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双極性障害の薬物療法とは?副作用で太ることはある?

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監修者船橋 健吾(てらすクリニックひきふね院長)

双極性障害には薬物療法があり、効果がある一方で副作用も考慮する必要があります。薬物療法は有効ですが、体重増加や眠気などの副作用に苦しむ人も少なくありません。この記事では、双極性障害の副作用の概要と対策について解説します。

薬だけでなく、ライフスタイルの改善や他の治療法と組み合わせることで、症状のコントロールと再発を防止することが可能です。記事を読めば、双極性障害に対する適切な治療を受けられ、より良い生活を実現できます。

墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは、双極性障害の診療をしております。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。

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双極性障害の薬物療法とは?治療に使われる薬と効果

薬物療法は、双極性障害による気分の波を穏やかにできるようにサポートする治療法です。薬によって症状を和らげ、家事や仕事、趣味など、患者さんが自分らしく充実した毎日を送れるようにすることを目指します。

薬の効果や副作用には個人差があるため、一人ひとりの症状や状態、体質などに合わせて、最適な薬の種類や量が選択されます。

気分安定薬のリチウム

「リチウム」は、躁状態の治療薬として長年にわたりその効果が認められ、保険適用で処方されます。

リチウムは、気分の波を穏やかにする効果があります。躁状態だけでなく、うつ状態にも効果を発揮し、さらに、気分の波を繰り返すことを予防する効果も期待できます。

ただし、効果が出るまでに時間がかかる場合があり、個人差はありますが、数週間から数ヶ月かかることもあります。これは、リチウムが脳の神経細胞にゆっくりと働きかけ、そのバランスを整えていくためです。

また、血液中のリチウムの量が多すぎると、副作用が出やすくなるため、定期的な血液検査が必要です。副作用としては、手が震えたり、のどが渇いたりすることがあります。その他、腎臓の働きに影響が出る可能性もあるため、定期的な検査が必要です。

再発防止に効果的な抗精神病薬

「抗精神病薬」は、もともと幻覚や妄想などの症状を抑えるために開発された薬ですが、双極性障害の治療にも広く使われています。

抗精神病薬は、気分安定薬と同様に、躁状態を抑えたり、再発を予防したりする効果があります。特に、激しい興奮や衝動的な行動を伴う重い躁状態に対しては、即効性が期待できるため、緊急時の治療薬としても用いられます。

抗精神病薬には、たくさんの種類があり、それぞれに特徴があります。例えば、「オランザピン」は、躁状態にもうつ状態にも効果があり、気分安定薬と併用されることが多い薬です。「アリピプラゾール」は、躁状態に効果的という特徴があります。「クエチアピン」は、躁状態とうつ状態の両方に効果があり、副作用が比較的出にくい薬です。

気分の波を抑える抗てんかん薬

「抗てんかん薬」は、本来はてんかん発作を抑えるために使われる薬ですが、双極性障害の治療にも有効であることが分かっています。

抗てんかん薬は、気分の波を穏やかにし、躁状態とうつ状態の両方を抑える効果があります。特に、躁状態とうつ状態が交互に現れるような場合や、短期間で繰り返す場合に効果が期待できます。

抗てんかん薬にもいくつか種類があり、それぞれ特徴が異なります。例えば、「バルプロ酸」は、躁状態の治療薬として保険適用となっており、躁状態とうつ状態が交互に現れるような場合にも効果があります。「カルバマゼピン」も躁状態の治療薬として保険適用となっており、特に、躁状態とうつ状態が短期間で繰り返す場合に効果が期待できます。「ラモトリギン」は、うつ状態の予防効果が高いとされています。

双極性障害の薬物療法で重要なこと

薬物療法を行う上で最も重要なことは、患者さん一人ひとりに最適な薬を選択することです。そのため、医師は、患者さんの症状や状態、体質などを考慮し、最適な薬を選びます。

薬の効果や副作用には個人差があるため、自己判断で薬の服用を中止したり、量を変えたりすることは大変危険です。薬について気になることや不安なことがあれば、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。薬物療法は、医師と患者さんが協力して行うことが大切です。

薬物療法で気をつけたい副作用

薬には良い作用だけでなく、副作用が現れる可能性があることも知っておく必要があります。副作用は一時的なものもあれば長く続くものもあり、薬の種類や量、個人の体質によって異なります。

副作用を恐れて、自己判断で服薬を中断してしまうと、症状が悪化したり再発したりする可能性もあるので注意が必要です。

副作用①|体重増加

体重増加は、抗精神病薬や気分安定薬で見られる代表的な副作用の1つです。体重が増加すると、見た目が気になるだけでなく、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病のリスクが高まります。体重増加がきっかけでうつ病の症状が悪化したり、服薬の継続意欲が低下したりすることもあります。

体重増加が気になる場合は、自己判断で服薬を中止するのではなく、まずは医師に相談することが大切です。医師と相談の上、食事の内容を見直したり、運動を取り入れたりする場合や、副作用の少ない薬に変更することもあります。

副作用②|眠気

眠気も、双極性障害の治療薬でよく見られる副作用です。抗精神病薬や気分安定薬、抗うつ薬など、多くの薬で見られます。精神症状を安定させる効果がありますが、覚醒を維持する神経系の働きも抑制してしまうため、眠気を感じやすくなりやすいです。

眠気が強い場合は、運転や機械の操作など、危険を伴う作業は控えるようにしましょう。日常生活に支障が出るほどの眠気が続く場合は、医師に相談して服薬の時間帯を変更したり、薬の種類を変えたりしましょう。

副作用③|ふるえ

ふるえは、リチウムなどの気分安定薬で見られる副作用の1つです。躁状態やうつ状態への予防効果がありますが、筋肉の神経系にも影響するため、手が震える症状が現れる場合もあります。症状が強い場合は、医師に相談して薬の量を減らしたり、他の薬に変更したりしましょう。

副作用④|口の渇き

口の渇きは、抗精神病薬や抗うつ薬で見られる副作用の1つです。唾液の分泌を減らす作用があるため、口が渇きやすくなります。口の渇きが気になる場合は、こまめに水分を摂ったり飴を舐めたり、ガムを噛むのも効果的です。症状が改善しない場合は、医師に相談して薬の種類を変えるなどの対応を検討しましょう。

薬だけに頼らない!双極性障害の治療法

双極性障害の治療薬には、気分を穏やかにする効果があり、症状のコントロールに有効です。しかし、薬だけに頼るのではなく、他の治療法や生活習慣の改善などの組み合わせが、より効果を高めて再発を防ぐために重要です。ここでは、服薬療法以外の治療や効果的な生活習慣、再発防止のためにできることを解説します。

服薬療法以外の治療法

服薬療法以外の治療法には、心の専門家である医師やカウンセラーと協力しながら進めていくものがあります。

精神療法

精神療法は、心の状態や行動パターンを分析し、問題解決の方法を探っていく治療法です。うつ状態の改善だけでなく、ストレスへの対処法を学ぶことで、再発予防にも効果が期待できます。

家族療法

家族療法では、家族が病気について正しく理解し、患者さんにどのように接すれば良いかを一緒に考える方法です。家族が病気を理解して、状態に合わせた適切な接し方を知ることで、患者さんの症状が安定するケースは少なくありません。

グループセラピー

同じ悩みを持つ人たちと語り合うことで、不安や孤独感を和らげ、互いに支え合うことを目的としています。双極性障害を抱える人たちは「自分のつらさを分かち合える人がいない」といった孤独感を抱えがちです。同じ病気を持つもの同士だからこそ理解し合える悩みや不安を共有することで、心の安定や社会復帰を目指します。

精神科デイケア

生活リズムを整え、作業療法やレクリエーションなどを通して、社会復帰を目指すサービスです。陶芸や絵画などの創作活動、音楽療法、調理、掃除などを通して、生活スキルを向上できます。

リハビリテーション

病気や障害によって低下した能力を回復させ、社会参加や自立生活をサポートします。就労支援施設などを利用して、自分に合った仕事を探したり、職場での人間関係をスムーズに築くためのトレーニングを受けたりすることが可能です。

治療に効果的な生活習慣

双極性障害の治療には、薬だけでなく、生活習慣の改善も大切です。心と体は密接につながっています。生活習慣が乱れると、心のバランスも崩れやすくなるため、規則正しい生活を心がけることが重要です。同じように、ストレス管理や人とのつながりも大切になります。

規則正しい生活

睡眠や食事、運動を規則正しくおこなうことは、心の安定にもつながります。

  • 睡眠:毎日決まった時間に寝起きすることで、体内時計を整え、質の高い睡眠を取れます。寝る前にカフェインやアルコールの摂取は避け、リラックスできる環境を整えましょう。
  • 食事:栄養バランスの取れた食事を、3食規則正しく摂ることで、脳や体に必要な栄養素が補給され、心の安定にもつながります。
  • 運動:軽い運動を習慣的におこなうことは、ストレス解消効果やリラックス効果だけでなく、質の高い睡眠にもつながります。運動不足は、ストレスをため込みやすく、気分の落ち込みや不安感などを悪化させる可能性があります。

ストレス管理

ストレスは、双極性障害の大きな要因です。ストレスをため込まないためには、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。好きなことに没頭できる時間は、ストレス発散や気分転換にもなります。音楽鑑賞や読書など、心をリラックスできる方法を見つけることで、ストレスを軽減し、心を安定させやすくなります。

人とのつながり

家族や友人との良好な関係を築くことは、心の支えになります。不安を一人で抱え込まずに、信頼できる人に相談したり、話を聞いたりしてもらうだけでも、気持ちが楽になることがあります。地域活動やボランティア活動などに参加して、新しい出会いを増やすのもおすすめです。

再発予防のためにできること

双極性障害は、再発しやすい病気ですが、再発予防のためにできることもあります。

薬物療法の継続

医師の指示に従って、薬を飲み続けることが大切です。症状が改善したからといって、自己判断で服薬を中止してしまうと、再発のリスクが高まります。薬の量や種類は、医師と相談しながら、自分の状態に合わせて調整しましょう。

生活習慣の改善

規則正しい生活やストレス管理、人とのつながりを維持することで、健康な状態を長く保てます。双極性障害の再発予防だけでなく、健康な生活を送る上でも重要な要素です。

早期発見

症状が出始めたら、すぐに医師に相談することが大切です。「もしかしたら再発かも?」と感じたら、なるべく早めに医師へ相談して適切な対応をしましょう。

ライフチャート

過去の症状や薬物療法の経過などを記録することで、自分自身の状態を把握できます。いつ、どんなときに、どのような症状が現れたのか、薬の効果や副作用はどうだったのかを記録しましょう。自分自身の状態を客観的に把握することができ、医師に相談する際にも、より的確なアドバイスを受けられます。

双極性障害は、適切な治療やサポートを受けることで、症状をコントロールし、充実した生活を送ることが可能です。

双極性障害の薬物療法に関するよくある質問

双極性障害の薬物療法は、症状をコントロールし、穏やかな日々を送るためにとても大切です。しかし、薬について気になることや不安なことも多いでしょう。ここでは、よくある質問について、双極性障害の患者さんを長年診察してきた医師の立場から、詳しく解説していきます。

薬は一生飲み続けないといけないの?

「薬は一生飲み続けないといけないの?」という疑問に対する答えは、残念ながら一概には言えません。双極性障害の治療薬も、患者さん一人ひとりの症状の重さや経過、体質、そして薬に対する反応によって異なってくるからです。

症状が比較的軽く、再発のリスクが低いと判断された場合には、医師の指示のもとで徐々に薬の量を減らしていく、あるいは一定期間休薬するといった選択肢も考えられます。

しかし、症状が重く再発を繰り返す場合には、再発予防のために症状が安定した後も、医師の判断のもとで薬を継続することが推奨されるケースが多いです。これは、双極性障害が再発を繰り返す病気であり、再発するたびに症状が重くなったり、脳に負担がかかりやすくなる可能性も指摘されているためです。

薬物療法の効果を高めるには?

薬の効果を最大限に引き出し、双極性障害とうまく付き合っていくためには、薬を正しく服用することはもちろんですが、それ以外にも、患者さん自身が積極的に取り組めることがたくさんあります。

薬物療法の効果を高めるためのポイントをいくつかご紹介します。

  • 医師の指示を守り、薬を正しく服用する
  • 規則正しい生活習慣を心がける
  • ストレスをため込まない
  • 双極性障害の症状や治療について学ぶ
  • 周囲のサポートを受ける

薬物療法の効果を高めるためには、医師、そしてご家族や周囲の方々と協力し、焦らず治療を続けていくことが大切です。

妊娠中の薬の影響は?

双極性障害は、妊娠・出産にも影響を与える可能性がある病気です。妊娠中に症状が悪化すると、お母さんだけでなく、お腹の赤ちゃんにも悪影響を及ぼす可能性があります。

妊娠中に服用できる薬と服用できない薬があります。自己判断で薬の服用を中止したり、変更したりすることは大変危険です。妊娠中の薬の影響は、薬の種類や服用量、妊娠週数などによって異なり、専門的な知識が必要となるため、必ず医師に相談しましょう。

妊娠中は、薬物療法だけでなく、心理療法や生活習慣の改善なども有効です。医師と相談しながら、自分にとって最適な治療法を見つけていきましょう。

まとめ

双極性障害の薬物療法には、気分安定薬や抗精神病薬、抗うつ薬、睡眠薬(抗不安薬)の4種類があります。薬物療法は有効ですが、体重増加や眠気、ふるえ、口の渇きなどの副作用が生じる可能性があります。副作用が気になる場合は自己判断せず、医師に相談することが重要です。

薬物療法だけに頼らず、精神療法や家族療法、グループセラピーなどの治療法を活用しましょう。規則正しい生活やストレス管理、人とのつながりといった生活習慣の改善も組み合わせることで、より効果的に再発を予防できます。

双極性障害について網羅的に知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。

>>双極性障害とは?Ⅰ型Ⅱ型のそれぞれの特徴と診断方法、原因について詳しく解説

参考文献

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  3. 双極性障害のうつ病に対する気分安定剤と抗精神病薬の効果と安全性の比較:システマティックレビュー
  4. 自然療法下の双極性障害患者における躁/軽躁とうつ症状の切り替え:抗うつ薬と抗精神病薬の役割についての網羅的なレビュー
  5. Pipolar Research Shows Promise
  6. Medications for Bipolar Disorder
  7. Beyond evidence‐based treatment of bipolar disorder: Rational pragmatic approaches to management
  8. Managing the Side Effects of Medications for Bipolar Disorder