喘息の症状とは?大人の症状や治し方、やってはいけないことを医師が解説
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監修者船橋 健吾(てらすクリニックひきふね院長)
あなたは、咳や息苦しさといった喘息の症状に悩まされていませんか?日本では、約457万人が喘息を患っているというデータがあります。喘息は、風邪やタバコの煙、ダニなど、さまざまな原因によって引き起こされる可能性が高いです。
この記事では、咳や息苦しさなど具体的な喘息の症状を7つ解説します。喘息の原因別に適切な対策方法や治療法もご紹介しているので、ご自身に合った方法を見つけて、喘息を改善しましょう。
墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは、喘息の診療をしております。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。
喘息とは気管支が炎症を起こすこと
喘息になると、空気の通り道である気管支(きかんし)が炎症を起こしてしまいます。この炎症によって気管支の壁が腫れぼったくなり、空気の通り道が狭くなる結果、息がしにくくなったり、咳が出るのです。
喘息で現れる主な症状7つ
咳や息苦しさなど、喘息の症状に悩まされている方もいるかもしれません。喘息でよくみられる7つの症状は以下の7つです。
- 咳が出る
- 息苦しい(呼吸困難)
- ゼーゼー、ヒューヒューと音がする(喘鳴)
- 胸が締め付けられる
- 痰が絡む
- 呼吸が浅くなる
- 動悸がする
つらい症状を和らげ、快適に過ごせるように、一緒に見ていきましょう。
咳が出る
喘息になると、空気の通り道である気管支が敏感になって、ちょっとした刺激にも過剰に反応してしまいます。結果、咳が止まらなくなってしまうのです。特に、夜や早朝に咳が出やすいという特徴があります。夜になると気管支が収縮しやすくなるためです。
風邪をひいたときにも咳が出ますが、喘息の咳は風邪の咳とは少し違います。風邪の咳は喉の痛みや鼻水、発熱などの症状を伴うことが多いですが、喘息の咳は、これらの症状を伴わない傾向です。
息苦しい(呼吸困難)
気管支が狭くなることで、十分な酸素を体に取り込めなくなり、息苦しさを感じます。特に運動後や、冷たい空気を吸った時に息苦しくなります。運動や冷たい空気は気管支を刺激し、収縮させてしまうためです。
健康な人であれば、運動後や冷たい空気を吸っても息苦しさを感じることはほとんどありません。喘息の患者さんの場合、多少の刺激でも気管支が過剰に反応してしまい、息苦しさを感じるのです。
ゼーゼー、ヒューヒューと音がする(喘鳴)
喘息の咳は「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音がしたり、痰が絡んだりすることが多いです。喘鳴(ぜんめい)は喘息の症状の中でも特徴的なもので、特に息を吐くときに聞こえやすいです。夜間や早朝に喘鳴が強くなる傾向があります。喘鳴が聞こえる場合は、喘息の症状が悪化している可能性があるので、早めに医療機関を受診しましょう。
胸が締め付けられる
気管支が炎症を起こすと、周囲の筋肉も緊張してしまい、胸が締め付けられるような苦しい感覚に襲われます。胸の苦しさを感じると、不安になって救急車を呼ぶ方も少なくありません。
痰が絡む
気管支の炎症を鎮めようと、体は痰を分泌します。痰は空気中のほこりやウイルスを絡め取って、体外に排出する役割があります。喘息では痰が過剰に分泌されてしまい、痰が喉に絡みついて不快な咳を引き起こすことがあります。
喘息の患者さんの中には「痰が絡んで仕方がない」「痰が絡むせいで、夜も眠れない」と訴える方もいます。痰の症状がひどい場合は、去痰剤と呼ばれる薬を処方することが多いです。
呼吸が浅くなる
息苦しさを感じると、自然と呼吸が浅くなります。十分な酸素を体に取り込めず、さらに息苦しさを感じる悪循環に陥るので危険です。
喘息発作が起こると、呼吸をすること自体が苦しくなり浅く速い呼吸になってしまいます。呼吸が浅くなると、体内に取り込まれる酸素の量が減り、倦怠感や頭痛などの症状が現れることもあります。
動悸がする
十分な酸素が体に行き渡らないと、心臓は一生懸命酸素を送り届けようとします。結果、動悸が激しくなることがあります。
動悸とは心臓がドキドキしたり、脈が速くなったりすることです。健康な人でも緊張したり興奮したりすると動悸が起こることがありますが、喘息の患者さんの場合、酸素不足でも動悸が引き起こされます。喘息の治療薬の中には、動悸を引き起こす副作用を持つものもあるため、注意が必要です。
タイプ別の喘息の原因と誘発因子
咳や息苦しさの症状が出る喘息の原因や誘因となるものは人それぞれです。一体どんな原因で喘息が起こるのか、2つのタイプの原因と、喘息発作の誘発因子について解説します。
アレルギー型喘息の原因
アレルギー型喘息は、特定のアレルゲン(アレルギーの原因物質)に反応して、気管支に炎症が起こることで発症します。まるで、体の中に小さな警報機があって、アレルゲンが入ってくると、気管支が驚いて狭くなるイメージです。
刺激に反応すると気管支が収縮して、息苦しさや咳などの症状が出てしまうのです。主なアレルゲンは以下のものがあります。
- ダニ:家の中のほこりや布団、ぬいぐるみなど
- 花粉:スギやヒノキ、ブタクサなど
- ペットの毛:犬や猫、ハムスターなどの毛など
- カビ:浴室や台所、クローゼットなどの湿気の多い場所など
- 食品:卵や牛乳、小麦、そば、ピーナッツなど
- 薬剤:解熱鎮痛剤や抗生物質など
アレルゲンを完全に避けることは難しいですが、こまめな掃除や換気を心がけることで対策できます。アレルゲンを吸い込まないようにマスク着用などの対策もおすすめです。
非アレルギー型喘息の原因
非アレルギー型喘息は、アレルギーが関係せずに、さまざまな刺激によって気管支が過敏に反応して起こります。主な原因は以下のとおりです。
- 気温や湿度の変化:急激な温度変化や乾燥した空気など
- 大気汚染物質:タバコの煙や排気ガス、工場からの煙など
- 化学物質:香水や塗料、洗剤など
- 気道の感染症:風邪やインフルエンザなどのウイルス感染、マイコプラズマ感染症など
- 運動:激しい運動など
- 精神的なストレス:強いストレスや緊張、興奮など
- 薬剤:一部の薬剤(β遮断薬)など
- その他:天気の変化や月経、飲酒、食品添加物など
刺激を避けることは難しい場合もありますが、マスクの着用やストレスを溜め込まないように工夫しましょう。
喘息発作の誘発因子になるもの
喘息発作はアレルゲンや刺激物だけでなく、体調や環境、精神的な要因などさまざまな要因が複雑に絡み合って起こります。患者さん一人ひとりで誘因や症状の程度が異なるため、自分に合う治療法を見つけることが大切です。日頃から自分の症状や誘因を記録しておき、医師に相談する際に伝えるようにしましょう。
喘息の治療法
喘息発作は、大人になっても治らず不安な方も多いです。喘息の症状を和らげ、健康的な生活を送るための治療法と対処法を紹介します。
薬物療法
薬物療法は、喘息治療の要となる治療法です。 患者さんの症状や重症度、治療への反応性なども考慮して、医師が最適な薬を選択し治療計画を立てます。
喘息の薬は、発作時に使う薬と発作を予防する薬の大きく分けて2種類です。
発作時に使う薬
発作時に使う薬は以下の2種類です。
- 気管支拡張薬
- 気管支を拡張して呼吸を楽にする
- 発作時に使用する「発作治療薬」として用いらる
- 発作が起きたときに吸入すると、数分以内に症状が落ち着いてくることが多い
- ステロイド薬
- 気道の炎症を抑え、呼吸を楽にする
- 重症の発作時に使用する
- 気道の炎症を抑えることで、喘息発作の根本的な改善を目指す
発作を予防する薬
発作を予防する薬は以下の3種類です。
- 吸入ステロイド薬
- 気道の炎症を抑え、喘息を根本から治療する
- 毎日吸入することで、発作が起こりにくくなる
- 副作用が少なく、長期的に使用できる
- 長時間作用型気管支拡張薬
- 気管支を長時間かけて拡張し、発作を予防する
- 吸入ステロイド薬と併用されることが多い
- ロイコトリエン受容体拮抗薬
- アレルギー反応に関与する物質であるロイコトリエンの働きを抑え、気道の炎症を抑える
- 吸入ステロイド薬の効果が不十分な場合に併用される
- 内服薬で服用が簡便なため、喘息治療の継続が難しいと感じる患者さんに向いている
非薬物療法
薬物療法に加えて生活習慣の改善や環境調整など、患者さん自身で行える治療法も大切です。代表的な非薬物療法には、以下のようなものがあります。
- 誘因の回避
- ダニやハウスダストや花粉、ペットの毛など、アレルギーの原因となるものを避ける
- こまめな掃除や換気、空気清浄機の使用などが効果的である
- 運動療法
- 適度な運動は、心肺機能を高め喘息の症状を改善する効果がある
- ウォーキングや水泳など無理のない運動を継続する
激しい運動や寒冷刺激の強い環境での運動は、逆に喘息発作を誘発する可能性があるため、注意が必要です。アレルゲンの免疫療法もあります。
アレルゲン免疫療法
アレルゲン免疫療法は、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)を少量ずつ投与します。体をアレルゲンに慣らし、アレルギー反応を弱めていく治療法です。長期的に行うことで、喘息の症状を根本的に改善できる可能性があります。
ダニや花粉などの特定のアレルゲンが原因で喘息発作を起こしやすい方に有効な治療法です。
喘息発作時の対処法
喘息発作が起きたときは、落ち着いて以下の手順で対処しましょう。
- 落ち着いて、楽な姿勢をとる
- まずは慌てずに落ち着く
- 椅子に座るなどして、楽な姿勢をとる
- 横になると呼吸が苦しくなる場合があるので避ける
- 指示された薬を吸入する
- 医師から処方された、気管支拡張薬を吸入する
- 吸入したら、数回深呼吸をして、薬を気道に行き渡らせる
- 改善しない場合は、救急車を呼ぶ
- 薬を吸入しても症状が改善しない場合や、意識がもうろうとする場合は、すぐに救急車を呼ぶ
唇や爪が紫色になる、呼吸がとても苦しそう、呼びかけに反応しないなどの症状がある場合は、ためらわずに救急車を要請してください。喘息は適切な治療と自己管理によって症状をコントロールできる病気です。 医師と協力しながら、治療に取り組み、健康的な生活を送りましょう。
喘息治療の目標を立てる
喘息の治療は、ただ発作を抑えるだけではありません。患者さん一人ひとりの生活の質を高め、笑顔で毎日を過ごせるように、以下の3つの目標を立てて治療しましょう。
- 喘息発作を予防する
- 症状を改善する
- 肺の機能を維持する
喘息の治療で一番大切なのは、発作をできるだけ起こさないようにすることです。毎日の治療を行えば、突然くる発作の不安から解放されて安心して過ごせます。咳や痰、呼吸困難などのつらい症状を和らげ、快適な呼吸を手に入れましょう。
症状が改善することで、仕事や家事、趣味など、日常生活をこれまで通り楽しめます。適切な治療によって肺の機能低下を防ぎ、健康な状態を保つことが大切です。
喘息治療は、患者さん一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせるため、医師とよく相談しながら無理なく治療を続けていきましょう。
まとめ
喘息は気管支が炎症を起こし、空気の通り道が狭くなることで、咳や息苦しさなどの症状が現れる病気です。アレルゲンや刺激物などが原因で起こる場合があり、症状や誘因は人それぞれです。
治療は、肺の機能を維持することを目的とし、薬物療法と非薬物療法を組み合わせます。喘息は適切な治療と自己管理によって症状をコントロールできる病気なので、医師と協力しながら治療に取り組みましょう。
喘息の概要について知りたい方は以下の記事をご覧ください。
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