不眠症の基本について!症状の種類から治療法まで幅広く解説
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監修者船橋 健吾(てらすクリニックひきふね院長)
目次
「なんだか眠れない日が続く…」
不眠症は現代社会において大きな健康問題の1つで、日本の成人30〜40%の方が不眠に悩まされています。
多くの人が「夜なかなか寝付けない」「眠りが浅くて何度も起きてしまう」「朝早くに目が覚めてしまう」といった症状を経験しています。
この記事では、不眠症の基本的な情報から、症状の種類・原因・診断方法・最新の治療法まで幅広く解説します。睡眠は私たちの心身の健康に直結する重要な要素です。記事を読めば質の高い睡眠をするためのヒントを得られ、日々の生活の質も改善できるはずです。
墨田区曳舟にあるてらすクリニックひきふねでは、不眠症の診療をしております。気軽で便利なクリニックとして、通院のしやすさに定評があります。お悩みのかたは気軽に相談ください。
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不眠症の種類や症状とは
「夜なかなか寝付けない」
「眠りが浅くて何度も起きてしまう」
「朝早くに目が覚めてしまう」
多くの人が経験する不眠症の代表的な症状です。眠ろうと思っても脳が活発なままなかなか休息モードに入れない状態です。睡眠の問題は、日中の活動や生活の質を大きく左右する可能性があります。
不眠症の症状
不眠症の症状は、大きく3つに分けられます。
症状 | 説明 | 例 |
入眠障害 | 寝ようと思ってもなかなか寝付けない状態 | 仕事のことで頭いっぱいで、布団に入っても2時間以上眠れない |
中途覚醒 | 睡眠中に何度も目が覚めてしまう状態 | ちょっとした物音やトイレで夜中に何度も目が覚めてしまう |
早朝覚醒 | 朝早くに目が覚めてしまい、その後眠れない状態 | 目覚まし時計がなる2時間前に目が覚めてしまい、その後眠れない |
熟眠障害 | 眠りが浅く、ぐっすり眠ったという感じが得られない状態 | 朝起きても疲れが取れておらず、日中も眠気や倦怠感が強い |
他にも、日中の強い眠気・集中力の低下・倦怠感・イライラ感が現れることもあります。ずっと放置していると、仕事や家事・学業に集中できなくなったり事故のリスクが高まったりと、日常生活に支障をきたしてしまいます。
自分は不眠症かも?と症状をもとにチェックしたい方はぜひ以下の記事を読んでみてください。
>>【セルフチェック】不眠症のサインを見逃さない! 症状からチェックして改善方法を解説
不眠症の原因や発症メカニズム
不眠症の原因は、人によって実にさまざまです。毎日の生活で感じるストレス、身体の病気、服用しているお薬の影響、さらには体内時計のリズムの乱れなど、さまざまな要因が複雑に絡み合って起こると考えられています。
ストレス
仕事で大きなプレッシャーを抱えていたり、人間関係の悩みを抱えていたりする状況は、私たちの心に大きな負担をかけます。結果、ストレスを感じ、脳が興奮状態になり、眠りにつきにくくなってしまいます。
生活習慣の乱れ
毎日決まった時間に寝起きしない、寝る直前までスマホやパソコンの明るい画面を見続ける、寝る前にカフェインを摂取するといった行動は、体内時計のリズムを乱してしまいます。体内時計は、睡眠と覚醒のリズムを調整する重要な役割を担っています。
精神疾患
うつ病や不安障害などの精神疾患は、不眠症と密接な関係があります。心の不調が睡眠に影響を与え、不眠症を悪化させることがあります。
身体疾患
がんや心臓病・呼吸器疾患などの身体疾患は、痛みや息苦しさ・頻尿などの症状を引き起こし、睡眠を妨げることがあります。慢性的な痛みに悩まされている人は、眠りにつくのが難しくなったり、夜中に何度も目が覚めてしまったりすることがあります。
薬剤の影響
風邪薬やアレルギー性鼻炎の薬・高血圧の薬など、一部の薬には、副作用として不眠を引き起こすものがあります。
カフェインやアルコールの影響
コーヒーや緑茶・紅茶などに含まれるカフェインには覚醒作用があり、寝る前に摂取すると眠りを妨げます。アルコールには睡眠を浅くする作用があり、夜中に何度も目が覚めてしまう原因になります。
不眠症の原因は多岐にわたり、いくつかの原因が重なって発症することも少なくありません。
不眠症の診断・検査方法
「なんだか最近、よく眠れない…」「日中も眠くて集中できない…」と感じたら、不眠症のサインかもしれません。一人で悩まず、まずは医療機関を受診して、医師に相談してみましょう。
どんなことを聞かれるの?
問診では、例えばこんなことを聞かれます。
- 寝付きの悪さ: 布団に入ってから、寝付くまでにどれくらい時間がかかりますか?
- 夜中に何度も目が覚める: 一度眠りに落ちても、何度も目が覚めてしまうことはありませんか?
- 朝早く目が覚めてしまう: 朝、起きようと思った時間よりも早く目が覚めてしまい、その後眠れないことはありませんか?
- 睡眠時間: 毎日、どのくらい眠れていますか?
- 日中の眠気: 授業中や仕事中に、眠くて集中できないことはありませんか?
- 疲れやだるさ: 体が重くて、やる気が出ないことはありませんか?
- 集中力の低下: 集中力が続かず、ミスが増えてしまうことはありませんか?
- イライラしやすさ: 些細なことでイライラして、怒りっぽくなってしまうことはありませんか?
- 気分の落ち込み: 憂鬱な気分が続き、何事にも興味が持てないことはありませんか?
検査はどんなことをするの?
問診に加えて、不眠症の原因を特定するために、いくつかの検査を実施することもあります。
- 睡眠ポリグラフ検査*1(PSG検査): 脳波、心電図、呼吸、体の動きなどを一晩記録して、睡眠の状態を詳しく調べます。
- 終夜睡眠ポリグラフ検査(終夜PSG検査):睡眠ポリグラフ検査を一晩かけて行うことで、より詳細な睡眠の状態を調べます。
- 血液検査: 甲状腺機能亢進症*2などの、睡眠に影響を与える可能性のある病気がないかを調べます。
*1睡眠ポリグラフ検査:睡眠関連疾患の検査に用いる
*2甲状腺機能亢進症:甲状腺ホルモンの過剰分泌
検査結果と問診の内容を合わせて、最適な治療法を検討していきます。
不眠症の治療法と最新の取り組み
不眠症の治療は、主に薬物療法と非薬物療法に分けられ、患者の状態に応じて最適な組み合わせが選択されます。
薬物療法の種類と特徴
薬物療法では、睡眠薬や抗不安薬を用いて睡眠を改善します。主な種類は以下のとおりです。
- ベンゾジアゼピン系睡眠薬:即効性があるが、依存性や耐性のリスクがある。
- 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬:依存性や耐性が低く、比較的安全。
- メラトニン受容体作動薬:睡眠リズムを整え、自然な睡眠を促す。
- オレキシン受容体拮抗薬:覚醒を抑制し、依存性や耐性が低い。
各薬剤には特徴や副作用があるため、医師と相談の上で適切な選択が必要です。
非薬物療法と認知行動療法
非薬物療法は、薬を使わずに睡眠習慣や生活習慣を改善する方法です。中でも重要なのが認知行動療法(CBT-I)です。
- 睡眠に関する行動の改善(睡眠スケジュールの調整、寝室環境の整備など)
- 睡眠に関する認知の修正(不安や誤った思い込みの軽減)
- リラクセーション技法の習得
その他の非薬物療法には、光療法・運動療法・リラクゼーション法などがあります。
治療期間と最新の研究
不眠症の治療期間は個人差が大きく、数週間から数か月かかることがあります。最近の研究では、COVID-19関連のストレスに対する「イメージ競争課題介入」や、ケタミンによる睡眠改善効果などが報告されています。
不眠症の予防方法や改善策
毎日の生活の中で、少しの工夫や心がけによって、不眠症の予防・改善ができます。ここでは、質の高い睡眠をするために、今日から実践できることを紹介しているのでチェックしておきましょう。
質の高い睡眠のために今日からできること
- 規則正しい生活習慣:毎日決まった時間に寝て、決まった時間に起きるようにしましょう。体内時計がリセットされ、自然な眠りにつきやすくなります。
- 適度な運動:軽い運動は、心地よい疲労感をもたらし、質の高い睡眠を促進します。激しい運動は逆に交感神経を活発にしてしまうため、寝る直前は避けましょう。
- リラックスできる時間:寝る前に、ぬるめのお風呂に入ったり、好きな音楽を聴いたりして、心身のリラックスを心がけましょう。寝る前のスマホやパソコンの使用は、脳を興奮させ、眠りを妨げるため控えましょう。
- 睡眠環境の整備:寝室の温度や湿度を快適に保ち、光や音を遮断することで、より良い睡眠環境を作ることができます。自分に合った寝具を選ぶことも大切です。
- 食事:夕食は寝る2~3時間前に済ませ、消化の良いものを選びましょう。寝る直前の食事は、胃腸に負担をかけ、睡眠の質を低下させる可能性があります。就寝前のカフェインやアルコールの摂取は避けましょう。
不眠症と他の疾患や症状との関連性
不眠症は、体や心のバランスが崩れたサインと捉えられます。うつ病や不安障害などの心の病気は、不眠症と深く関係しています。心の不調が、夜も眠れないほどの不安や緊張を引き起こし、不眠症につながるのです。
不眠症は、体や心のバランスが崩れたサインと捉えることができます。以下に、不眠症と関連する病気や症状を箇条書きでまとめます。
心の病気
- うつ病: セロトニン分泌量の減少が原因となり、不眠症を引き起こすことがあります。
- 不安障害: 不安や緊張が夜間の睡眠を妨げ、不眠症につながることがあります。
体の病気
- 高血圧: 睡眠不足が自律神経のバランスを乱し、血圧をコントロールする機能に影響を与える可能性があります。
- 糖尿病: 睡眠不足がストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を増加させ、血糖値を上昇させることで、不眠症のリスクを高めます。
- 呼吸器疾患:息苦しさや咳が睡眠を妨げることがあります。
- 頭頸部がん:身体的な苦痛や、手術・放射線治療による外見の変化・嚥下機能の障害などの精神的な苦痛で、不眠症を引き起こすことがあります。
このように、不眠症はさまざまな病気の兆候である可能性や、他の病気を悪化させる要因となる可能性があります。不眠症が続く場合は、自己判断せずに、医療機関を受診し、専門医に相談することが大切です。
不眠症かもと疑うときは心療内科へ
不眠症は、単なる睡眠の問題ではなく、心身の健康全体に影響を与える大きな問題です。
主な症状
- 入眠障害
- 中途覚醒
- 早朝覚醒
原因
- ストレス
- 生活習慣の乱れ
- 精神疾患
- 身体疾患
診断には問診や睡眠ポリグラフ検査が用いられ、治療は薬物療法と非薬物療法を組み合わせて実施されます。うつ病や高血圧・糖尿病などの他の疾患とも密接に関連しているため、症状が続く場合は専門医の診断が重要です。適切な治療と生活習慣の改善により、質の高い睡眠と健康的な生活を取り戻せます。
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