見直しや、他の精神疾患の有無について改めて精査する必要があります。治療が長期化する可能性もあるため、焦らず、医師と相談しながら治療を継続していくことが大切です。

適応障害の症状はさまざまです。治療方法も含め網羅的に知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。

>>適応障害とは?原因と症状や3つの治し方をわかりやすく解説

退職すべきかの判断ポイント5選

職場の適応障害が1年以上も治らず、不安や焦りを感じる患者さんも多いです。退職すべきか、働き続けるべきかを決めるには、以下のポイントを参考にしてください。

  • 症状の重症度
  • 治療の進捗と効果
  • 他の精神疾患の合併
  • 経済的状況の考慮
  • 休職や業務調整の可能性

上記のポイントを考えることで、ご自身の状況を客観的に把握し、最適な道を探せます。

症状の重症度

症状の重症度は退職を考えるうえで欠かせない要素です。以下の表を参考に、自分の症状の程度を把握しましょう。

症状のレベル 具体的な例
軽い やる気が出ない、少し疲れやすい、イライラしやすい
中程度 集中力が続かない、眠れない日が続く、食欲不振
重い 朝起き上がれない、食欲がない、何も手につかない、自傷行為、自殺念慮

適応障害の症状が日常生活にどのくらい影響を与えているかを考えてみてください。症状が重く、日常生活に大きな支障が出ている場合は、退職を検討することをおすすめします。

治療の進捗と効果

退職を考える際には、治療の進捗や効果を医師と相談してください。治療を受けていても、1年以上症状が改善しない場合は、治療法の見直しが必要です。薬の種類を変えてみたり、カウンセリングの頻度を増やしてみたり、認知行動療法を試すなど、さまざまな選択肢があります。

患者さん一人ひとりに最適な治療法は異なります。1年以上症状が続いている場合は、現在の治療法が自分に合っているのか、主治医と話し合うことをおすすめします。

他の精神疾患の合併

適応障害は、うつ病や不安障害などの他の精神疾患と合併しているケースも多いです。適応障害が長引く背景には、他の精神疾患が隠れている可能性もあります。適応障害と診断された患者さんが、双極性障害のうつ状態であったり、発達障害の特性を抱えていたりする場合もあり注意が必要です。

他の精神疾患も抱えている場合は、治療がより複雑になる可能性があります。他の精神疾患の合併が疑われる場合は、専門医に相談し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

経済的状況の考慮

退職を検討する際には、経済的な状況も重要な要素です。退職後の生活費や治療費をどのように賄うかを考えておく必要があります。

貯蓄があるか、家族のサポートを受けられるか、公的な支援制度(傷病手当金、障害年金など)を利用できるかなどを確認しましょう。経済的な不安が大きい場合は、退職前にしっかりと準備しておくことが大切です。

休職や業務調整の可能性

退職の前に、休職や業務調整という選択肢もあります。休職は、一定期間仕事を休むことで、心身を休ませ、治療に集中できます。業務調整は、仕事内容や労働時間を調整することで、負担を軽減することが可能です。

休職や業務調整の選択肢を検討することで、退職という大きな決断をせずに、働き続けられる可能性があります。退職すべきか悩む場合は、会社の上司や人事担当者に相談してみましょう。場合によっては、産業医との面談も有効です。

退職や休職の判断は、主治医や専門家と相談しながら慎重に行うことが重要です。焦らず、ご自身の状況に合わせて、最適な選択をしましょう。

適応障害が治らない場合の4つの対処法

適応障害が1年以上治らない場合も、適切な対処法を試すことで回復に向かう可能性があります。おすすめの対処法は以下のとおりです。

  • セカンドオピニオンの受診
  • 休職・退職の検討と生活設計
  • セルフケアとストレスマネジメント
  • 公的支援制度の活用

それぞれの対処法を解説します。自分にできそうなものから試してみましょう。

セカンドオピニオンの受診

現在の治療で効果を実感できていない場合は、他の医療機関を受診し、セカンドオピニオンを求めることをおすすめします。別の医師の診察を受けることで、新たな視点や治療法が見つかる可能性があります。現在の治療が効果を発揮していないと感じる場合は、主治医や専門医に相談し、治療方針を再検討してもらうことが重要です。

うつ病や不安障害などの精神障害と合併している方は、より治療が複雑になるため、専門的な医療機関での治療が効果的な場合があります。現在の治療の効果を感じられない方は、他の病院への受診も検討してください。

休職・退職の検討と生活設計

適応障害の原因が職場環境にある場合、休職や退職も選択肢の一つです。ストレスの原因から一時的に距離を置くことで、心身を休ませ、回復に専念できます。休職中は、趣味や好きなことに時間を使ったり、家族や友人とゆっくり過ごしたり、心穏やかに過ごす時間を持つことが大切です。

職場と相談しながら、ご自身にとって最適な選択を行いましょう。

セルフケアとストレスマネジメント

適応障害の回復には、セルフケアも重要です。規則正しい生活習慣を送り、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠を確保しましょう。ストレスマネジメントのスキルを身につけることも効果的です。自分にとってリラックスできる時間を作ったり趣味に没頭したり、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。

ヨガや瞑想、アロマテラピー、ウォーキング、音楽鑑賞など、リラックス方法はさまざまです。自分に合った方法を見つけて、継続的に実践してみましょう。

公的支援制度の活用

適応障害の治療や生活に関するさまざまな公的支援制度の活用もおすすめです。適応障害で一定の障害状態にある場合は、障害年金の受給を検討できます。医療費の負担を軽減する医療費助成制度もあります。

他にも、精神保健福祉センターなどの相談窓口では、専門家による相談や支援を受けることが可能です。制度を積極的に活用することで、経済的な負担を軽減し、安心して治療に専念できます。

公的支援制度の申し込みには医師の診断書や専門家の助言が必要なため、気になる方は主治医に相談してください。

まとめ

適応障害が1年以上続く場合は、症状の悪化や職場への抵抗感、治療の反応の鈍化などが疑われます。適応障害が原因で退職すべきか悩む場合は、症状の重症度や休職・業務調整の可否などを考えてみましょう。

適応障害が治らない場合、セカンドオピニオンの受診やセルフケア、公的支援制度の活用もおすすめです。

適応障害は、適切な対応を続けることで、回復が期待できる病気です。適応障害が治らず不安な方は、今の自分の状態を客観的に見つめ、何ができて何が難しいのかを整理してみましょう。1人で抱え込まずに、専門家や周りの人に相談することも重要です。適応障害に悩む場合は、遠慮せず医療機関に相談してください。

墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは心療内科・精神科で適応障害の診療もしています。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みの方は気軽に相談ください。

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参考文献

Casey P. “Adjustment disorder: epidemiology, diagnosis and treatment.” CNS drugs 23, no. 11 (2009): 927-38.