適応障害で休職までのフローを解説!伝え方や休職後の過ごし方について
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監修者船橋 健吾(てらすクリニックひきふね院長)
「適応障害で会社を休みたいが、どのような流れで休職まで至るかを誰にも相談できない」
そんな悩みを抱えた方に向けた記事です。この記事では、適応障害になったあと休職に至るまでのフローや職場復帰に向けた準備について解説します。記事を読めば、休職に向けての不安を解消し、前向きに進んでいくことが可能です。
墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは、適応障害の診療をしております。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。
職場への伝え方と休職の手続き
適応障害と診断され、医師から休職を勧められたら、次は職場への報告と休職の手続きです。 「休職」という言葉は、大きな不安に襲われるかもしれませんが、休職は決して恥ずべきことではありません。むしろ、あなたの心身を休ませ、再び元気に働き始めるための大切な一歩です。
会社への報告は誰に、いつ、どのように行うべき?
会社への報告は、誰に、いつ、どのように伝えるかで迷う方も多いでしょう。 基本的には、日頃から業務上の指示や相談をしている直属の上司に伝えることが一般的です。 しかし、会社によっては、人事部や労務担当、相談窓口が別に設けられている場合もあるため、事前に就業規則を確認しておきましょう。
報告のタイミングは、早めが鉄則です。 診断書が出たら、できるだけ早く報告しましょう。 あなたが普段通りに振る舞おうと頑張るほど、心身への負担は大きくなり、症状が悪化してしまう可能性もあるのです。 また、休職が遅れることで、同僚への負担が増えたり、業務に支障をきたす可能性もあります。
休職期間や業務の引継ぎについては、医師の意見も踏まえて、具体的な内容を伝えられるように準備しておくとスムーズです。 例えば、「医師からは、まずは3ヶ月間休養し、その後、症状や回復状況に応じて復職時期を判断するよう勧められています。 業務については、○○さんに引き継ぎをお願いしたいと考えていますが、何かご要望があれば、お申し付けください。」のように伝えるといいでしょう。
診断書は必須? 取得の流れを解説
休職する際に、会社から診断書の提出を求められることがほとんどです。 診断書は、休職が必要な理由を客観的に証明するものであり、休職の期間や待遇などを決める上でも重要な書類となります。 これは、あなたが会社に対して「休ませてください」とお願いする際に、客観的な証拠を添えることで、会社側の理解と協力を得やすくなるからです。
診断書は、診察を受けた医療機関で発行してもらえます。 医師に「会社に提出する休職のための診断書が欲しい」と伝えましょう。 その際、会社から診断書に関する何かしらの指示があれば、忘れずに医師に伝えましょう。 診断書の内容には、病名、症状、休職が必要な期間などが記載されます。 費用は医療機関によって異なり、自由診療扱いとなるため、健康保険が適用されない場合がほとんどです。
休職期間はどれくらい? 給与や保険はどうなる?
休職期間は、症状の程度や回復状況によって個人差がありますが、一般的には3か月から6か月程度が目安となります。焦らずに、ご自身のペースで回復していくことが大切です。会社によっては、休職期間の上限を定めている場合があります。
休職期間中の給与も、会社によって対応が異なります。 就業規則を確認し、給与の有無や支給割合などを確認しておきましょう。 傷病手当金は、病気やケガで働けなくなった場合に、一定の要件を満たせば、健康保険から給与の3分の2相当額が支給されます。 これは、経済的な不安を抱えることなく、安心して治療に専念できるよう、国が設けている制度です。
ただし、休職期間中により給与が支払われなくても、社会保険の被保険者であれば社会保険料を納める必要があります。通常、労働者が納めるべき社会保険料は毎月の給与から控除され、会社が支払います。しかし、休職により納付すべき金額より給与が少ない場合は、会社は労働者に対して直接請求する必要があります。
復職のタイミングは? 必要な手続きを解説
復職のタイミングは、主治医と相談の上で、心身の状態や職場環境などを考慮して決めます。 焦らずに、無理のないペースで復職することが大切です。 ご自身のペースを守り、少しずつ職場復帰を目指しましょう。
復職する際には、会社に連絡し、必要な手続きを進めます。 会社によっては、主治医の意見書や復職申請書などの提出を求められる場合があります。 復職後も、定期的な通院や、業務内容の調整など、無理なく働けるよう、会社と相談し、必要なサポートを受けながら、再発防止に努めましょう。
適応障害で休職が必要になるサイン
適応障害は、特定の環境や状況にうまく適応できず、心身にさまざまな不調が現れる病気です。 そして、適応障害は、真面目で責任感が強く、頑張り屋さんの人にこそ起こりやすい病気とも言われています。 あなたは、このようなサインに心当たりはありませんか?
仕事に行けない日が続いている
「今日はちょっと疲れているだけ」「週末にゆっくり休めば大丈夫」 そう思って、頑張って出社しているものの、心身の疲労はなかなか取れず、会社に行くこと自体が苦痛に感じてしまう。 これが、適応障害の初期症状によく見られるサインです。
集中力が低下し、ミスが増えている
会議中に頭がぼーっとして、上司の指示を聞き逃してしまったり、簡単な計算ミスを連発してしまったりなど、 集中力や注意力の低下も、適応障害の代表的な症状の一つです。 心身のバランスが崩れることで、脳の機能も低下し、今までスムーズにこなせていた作業に、必要以上の時間と労力を費やすようになってしまいます。
適応障害によって、仕事のパフォーマンスが低下することは、患者さん本人だけでなく、周囲にまで影響が及ぶ可能性があるため、早急な対応が必要となります。
睡眠障害や食欲不振などの症状が出ている
夜になってもなかなか寝付けなかったり、逆に、朝起きても全く疲れが取れず、一日中だるさが抜けなかったり。 適応障害は、睡眠にも悪影響を及ぼします。
また、「食欲不振」や「過食」も、適応障害でよく見られる症状です。 ストレスから解放されようと、過剰に食べ過ぎてしまったり、逆に、何も食べたくない、食べても美味しく感じないという状態に陥ってしまうこともあります。
このように、適応障害は、心身にさまざまな不調を引き起こし、あなたの健康を蝕んでいきます。
休職を勧められている
医師から休職を勧められたということは、あなたの心身の状態は、かなり深刻な状態にあると言えます。 しかし、「休職=負け」と捉え、休むことに罪悪感を感じてしまう方も少なくありません。
しかし、休職は、決して恥ずべきことではありません。 むしろ、休職は、あなた自身を守るための、そして、再び元気に働き始めるための、大切な一歩なのです。 焦らずに、ゆっくりと休養し、治療に専念しましょう。
また、パワハラやセクハラが原因で適応障害を発症した場合、労働災害として認められる可能性もあります。 労働災害と認められると、治療費や休業補償が受けられるだけでなく、会社側に対して、職場環境の改善を求めることもできます。 医師に相談する際は、パワハラやセクハラに関する出来事や、その時の状況などを具体的に伝えるようにしましょう。
休職期間中の過ごし方と復職に向けての準備
適応障害と診断され、休職に入ると、仕事から離れ、時間に余裕が生まれる方が多いでしょう。 「せっかくの休暇だから」と、旅行や趣味に打ち込もうと計画する方もいるかもしれません。 しかし、適応障害は、心の疲労が蓄積して発症する病気です。 身体を休ませるだけでなく、心の回復にもしっかりと目を向けることが大切です。
規則正しい生活と十分な休養
適応障害の回復には、生活リズムを整え、心身を休ませることが何よりも重要です。 今まで、仕事のプレッシャーや時間に追われる生活の中で、睡眠不足や不規則な食生活が続いていた方もいるのではないでしょうか。睡眠をきっちり取ったり、バランスの取れた食事を心がけたりと規則正しい生活を送るようにしましょう。
趣味やリラックスできる活動
休職期間中は、時間に余裕ができるため、趣味やリラックスできる活動に取り組む良い機会です。 今まで仕事に追われていた時間を、自分自身のために使うことで、心身の疲れを癒し、リフレッシュすることができます。
これまでやってみたかったことや、興味のあったことに挑戦してみましょう。また、楽しむことを意識し、結果を気にしすぎないようにしてください。
主治医との相談に基づいた無理のない復職計画
復職時期は、焦らずに主治医と相談し、無理のない計画を立てることが大切です。 職場復帰は、ゴールではなく、新たなスタート地点に立つようなものです。 焦って無理をしてしまうと、再び症状が悪化してしまう可能性もあります。 ご自身のペースで、少しずつ職場に慣れていくようにしましょう。
復職計画の例
- 段階的な復職
- 業務内容の調整
- 定期的な医師の診察
職場復帰後のサポート体制の確認
職場復帰後も、再発を防ぎ、安心して働き続けるためには、会社と連携し、必要なサポートを受けられる体制を整えておくことが大切です。
職場復帰後のサポート体制の例
- 定期的な面談の実施
- 職場環境の改善
- メンタルヘルスサポート
休職期間は、決して後ろ向きな時間ではなく、ご自身の心身にしっかりと向き合い、より健康的に生きていくための大切な準備期間です。 焦らず、ご自身のペースで、心身の回復と、職場復帰に向けての準備を進めていきましょう。
まとめ
適応障害は、環境の変化によって心身にさまざまな症状が現れる病気です。仕事や人間関係、家庭環境など、さまざまなストレスが原因となり得ます。主な症状は気分の落ち込みや不安感、イライラ、集中力の低下などです。
適応障害と診断された場合は、休職という選択肢も考えられます。休職手続きは以下の4ステップです。
- 医療機関の受診
- 会社に相談
- 休職の申請
- 休職期間について話し合う
休職中は心身の回復を最優先し、生活リズムを整え、医師の指示に従うことが重要です。職場復帰に向けては、主治医や会社と相談し、必要であればリワーク施設の利用や職場環境調整を検討しましょう。家族や周囲のサポートも大切です。焦らず、自分のペースで職場復帰を目指しましょう。
参考文献
- Brämberg E, Åhsberg E, Fahlström G, Furberg E, Gornitzki C, Ringborg A, Thoursie PS. Effects of work-directed interventions on return-to-work in people on sick-leave for to common mental disorders-a systematic review. International archives of occupational and environmental health 97, no. 6 (2024): 597-619.
- 厚生労働省:地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会
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