適応障害の人との接し方は?家族や職場が取るべき対応策を解説
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監修者船橋 健吾(てらすクリニックひきふね院長)
現代社会において、環境の変化や人間関係のストレスは誰もが経験するものです。しかし、ストレスが原因で心身に不調をきたし、日常生活に支障が出てしまう場合は「適応障害」という病気の可能性があります。
適応障害は決して特別なものではなく、誰にでも起こりうる身近な病気です。厚生労働省の調査によると、適応障害で医療機関を受診する患者数は増加傾向にあり、特に若い世代で顕著となっています。
この記事では、適応障害の基礎知識から、周囲の人々がどのように接すれば良いのか、具体的なサポート事例を含めて解説します。記事を通して適応障害への理解を深め、より良い人間関係を築くための一助としてください。
墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは心療内科・精神科で適応障害の診療もしています。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。
適応障害の基礎知識を解説
適応障害の人と接するうえで、適応障害への正しい理解は重要です。適応障害の概要や原因、症状を解説します。
適応障害とは?ストレスが原因で起こる精神的・身体的症状
適応障害とは、特定のストレスが原因で、さまざまな精神的・身体的症状が現れる病気です。適応障害の症状は人それぞれで、大きく以下の3つのパターンに分類できますが、症状の内容や重症度は人によって異なります。
- 気分の落ち込みが激しい:気分が落ち込んで何もやる気が起きなくなってしまう状態
- 不安やイライラが強いパターン:常に不安や緊張を感じて落ち着かない状態
- その他のパターン:頭痛や腹痛、食欲不振や不眠といった身体的な症状が現れる状態
適応障害は、ストレスの原因となっている出来事から約3か月以内に現れることが多いです。ストレスの原因がなくなると自然と軽快していくケースが多いですが、症状が重い場合や長引く場合は、適切な治療が必要になります。
適応障害の主な原因
適応障害は、生活上のストレス因子が引き金となり、心理的または身体的な症状が引き起こされる病気です。以下のような出来事を経験したあとは、適応障害になりやすいと言われています。
- 引越し
- 転校
- 入学・進学
- 同僚や上司との不和
- 家族とのトラブル
- 事故や災害
適応障害は、上記のようなストレスがかかる出来事や個人の精神状態などが相互作用することで発症します。
適応障害の代表的な症状
適応障害の症状は、精神的な症状と身体的な症状に分けられます。症状の個人差が大きいのも適応障害の特徴です。適応障害の主な精神的な症状は以下のとおりです。
- 気分の落ち込み
- 不安感
- イライラ
- 無気力
- 集中力の低下
身体的な症状は以下のようなものが挙げられます。
- 頭痛
- 腹痛
- 吐き気
- 動悸
- めまい
- 息切れ
- 食欲不振
- 不眠
明確な原因がないにも関わらず、日常生活に支障をきたすほど強い症状を感じる場合は適応障害の可能性があります。一人で悩まず、医療機関に相談してみましょう。
適応障害の原因や症状はさまざまです。治療方法も含め網羅的に知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。
>>適応障害とは?原因と症状や3つの治し方をわかりやすく解説
適応障害の人への効果的な接し方5選
周りの人がどのように接するかは、適応障害の回復に大きく影響します。 適応障害の人への効果的な接し方は以下の5つです。
- 傾聴して共感する
- 適度な距離感を保つ
- 無理強いしない
- 専門家への相談を促す
- 肯定的な言葉をかける
上記のポイントを1つずつ解説します。
傾聴して共感する
適応障害の人と接するうえで大切なのは、相手の言葉に耳を傾け、共感の姿勢を示すことです。適応障害で苦しんでいる人は、不安で混乱した状態です。 誰かに話を聞いてもらうだけでも、気持ちが整理され、心が軽くなることがあります。
共感の言葉を伝え、安心して話せる雰囲気を作ってあげましょう。 もし相手が話したくない様子であれば、無理に聞き出そうとせず、ただそばにいてあげることも大切です。 相手の気持ちを尊重し、安心できる存在でいることが重要です。
医療現場でも、患者さんの訴えにじっくり耳を傾けることが、信頼関係を築き、治療を進めるうえで欠かせません。
適度な距離感を保つ
相手のペースを尊重し、適度な距離感を保つことが大切です。適応障害の方の心はとても繊細になっているため、 過干渉はかえって負担になる可能性があります。
毎日電話やメールで連絡を取ったり、無理に外出に誘ったりするのは避けましょう。 「何かあったら、いつでも連絡してね」と伝え、相手から連絡が来るのを待つのがおすすめです。 焦らず、ゆっくりと関係を築くことが、回復への第一歩になります。
無理強いしない
相手の状況を理解し、無理強いしないことも大切です。適応障害によって、今までできていたことができなくなったり、集中力が低下したりすることがあります。エネルギーが不足している状態のため 「もっと頑張りなよ」「気合が足りないんじゃない?」などの言葉は言ってはいけません。 相手を責めるような言葉は、相手を追い詰めてしまい、回復を遅らせてしまう可能性があります。
家事が思うようにできなくなってしまった人に、「もっとちゃんとやらないとダメじゃない」ではなく「大変だったら、手伝うよ」と声をかけましょう。 仕事でミスが増えてしまった同僚には、「焦らず、ゆっくりでいいよ。困ったことがあったら、いつでも相談してね」と声をかけましょう。 小さな配慮が、大きな支えになります。
専門家への相談を促す
適応障害は、適切な治療を受けることで改善が期待できる病気です。 怪我をしたときに病院で治療を受けるのと同じように、心の不調も専門家のサポートが必要です。 あなたの周りに適応障害で苦しんでいる人がいたら、専門家への相談を促しましょう。
具体的な相談先としては、精神科や心療内科、精神保健福祉センターなどがあります。 専門機関では、医師やカウンセラーが話を聞いてくれたり、アドバイスをくれたりします。必要に応じて薬物療法や心理療法などの提案も可能です。 適応障害の回復には、専門家のサポートが役立つ場合があります。
てらすクリニックでは、患者様の状態を丁寧にヒアリングし、症状にあった治療のポイントをお伝えします。
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肯定的な言葉をかける
適応障害の人は、自分に自信を失っていることが多く「自分はダメな人間だ」と思い詰めていることもあります。 心の中が暗く沈んでしまっている状態です。 適応障害に悩んでいる人には「あなたのことを大切に思っている人がいるよ」「あなたは一人じゃないよ」など、肯定的な言葉をかけてあげましょう。
「いつも頑張っているね」「あなたの笑顔が好きだよ」など、些細なことでも良いので、相手の存在を認める言葉を伝えてください。 相手の良いところを具体的に褒めてあげるのも効果的です。具体的なエピソードを交えて褒めることで、相手は自分の価値を再確認し、自信を取り戻せる可能性があります。
職場と家庭での具体的なサポート事例を紹介
適応障害は、特定のストレスが原因で心身にさまざまな症状が現れる疾患です。環境の変化や人間関係のトラブル、仕事のプレッシャーなど、誰しもが経験しうるストレスが引き金になります。
適応障害と診断された方にとって、職場や家庭での理解とサポートは、回復への大きな力となります。具体的なサポート事例を通して、どのように接して支えていくべきかを、医師の視点も交えながら解説します。
家庭でのサポート:安心できる環境づくりと専門機関の情報提供
家族が適応障害になった場合は、安心できる環境づくりを心がけましょう。本人がリラックスして過ごせる空間を作ることが回復の第一歩です。
好きな音楽をかけたり、アロマを焚いたり、落ち着いた照明にしたりするだけでも、心身のリラックスにつながります。適度な運動や趣味の時間は、気分転換になり、ストレス軽減にも効果的です。
無理に何かをさせようとするのではなく、本人のペースを尊重し、やりたいことを応援する姿勢が重要です。家事の負担を軽減するために、食事は簡単に済ませられるように工夫したり、掃除を手伝ったりすることもおすすめです。
必要に応じて専門機関の情報提供も行いましょう。精神保健福祉センターや保健所、医療機関などの連絡先を伝え、相談を勧めることも重要です。家族だけで抱え込まず、専門家のサポートを積極的に活用すれば、より適切な対応ができます。
職場でのサポート:業務調整や相談窓口の設置
職場では、まず業務内容や量の調整を行いましょう。抱えきれない量の仕事や、苦手な業務を無理に続けさせることは、症状の悪化につながる可能性があります。上司や同僚と相談し、負担を軽減できるような体制を整えることが重要です。
締め切りを延長したり、業務の一部を他の人に割り振ったり、休憩時間をこまめに取れるように配慮するなど、具体的な対応策を検討しましょう。職場全体でサポート体制を整えることで、適応障害の方でも安心して仕事に取り組めます。周囲のサポートは、患者さんの負担を軽減する重要な役割を果たします。
相談窓口の設置も効果的です。産業医やカウンセラーに相談できる体制を整え、気軽に悩みを打ち明けられる環境を作ることで、早期発見・早期対応につながります。健康診断と同じように、心の状態をチェックすることも重要です。
再発予防:ストレス管理と規則正しい生活習慣の確立
適応障害は、再発の可能性もある病気です。再発を予防するためには、ストレスをため込まない工夫と、規則正しい生活習慣を維持することが重要です。ストレス管理には、リラックスできる時間を作る、趣味を楽しむ、適度な運動をするなど、さまざまな方法があります。
睡眠時間をしっかりと確保し、バランスの良い食事を摂るなど、生活習慣にも気を配ることも重要です。規則正しい生活習慣は、心身の健康を支えるために欠かせません。
周りの人が適応障害になってしまった場合は、一緒に趣味を楽しんだり、栄養が豊富な食事を作ったりするなど、再発の予防に協力すると効果的です。
家族・同僚のメンタルヘルス:共感疲労を防ぐためのセルフケア
適応障害の方を支える家族や同僚は、共感疲労に陥るリスクがあります。共感疲労とは、他者の苦痛に共感しすぎるあまり、自分自身も精神的に疲弊してしまう状態です。
共感疲労を防ぐためには、自分自身のメンタルヘルスにも気を配り、セルフケアを意識することが重要です。自分の好きなことをする時間を作る、十分な睡眠をとる、信頼できる人に話を聞いてもらうなど、心身を休ませる方法を見つけましょう。
適応障害は、周囲の理解とサポートが不可欠な病気です。職場や家庭で具体的なサポートを行うことで、回復を促進し、再発予防につながります。焦らずにじっくりと寄り添い、一緒に乗り越えていきましょう。
まとめ
適応障害は、環境の変化や人間関係、仕事のプレッシャーなど、誰にでも起こりうる身近な病気です。適応障害から回復するには、周囲の理解と適切なサポートが重要です。
適応障害の人と接するときは、相手の話をよく聴き、肯定的な言葉をかけることが効果的です。家事や仕事がうまくいかなくても、責めるような言葉をかけてはいけません。
家族が適応障害になった場合は、安心できる環境づくりが重要です。職場の人が適応障害の場合は、仕事量の調整や相談窓口の設置が効果的です。一緒に趣味を楽しんだり、規則正しい生活のサポートをすることは、適応障害の再発防止につながります。支える側の共感疲労にも気を付けて、セルフケアを忘れずに行いましょう。
適応障害の人への具体的な接し方に悩む場合は、医師やカウンセラー等の専門家への相談もおすすめです。一人で悩まず、近くの精神科・心療内科などに相談してください。
てらすクリニックでは、患者様の状態を丁寧にヒアリングし、患者様への具体的な接し方をお伝えします。
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参考文献
Ignaszewski MJ. “The Epidemiology of Drug Abuse.” Journal of clinical pharmacology 61 Suppl 2, no. (2021): S10-S17.
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