適応障害の治し方は?仕事との向き合い方と薬、食べ物の活用も解説
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監修者船橋 健吾(てらすクリニックひきふね院長)
目次
新しい環境や人間関係に適応するのが難しいと感じているあなたは、もしかしたら「適応障害」かもしれません。適応障害は、職場や家庭環境の変化、人間関係のストレスなどによって、心身に不調が現れる心の病気です。
この記事では、最近増えてきている適応障害の治療方法などを具体的に紹介します。適応障害の原因や再発防止策まで詳しく解説していくので、ぜひ最後まで読んでみてください。
墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは、適応障害の診療をしております。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。
適応障害の治療法
適応障害と診断されると不安かもしれませんが、適切な治療とサポートで回復が期待できます。治療は個人差があり、焦らず自分のペースで進めることが大切です。
薬物療法の効果と副作用
適応障害の治療では、症状の軽減や心の安定を図るために、薬物療法が用いられることがあります。一般的に、以下のような薬を用いることが多いです。
薬の種類 | 効果 | 副作用(例) |
抗うつ薬 | 抑うつ気分や意欲低下、不安感、不眠などを改善する | 眠気や吐き気、食欲不振、便秘、口の渇きなど |
抗不安薬 | 不安感や緊張、イライラ、動悸などを抑える | 眠気やふらつき、集中力低下、依存性など |
睡眠導入剤 | 睡眠を促す | 習慣性やふらつき、日中の眠気など |
抗精神病薬 | 幻覚や妄想などの症状を抑える | 眠気や体重増加、口の渇き、便秘、錐体外路症状(体の震えや筋肉の硬直など) |
気分安定薬 | 気分のムラを抑え、精神状態を安定させる | 眠気や体重増加、口の渇き、多飲、多尿など |
薬には心を安定させる効果が期待できますが、副作用を伴うこともあります。吐き気や強い眠気などが現れた場合は、医師に相談しましょう。
認知行動療法
認知行動療法は、うつ病や不安障害などの精神疾患の治療法として広く用いられているもので、適応障害に対しても効果的な治療です。認知行動療法は考え方や捉え方などの「認知」が、行動や感情に影響を与えるという考え方が基本となります。
認知行動療法では、患者さんが自身の思考パターンに気づき、より柔軟でバランスの取れた考え方に変えていくことを目標にします。患者さん自身が積極的に治療に参加することが、認知行動療法を成功させる鍵となります。
生活習慣の改善と食事療法
適応障害の治療には、生活習慣の改善も重要です。規則正しい生活やバランスの取れた食事、適度な運動は、心身の安定を取り戻すために必要です。
- 規則正しい生活
- 適度な運動
- バランスの取れた食事
- 仕事からの心理的な切り離し
上記の生活習慣の改善は、適応障害の治療だけでなく、再発防止にも役立ちます。焦らずに、少しずつ自分ができるものを継続していくことが大切です。
適応障害の症状と診断方法の基礎知識
適応障害は、だれもがなり得る身近な心の病気です。新しい環境や生活の変化など、だれでも経験するような出来事がきっかけで、心や身体にさまざまな不調が現れることがあります。今抱えている悩みも、適応障害のサインかもしれません。
適応障害について網羅的に知りたい方は、以下の記事をぜひご覧ください。
>>適応障害とは?原因と症状や3つの治し方をわかりやすく解説
適応障害の主な症状
適応障害の主な症状は以下の5つです。
- 気分の落ち込み:何をするにも億劫になり、気持ちが沈む状態が続く
- 不安感:漠然とした不安に押しつぶされそうになる
- イライラしやすくなる:些細なことで怒りっぽくなる
- 集中力の低下:ミスが増える
- 身体的な症状:原因不明の頭痛や腹痛、不眠など身体にもSOS信号が出る
これらの症状は、特定の人間関係や環境、出来事が原因で引き起こされることが特徴です。
診断基準と診断方法の解説
適応障害の診断は、風邪のように血液検査やレントゲン検査でわかるわけではありません。医師が患者の話を聞き、症状や発症時期などの状況を詳しく把握します。具体的には、以下のポイントが適応障害の診断の重要な要素です。
ストレス因子の存在
「引っ越し」「転職」「結婚」「死別」「病気」などの出来事から3か月以内に症状が現れているかどうかが重要です。
症状の影響
ストレスによって、仕事や日常生活に支障が出ているかどうかもポイントです。
これらのポイントを総合的に判断し、適応障害か否かを診断します。適応障害は早期に適切な治療を受けることで、症状の悪化や慢性化を防ぐことができます。もし適応障害なのではないかと感じたら、一人で悩まず早めに医療機関を受診しましょう。
また、自分で適応障害かをチェックするための方法を以下の記事に書いていますので、気になる方は読んでみてください。
>>【セルフチェック】適応障害かも?と疑う方に向けて症状から診断
他の精神疾患との違い
適応障害は、うつ病や不安症などの他の精神疾患と症状が似ていることが多く、専門家でも見分けるのが難しい場合があります。適応障害は、特定のストレス要因を取り除くことで症状が改善することが大きな特徴です。
仕事が原因で適応障害を発症した場合、転職することで症状の改善が期待できます。最新の研究でも、仕事からの心理的な切り離しが、従業員の健康と幸福にとって重要であることが示唆されています。
うつ病などの場合は、ストレス要因を取り除いても症状が改善しないことがあるのが大きな違いです。適応障害はストレス要因に対する反応として現れる一時的な症状であるのに対し、他の精神疾患は慢性的であることが多いです。
適応障害とうつ病の違いを詳しく知りたい方は以下の記事も読んでみてください。
>>適応障害とうつ病の違いとは?適応障害からうつ病に移行することはあるの?
適応障害からの回復を促すサポート
適応障害は周りのサポートを受けながら、一歩ずつ回復に向けて進んでいくことが大切です。ここからは、職場や家庭でどのようなサポートが適切かを解説します。
仕事と治療の両立のコツ
適応障害と診断されると、仕事との両立に悩む方が多いです。「休むべきか、働き続けるべきか」に対する明確な答えはありません。それぞれの状況に合わせて、最適な方法を見つけることが重要です。ストレスの原因が職場にある場合は、休職も視野に入れつつ、医師や会社と相談しましょう。
ストレスの原因が職場以外の場合でも、仕事に影響が出ることがあります。集中力の低下やイライラ感が強くなることで、仕事の効率が落ちたり、ミスが増えたりする可能性もあります。職場に自分の状況を伝えて、同僚や上司に相談しましょう。仕事の負担を軽減してもらったり、サポートを受けたりできるかもしれません。
家族や友人からのサポート方法
適応障害の回復には、家族や友人のサポートが重要です。大切なのは、患者の気持ちに寄り添い、理解する姿勢を持つことです。「つらい思いをしているんだね」「あなたのことを心配しているよ」といった言葉をかけましょう。
患者さんが話したくない場合は、無理に聞き出そうとせず、そっと寄り添うことも大切です。家族や友人のサポートは、患者さんにとって心の支えとなり、回復への大きな力となります。
再発防止策と長期的な対策
適応障害は再発のリスクがあるため、回復後もストレスをため込まないようにすることが重要です。ストレスへの対処法を見直し、うまく付き合うことが再発予防に役立ちます。
- リラックスできる環境を整える:趣味やリフレッシュの時間を持ち、規則正しい生活を心がけ、十分な睡眠を確保しましょう。
- 適度な運動:軽い運動でもストレス発散やリラックス効果があります。ウォーキングやヨガなど、無理なく続けられる運動を習慣にしましょう。
- 早期の対応:再び症状が現れた場合は、一人で抱え込まず、早めに医療機関を受診することが大切です。
適応障害は早期発見と治療で症状の悪化や慢性化を防げます。焦らず、自分のペースで治療や再発防止に取り組みましょう。
まとめ
適応障害は、環境の変化やストレスによって心身に不調が現れる病気です。気分の落ち込みや不安感、集中力の低下や身体的な症状など、さまざまな症状が現れます。診断は、医師が患者さんの話を詳しく聞き取り、症状やストレス要因などを総合的に判断して行われます。適応障害の治療には、以下の方法が効果的です。
- 薬物療法:抗うつ薬や抗不安薬などが処方される場合があり、症状の軽減や心の安定を図ります。
- 認知行動療法:患者さんの考え方や捉え方を修正することで、感情や行動をコントロールできるようサポートします。
- 生活習慣の改善:規則正しい生活、バランスの取れた食事、適度な運動などの生活習慣改善も大切です。
適応障害は、適切な治療やサポートによって回復できる可能性を秘めた病気です。一人で抱え込まずに医療機関を受診し、医師や専門家のサポートを受けながら、症状の改善を目指しましょう。
参考文献
- Karabinski T, Haun VC, Nübold A, Wendsche J, Wegge J. Interventions for improving psychological detachment from work: A meta-analysis. Journal of occupational health psychology 26, no. 3 (2021): 224-242.
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